六百四十九生目 逆鱗
なんとか蒼竜神像型竜を追い詰めた。
周囲が大きく吹雪いている。
どうやら最後の力を発揮したらしい。
無視できない速度で体感気温が下がっている。
しばらくは魔法でごまかせてもそのうちは……
それにみんなも離れたとはいえ危険だ。
竜は2足で立ち上がり大きく拳を構える。
来るか……!
……うん?
こんな時に念話が。
ええと……おっと拳に光蓄え振りかざしてきた!
『おーい! 僕だよ、そーくんだよ!』
『あ、ええ?』
高速で危険域を離脱!
振るわれた拳の軌跡は大量のエネルギーが光となりきらめいて爆発を起こしていく。
てかそーくんこと蒼竜本人かい!
『ちょっと用事を思い出してアノニマルース離れるから、神の力補給がいるのなら、また呼んでねー。僕の助手くん!』
『え、あ、うん、今それどころじゃあわわわ』
ぐうう早い!
剛腕が軽々と何度も振るわれて襲い来る。
しかも光が凄まじく炸裂し長めに残るせいであたりがどんどんと危険地帯に!
いくら飛行をアインスに戦闘をドライにまかせていても私も全力で意識注いで戦わないとこんな即死しそうなものを喰らってしまう。
わりとそれどころじゃない?
『あれ? そういえばなにかしているの?』
『うーん、戦闘!』
『へぇー、誰とだろう。結構キミが苦戦しているみたいだけれど、そこまで行くとよっぽどの強敵だろうね、僕が当てて見せようか?』
『蒼竜と戦ってる! じゃあね!』
『えっ』
念話遮断!
なんか腹立ってくる例のドヤ顔が透けて見えて戦闘に集中できなかった。
竜は拳をさすがに振り疲れたのか作戦を変えだした。
……大きい魔力反応!
あたりの空間が光ったかと思うと光が冷たく炸裂し氷のように広がる!
極低温が炸裂して爆発する……冷気の"エクスプロージ"だ!
しかも数も大きさも揃えてある!
場の空気が揺れ空気中の水が凍てつきダイヤモンドダストを見せる。
大丈夫落ち着いて感知すればランダムじゃなくていくつかを炸裂する順番の流れが見えるから大丈夫だ。
とにかく直撃は避ける!
右へ回避! そのまま下へ!
尻尾のイバラが危ないから横に回転回避!
今竜の頭の方に飛んでもグラグラ動かしているからちゃんとしたポイントに安定出来ない。
大きいから相手からしたらわずかな動きでもコッチからしたら致命的なズレを起こす。
真正面!
からの自分中心狙い!
背後……も気配だから急速落下!
私が先程までいたところが大きく氷結爆発。
あおりを受けそうだったので"防御"して爆発の勢いを殺して……うっ!
つめたっ! クルクル回ったりせずにしっかりガード出来た。
相手はさすがに疲労したらしく攻撃が止む。
私の"無敵"で無理やり敵愾心も削っているしひと振りに対して使うエネルギーはこちらの比じゃないだろう。
荒々しく息をして手をヒザにつきだした。
死闘で夢中になっていた……はずなのに少しずつ興奮が削られる力こそが"無敵"。
なぜ戦わなくちゃならないのか。どうしてこんな苦しい思いをしているのか。
そういう思考が混ざれば混ざるほど脳が異様なストレスを感じて強い疲労を起こす。
彼らは霧の魔物とはいえ基本的には再現がうまくいっているようだからね。
それはこの竜も同じ。
"ミニワープ"で瞬時に頭上へ移動。
角度をつけて斜め下に急速加速蹴り……ヒーローキック!
エネルギー集中ポイントに食らわした!
再び大きく怯み首を下へと下げさせる。
さっきとは反対側の首元へ!
こちらも逆鱗発見だ。
アインスが事前に見つけてくれていた。
接近!
"龍螺旋"!
10連大爆発!!
まだ……まだ相手は耐えている!
逆鱗は破壊できて感じる気配もだいぶ衰えた。
それでも倒れてはいない。
口が開ききらめく。
またか!
「グオオオッ!!」
うわっ! 冷たい! 早い!
細い光線が放たれた! あちこちにめちゃくちゃに放っている!
うわっ! 口じゃないところからも光が!
あちこちから細く速く光線が出たり勝手に爆発している!
暴走している……?
まあ大事そうな部分壊しまくったからなあ。
ホンモノの蒼竜ならこんなことにはならないだろうに。
あくまで霧のダンジョン内で再現した絶大な力。
おそらくは術者の限界で現れるデメリットがこの無残な状態。
それはそれとして。
全身が暴れているところに接近!
ハチャメチャすぎてアインスの予測すらも危ういけれど……今近づくしか無い!
突然の光線に頬をかすめ腕の振り下ろしは"ミニワープ"でなんとか回避。
そのままかいくぐって……冷気爆発魔法にドライの野性的カンで身をひるがえして避ける。
後少し! 頭の前まで来て大口をあけ食いつこうとしているのを……必死で避ける!