六百五十三生目 突破
みんなを呼んで分かれ道でわかれて進んだら私の方にカエリラスメンバーがめちゃくちゃ襲ってきた。
まあ陽動になったという面では良いんだけれど……
すっごい時間稼ぎと疲労稼ぎされている!
ふつう私の行動力がガンガン治ると知らなければコレほど有効手はない。
何せ結局どれだけ強い1撃でも結局は1撃。
薙ぎ払った後ろから更に次が来るのを繰り返されるのは精神的にも先が見えなくてつらい。
幸いな事にカエリラスの刺客である魔物たちは弱い。
エリートの気配はあるもののそれはそれとして『ネオハリー』の私はかなり強めだし。
ニンゲンの刺客も現れだして道を塞ぐのはすごく困る!
「邪魔だー!」
「お帰り願おう!!」
なお脳裏にある今までのあれこれが記録され羅列されるログ。
そこを博士が改造して出来るようになった文字チャット。
それでイタ吉たちと連絡を取り合っているが……
[コッチはかなり多くて手間取りそう>]
[>イタ吉:俺の方は大丈夫そうだ! 乗り込むぜ!]
[>ダカシ:後でバックアタックは避けたいから出来る限り減らそう。あんまりいないが……罠が困るな]
[>ジャグナー:ふうむ、誰がもっとも脅威か、というのはわかっているらしいな。こっちにもっと寄越してくれてもよかったんだが]
とまあ向こうは順調そう。
こっちはかなり手こずっているから……
どう考えても私が最後にたどり着くだろう。
明らかに今までと違って最後の相手だって殺しに来るだろう。
今まではカエリラスの監視がまだ厳しすぎないからなんとかなっていた部分がある。
試練とか言うスキすら与えず殺しに来る可能性は高い。
みんなに無理して突っ込まないようにと送信して目の前の敵たちに集中!
敵の目の前まで迫りニンゲンの刃を屈むようにスライドして横薙ぎを回避。
そのまま足元を強く蹴り込む!
「何っ!?」
転倒させて倒れ込みそうな相手にイバラ連撃!
このぐらいやれば大丈夫だからその後ろで銃を構えていたヤツに対して蹴り上げ!
腕に当たって銃を落とさせる。
「ゲッ!?」
もう片方の足で銃を跳ね飛ばしつつ立ち直る。
丸腰になったところでストレートパンチ!
相手はくの字に体をまげ飛ばされる。
その背後に控えていた魔物たちもまとめて吹き飛んだ!
おお……鎧つきにした拳は思ったより効果てきめんだ。
やはり重量が乗ると『ネオハリー』の姿でも少しは良いなあ。
だが巻き込まれた魔物たちはまだ元気。
距離を詰め……ずに剣ゼロエネミー!
さらにイバラも素早く伸ばす!
素早い斬撃!
さらに先端が音速を超えるしなるイバラ!
連撃! 連撃!
"縛り付け"! "ヒーリング""無敵"!
自切!
次の扉あばぶぶふっ!
危ない。"絶対感知"! ……テンポよくいって電撃トラップ掴まされるところだった。
扉に仕掛けてあった電撃トラップを解除するには……
うーむ魔法的なものならともかくカラクリって結構解くのが難しいんだよね。
こういうのをシーフ技術と言うらしいがちゃんとこっち方面も鍛えないとな……
ふっとばして進みたいが修理費も怖いし我慢。
…………よし。なんとか解けた。
そうこうするのがその後も何度も続く。
互いに攻略に集中するためにあまり言葉のやりとりはしていないが……
危なくなったら連絡が来るようにはしているからそこは大丈夫だと思う。
なんやかんやと十分程度時間がかかっている。
……うん?
[>ジャグナー:ついたがなんかダカシがおかしい。かなり強いし、早く合流したほうが良い]
えっ。
一体何なんだ……?
[わかった。すぐ行く。>>ジャグナー]
返答をしつつ飛び出す槍罠の解除……っと。
急ごう。
最後の扉を抜けてたどり着いた最後のエリア。
そこは他の扉と合流していた。
今まで通ってきた場所も意図的に横へ行く扉を塞いであったからまあここでの合流も意図的だろう。
その場の光景でまず目についたのは……少し広めの部屋中央で満ちたエネルギーを放つ存在。
……召喚獣だ。
さっきの寝坊助とは雰囲気が悪い方向にガラッと違う。
ニンゲンのように長い長髪と毛のほとんどない顔立ち。
それなのにどことなくニンゲン離れした雰囲気は人魚のそれだ。
それでいて手先はモグラや犬のように掘るのに適した爪はきれいに研ぎ澄まされしていて物を掴むものではない。
そして特徴的なのは下半身。
長くスラリとした……と言えばきこえは良いが実体はスラリなんてものじゃない。
鱗を携え長く蛇としてとぐろを巻いている。
各々の部位は磨かれ美しいのに全体はどこかいびつさを感じる召喚獣だ。
[エンビィ 月の神の1柱。顕界する時は蛇の姿を取るとされ願いと落胆を司るとされている]




