六百六十一生目 集中
相手に深くダメージが入り集中が途切れたらしく瘴気の弾丸は消滅した!
鞭の音速連撃を身体に喰らって真っ赤な血が吹き出す。
とほぼ同時に煙をたてて傷がふさがりだした。
大丈夫。生命力は確かに削っている。
その証拠に肩で息をしだした。
というか序盤の余裕と集中力が見られない。
「はあ、はあ、あ……えっ!?」
私も他者のことはとやかく言えないが……さすがに戦闘経験差とドライの存在により戦闘を続けている際の動きがまるで違う。
今も飛んでいるせいでアカネが意識外の地面から土魔法"アーティストアン"で土槍を辺り一面に出しただけなんだけれどものの見事にあたって吹き飛んでくれた。
戦闘は1分1秒がまさに身を削り心を削る。
ぶっちゃけ疲れるのだ。
単なる筋肉の動き疲れではなく……脳が。
次々とくる死の危険に対して対処していくためその処理が疲れる。
パンクしたら死ぬかもしれない。
だから無理してでも脳が働く。
なのでより疲れる。
ドライみたいなタイプは戦闘継続能力がかなり高い。
血と傷が増えればそれだけカッと覚醒しそれをより求めるからどこまでも戦える。
どんどん悪化していく環境下でより激しさを増して行ける。
対してアカネはもう先程までと違って無駄口がまるでない。
ギラついた瞳が周囲をにらみつけているがそれだけだ。
そこにあるのは殺気や活気ではなく怯え。
表には出していないが瞳のギラつきに不安の影が見え隠れしている。
「やあっ!」
さっきから瘴気を固めて弾丸や刃にしたものをこちらに飛ばしてくる。
もちろん威力は驚異的だが……
「えっうそ!? 嫌ああっ!!」
ちょっと魔法や攻撃で意識をそらしてしまえばそれどころじゃなくなり攻撃のコントロールは失われ霧散する。
今もちょっと空から土魔法"アースレイン"で土砂をたっぷりかけ当然避けられたところに火魔法"エクスプロージF"と空魔法"エクスプロージS"を組み合わせた大空間爆発に巻き込んだだけだ。
冷静に亀甲羅を出して身を守るかと思いきや思いっきりくらいふき飛んでいる。
正直治る生命力よりも本人の精神が持たなさそうだが。
……そうなってくれればとても捕縛しやすいんだけどなぁ。
私も長期戦はここが空中でアインスにコントロール任せているから平気なだけと思いだしてしまうので早く決着つけた……うっぷ。
「こんなはず……もう一度!」
瘴気の弾丸が放たれる!
そのスキをついて地魔法"グランドフォール"で大地が押しつぶそうとして慌てて脱出。
勢いに吹き飛ばされる。
私が瘴気の弾丸が頬をかすめ鎧付きイバラで刃をなんとかそらしただけで消えてしまった。
「も、もう一度!」
再び瘴気が放たれ……
鞭剣ゼロエネミーに背後から振り下ろされ翼が片翼切れる。
「――――ッ!」
声にならない悲鳴。
煙を立てて再生しだす翼。
霧散する瘴気。
「もう、一度……!」
「もう限界でしょ! 諦めて降伏しなさい!」
瘴気の弾丸が放たれる。
狙いが雑でそれゆえに避けにくい。
連射じゃなく拡散ゆえの強みか。
それでも……もう連続で出されたら見慣れた。
「えっ!?」
アカネがかなり驚いている。
私は瘴気弾丸を感知したまま避けきった。
今度はかすりもしていない。
「そんな! 嘘だっ! トリック。トリックがあるはず!」
腕を何度も振るい瘴気をばらまき弾丸や刃にする。
そして飛来させ尾を生やして鞭剣ゼロエネミーの猛攻をしのいでいた。
それでも。
「カハッ!? ま、また?」
避ける。避けきる。
鞭剣ゼロエネミーを弾くのに夢中なアカネを横から背後からイバラで打ち抜く。
コントロールがとけて瘴気が霧散。
アカネは顔をこわばらせ頭の花を咲かせ光をまた連射する。
集中力の大きく欠けた連射はアインス操作の回避運動にまったく狙いがつけられず距離を詰められる。
私が近づく寸前に鞭剣ゼロエネミーが"龍螺旋"を打ち込み亀の甲羅を出して耐え……
「はあぁ!!」
「ああっ!?」
気をとられていたアカネは私の蹴り込みを顔面に食らう!
大きく背後に吹き飛び甲羅も爪も花も翼も変身が解けてなくなる。
今のは決まった!
生命力はまだ尽きてはいない。
アカネはなんとか立ち上がると顔面が煙を立ててまっさらに修復されていく。
能力としては便利そうだなぁ。
ただもう立ち上がるのもつらそうで膝立ちしている。
戦闘能力は十分削いだだろう。
魔法などの射撃時に癖がついたままでしかも基本的なランダム化もしていないからわかるととても回避しやかった。
「アカネ、その身柄を拘束させてもらう」
「ま……だ……!」
また瘴気か……?
いや緊急離脱用の魔法?
いずれにせよさせない!