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六百六十三生目 請求

 なぜ勇者一行がこの宗教の街の外れに有る簡易キャンプ場にいるのか。

 なぜ私はネオハリーフルアーマー状態でその一行に加わっているのか。

 それはすべてごまかしのためである。


 裏での動きはこうだ。

 私が喚び私が一行に説明し街中での戦闘を目撃されている私はその時と同じフルアーマー状態でしれっと一行に加わっていることにした。

 そう。それはすべて私が目立つの避けるため!


 ギャグではなくかなり重要なことなのだ。

 私はあくまでニンゲン社会では一介の冒険者。

 空を飛び回り魔法を撃ちまくり蒼竜の神使で魔物たちの町を作っている魔物だと知られるのはとてもマズイ。


 私の裏の顔を知るニンゲンはわずかでないと情報漏えいしまくって収拾がつかなくなる。

 そこで知っていてなおかつ表に出て問題のない彼らがかわりに引き受けてもらったのだ。

 勇者なのだから名誉をたくさん得ることも大事だからね。


「このたび、私達が情報を受け継いでやっとこの長かった攻略を終えることができたようです。それは、みなさんのお力添えがなければできない事でした! まことにありがとうございます!」


 グレンくんが軽く頭を下げると周りから拍手が飛び交う。

 この言葉も実は事前にグレンくんと考えた原稿を読み上げてもらっているだけだ。

 裏でログに博士開発のチャットを使って原稿データ流し込んでいる。


「いいぞー! 勇者様ー!」

「まだうちの子ぐらいなのに、勇者様なのか……」

「俺らですら突破出来なかったのに、さすが勇者様だぜ!」

「うっ……」


 ……"見透す眼"。


(うう、騙しているからすごくやりづらい……)


 やはり……

 まあ気持ちは分かるけれどここは素直に賛美を受けてほしい。

 勇者は勇者の仲間たちがしたことも勇者の功績になるのだから。

 ……なんてね。やはり私としても押し付けて悪かったからなあ。


 そっと手をグレンくんの背中にそえる。

 鎧越しだから叩きつけないように気をつけて……と。

 はっとしたグレンくんが少しだけ視線をこちらに向けた。


 軽くうなずく。

 大丈夫だという念をこめて。


「えー、あ、そうだ。見た方もおられると思いますが、今回とても活躍してくれた仲間です。何か1言お願いします!」


 ッ!?

 チガウ。マカセトケッテ意味ジャナイ。

 ソレチガウ。


「おお、あの……」

「鎧の大男、蒼竜像に飛ばされてきたと思ったら、ひとっ跳びで帰っていったやつ……」

「勇者様の仲間なら、それくらいできるんだろうなぁ」


 無茶振りだ……

 何も考えてなかったしそもそも声どうするんだ。

 光神術"サウンドウェーブ"で再現している声とは言え即席でいつもと違う声にするのは大変だしコツがいるのに何も考えていない!


「……コホ、ゴホンゴホン。えー……」


 わざと咳払いをしたり言葉のひげであるえーだのあーだの言って無理やり調整する。

 こ……これならなんとか。


「あー、私は今紹介に預かったものである。此度は勇者を筆頭にみなで掴んだ勝利だ」


 口調は重々しく。

 声は男性を意識して中年くらいの渋め。

 調整ミスってないよね? うん。続けよう。


「多くのカエリラスも確保成功し、政府関係者も保護が出来た。まだ完全とは言えないが、この街は比較的安全確保をした」


 ローブ姿のニンゲンたちは事実上この街のトップたちだった。

 上級王かと言うと細かく言えば違うらしい。

 この地域の上級王は……蒼竜の言葉を聞き伝えたとされる預言者に永年固定されている。

 はるか昔に亡くなっているが多分蒼竜の神使だったんたろう。


 なので彼らは上級副王という特殊な立場だ。

 実質上彼らをあわせて上級王として動いている。

 円滑な蒼竜教団運営に彼らは欠かせず後日グレンくんは正式な謝礼式に出席する予定。


 ローブ姿の彼らはこちらを見ていた……はずなんだがそもそも疲労でまともに状況が把握できていなかった事とその後の気絶で記憶があやふや。

 そのままあやふやなままにしてもらおう。


 カエリラスのニンゲンたちから私の情報が漏れる可能性はあるが『勇者が魔物に与することは無い』『魔物使いが操るのなら問題はない』あたりの前提常識のおかげで大半はたわごとと流されるだろう。

 それに向こうからしたら私のことは気づいたら倒されていたのが大半だろうし。

 ぶっ飛ばして記憶があやふやになったりこっちの真偽判定をちゃんとやれずに倒されたりと割と安心。


 イタ吉たちも少なからず見られているが捕縛出来ていないから実はさっさと逃げられたらしい。

 まあそれはそれで好都合。


 最悪シラを切れる立場ってすごい。


「それでは、勝利の勝どきを。勇者よ、掛け声をどうぞ」

「あえっ!? ええっと……か、勝ったぞー!」

「「おおーー!!」」


 その後もろもろその他の話をして場は解散撤収となる。

 あの大きく破壊された歴史的文化財の数々……

 すべて請求はカエリラス行きになるらしいというのは聞いて胸をなでおろした。


 いやそもそも壊されたことがよくないとかカエリラスは払わないだろうとか問題はあるんだけど。

 こっちに請求回ってこないってだけで大きい!

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