六百五十五生目 独楽
土壁魔法を召喚獣エンビィが掘って突破してきた！
ダカシの妹も気になるが……
「みんな！ 今はこいつを止めよう！」
「おうよ！」
「今度こそ！」
「邪魔だー！！」
私は後方から構え補助魔法を放つ。
みんなは防御能力が増したり攻撃に火がまといつつ接近！
私のイバラや剣ゼロエネミーも向かわせる。
「うん……格闘」
イタ吉が爪を巨大化させすばやく斬りこむ。
鱗と爪でキレイに弾かれているが諦めずに連撃している。
ダカシはすばやくそこに突撃し真正面から力でぶつかり合う。
ただとぐろを巻き太く長い蛇という下半身を持つ以上想像以上に揺るがない。
互いに1歩も引かない押し合い。
おかげでイタ吉の爪を相手するのは尾だけに。
さらにジャグナーが飛び上がり巨体で上空からの右腕振り下ろし！
「ちっ」「邪影放って」
壁の向こうからの支持どおりエンビィの影から矢のような魔法がたくさん飛び出す。
ジャグナーはそれを全身の岩や爪で受け止め弾きつつ無理やり振り下ろす。
すんでのところでエンビィが脱出し強烈な一撃は床に穴を開けた。
「みんな、あいつの『宣言』は！？」
「知らん！ まだ聞いたことがない！」
ううむ速攻で出してこないタイプとは……
何をされるかそれはそれで恐ろしい。
イバラたちが更に追撃して剣ゼロエネミーも一気に叩き込む。
「負けそうね」
「まだだぁ……ッ！」
指示がとび尾の強烈な薙ぎ払い！
イバラたちを引かせ剣ゼロエネミーを無理やり弾き返した。
召喚獣は召喚者を殴られない限り血のかわりに光を流すだけで済むからなあ……
ただ今のでわかった。
私達4匹を相手に"宣言"なしで勝つのはまず無理だろうと。
油断はしないしさせない。
「どんどん補助回すから相手に少し大人しくなってもらおう！」
「来い！」
イタ吉が尾の大きな刃を持ちクルクルとコマのように回りだす！
激しい回転で光と共に突っ込んだ！
合わせてダカシもほえて氷の魔法を放っていく。
「その姿だと流石に兄だとは信じてもらえないんじゃないか？」
「それは、そうだが……でもそれ以前に妹は争いが苦手な性格だ。無理やり何かやらされているなら、すぐに止めなくては」
「今度は突っ走るなよ！」
「格闘戦で防ぎつつ魔法準備」
「簡単に言ってくれる！」
ジャグナーは大岩を作り出しそれを頭上に掲げてから投げる！
エンビィはイタ吉のコマ回転切りを必死に防ぎつつダカシの氷の礫を受けていく。
ジャグナーの大岩に合わせて上半身が跳び上がり爪で引き裂いた！
「おお！ やるな！」
さらに尾をすばやく回し周囲をかきとばす。
問答無用でイタ吉とダカシは跳ね飛ばされた。
さっきからあの尾かなり強いな。
「みんな！ そろそろ補助ひと通り揃う！」
「それなら心置きなく戦えるな！」
ジャグナーはエンビィの大薙ぎ後のスキをついて突撃。
重さを活かしてそのままタックル！
土壁と叩きつけた！
「意外にタフだな！」
「死なないのはともかく、怯みもそんなにしない……」
よし土壁がそろそろどんぱちで砕けそうだが役目自体は終えている。
あともう少しある補助魔法は……光魔法の高度なもの。
[ライフブレス 追加生命力を与える]
光がまるで息のように吹きかけられ味方や私を包み込む。
不思議な安心感と共にそれは私達の中へと消えた。
この魔法はなかなかすごくて召喚者じゃないのに生命力ゲージに追加ができる。
もちろん倍だなんて言わないが……
そのかわり一律で私の力量次第で足せる。
イタ吉は避けて当てるタイプだから恩恵はデカい。
「魔法発動」
「よしきた！」
エンビィの影が恐ろしい笑顔を浮かべ紫の光を纏う。
そして部屋全体に広まったかと思うと私達の全身をなぶるように這い回った！
実体のないものが全身を駆け巡るというのは電撃に違いがこちらは圧迫感と冷気ではないのにぞわりとするもの。
時間としてはそこまで長くなくすぐに全員解放される。
正直私はそこまで効いてはいないが……土壁はとうとう崩れ去ったか。
それにイタ吉たちは荒い息で床に這っている。
「はぁ……はぁ……っ！」
「くそっ、息が出来なかった！」
「あんなの次放たれてたまるか！」
「準備、良しと」
椅子に座った女の子はそのままの様子。
だけど魔法陣の方にいたローブ姿たちは仰向けに倒れていたりする。
息はしているが……当たり前のように範囲魔法味方指定せずに巻き込んだのか！
「おいおい、お前らの仲間くたばってるぞ……？」
「あぁ……？ 仲間ぁ……？ 違うなぁ、あんなのはぁ、負けて用済みのコマだぁ……！」
ジャグナーが指差すとあっけらかんとして答えられた。
なんてやつらだ。
