六百四十ニ生目 休息
魔人は大きく吹き飛んでついにはマグマの流れる壁に叩きつけられさらには大きく穴が開く。
壁が広範囲に渡ってひび割れた。
壁の一部が崩落し岩と共にマグマが降り注ぐ。
やがて彼の姿は見えなくなり……溶岩と冷え固まって新たな壁の一部となった。
……門が開く。
魔人は霧となって死んだらしい。
荒い息遣いをやっと深呼吸して落ち着かせる。
ドライから身体の動きをかわってもらってみんなと共に門の向こう側へ。
"進化"も解きケンハリマに戻る。
恵みの泉はうまい!
本当に今回は生き返る思いだ。
情報なしだったとはいえ本当に強かった。
……正直今回はコレ以上は無理だ。
私が疲れた。
油断すると力が抜けてよく伸びる餅と化し溶ける自信がある。
「みんな、この先をちょっと見て帰るよ!」
「「!!」」
各々鳴いて了承してくれた。
というわけで休むのはもう少しあとだ。
階段を登る。
さあ……41階に到着だ。
ここはさっきとの気温差で風邪をひきそうになる。
ある意味外の気候にもっとも近い。
とても寒く。そして何かの建造物の内側にいるかのようだ。
レンガの豪邸の中みたいな廊下が続いている。
ところどころに氷が結晶のように飛び出していた。
罠の気配は"絶対感知"でもわかるが他の階より多い。
今度はいきなり凍えさせる罠なんかもありそうだ……
前段階の階はいきなり火を噴射された。
向こうから歩いてきたのは……剣を携えた兵。
……のようにみえるが明らかに歩き方が常人のそれではない。
不健康というよりもまさに死体が無理やり操られているかのよう。
その肉は腐って顔は一部欠けている。
それでもこちらを見つけると瞳が強い殺意できらめいた。
背中から氷が生えて不気味な足取りで駆けてくる。
ゾンビだ!
疲れている私のかわりにみんなが前へと出た!
「……って感じだったんだ」
「おー、おつかれさん。だいぶ進めたな」
私はみんなと共に仮設キャンプへと戻っていた。
よく伸びる餅になりつつも"変装"してホリハリーになっているから芯までは気を抜けない。
ジャグナーが私の書いたメモを読み取り私の話を聞いて本格的な報告書に仕立てている。
ちなみに私以外にくたばっている者がいる。
第4王子のダンダラだ。
なんと剣士として戦うタイプなのに大蛇に勝てたのだとか。
なお解毒剤も回復薬も切らして結局帰ってきたうえ体調回復までかなり時間がかかりそう。
生命力や行動力が治っても身体の根本的不調はなかなかすんなりとはいかない。
まあだから私もよく伸びる餅になっているのだが。
……あの恵みの泉はあくまで本物を再現したものだ。
術者の力でね。
あれに龍脈の気配は感じれない。
あー。何とかあれが龍脈ならば『ネオハリー』になれるのだが。
たぶん強敵たちもずっと倒しやすくなる。
まあそううまくいかないのか……
それと今回で41階までのデータが集まった。
前よりはずっと楽に進めるはずだ。
やはり初見で強敵や謎解きは時間も体力も使うし勝率も著しく下がる。
ああー……本当に疲れた。
マッサージとかしてほしい。
ただそんな器用なことできる面々はここにはいない。
「……ところでなんで、こんなに『水がこのぐらいいる』だの『この間隔での塩類摂取』だの書いてあるんだ?」
「え? そりゃあ熱中症回避のためだよ。気をつけないと倒れちゃうし」
「うん? 下手な水の摂取は動きを鈍らせるんじゃあ……?」
「え?」
「うん?」
ジャグナーの質問に答えるとダンダラが横から口を出してきた。
……そうか。前世でも1960年代まではあんまりよくわかっていなかったんだっけ。
他のニンゲンたちやダカシにジャグナーも興味を持ってくれた。
なので私はよく伸びる餅から良く話すスライムぐらいにならざるおえなかった……
いざ感情的に納得出来るように説明しようとするとなんとも大変なものだ……
翌日。
たっぷりと休みをとった私は10階へとたどり着いていた。
みたび現れるは翼をもつ大型魔獣。
もはや恐くない。
互いに駆けて……一閃!
通り過ぎたあとに大型翼獣は地に伏した。
針を的確な場所に撃ち込んでやった。
"峰打ち"なので……
「みんなー!」
更に増えた17匹による一斉攻撃!
またたく間に翼獣は霧へと散った!
よし。ここまではかなり高速でこれた。
門が開き恵みの泉。
本当にこれが龍脈につながっていればなあ。
みんなは恵みの泉に群がるが私はまったく平気なので飲まないで大丈夫だろう。
この不自然な恵みの泉は……まさにあるはずのものがないおかしさなんだよなあ。
電気は電流と電圧と抵抗があって電流と抵抗があれば電圧も必ず発生している。
その1つだけが欠けた……そう『そこにあるものがない』不自然さ。