六十一生目 死霊
鳥籠にも伝えて私達は急いでレヴァナントの元へ動く。
向こうもこちらのアヅキみたいにおぞましい攻撃を持っていたら危険だ。
幸いにして骨軍団の動きは把握済み。
数も半分以上減らしているから自由に動けた。
鳥籠にアヅキも連れてきてもらうように頼んである。
あそこまで強い攻撃が出来るのならぜひ敵への乗り込みにほしい。
オジサンと共に進化して駆ければすぐにレヴァナント近くへとやってこれた。
木陰から見た感じだとガス状の何かがあちらこちらにいるな…、
[ゴーストLv.20]
[ゴースト 霊力の塊で死者の多い所で発生しやすいと言われる。対象に取り付いて身体を麻痺させてからじわじわ命をすする。]
くるりとこちらの方を向けばあの取ってつけたような顔。
知ってるぞ、この顔。
スライムでも氷魔でも見た。
同じシリーズということはおそらく思考能力はほぼなく、何らかを感知したら襲ってくる。
推測だとコイツは生命探知か。
一定範囲に近づけば次々やつらに襲われる、と。
……よし。
オジサンに敵の特性と狩りの順番を話し合いつつ強化魔法をかけていく。
今回は強化アンチパライシスも付与。
毒ではない麻痺持ちが意外と多くて便利。
「よし、準備出来ました!」
「行くぞ」
オジサンも進化時の性格モードに入ったらしい。
"私"も張り切ろう。
接近すればすぐに手前のが気づいた。
そして"私"達は撤退。
まあ、一般的な釣り狩りだね。
ある程度まで引いたらゴーストがボヤリとブレ広がって"私"に覆いかぶさる。
あ、結構動きは早い!
でも何やるのかはわかっている。
防御して様子見。
すると"私"の周りを覆ってきたが、これが取り付きだろうね。
うん、本当は麻痺するんだろうけれど何とも無い。
その証拠に弾かれるようにゴーストが離れ元の形へ戻っていく。
そのうちに私達が引き裂いて……
手応えなし!?
これあれか、実体が幽霊みたいなものだからか!
「魔法ならどうだろう?」
「俺がやる」
オジサンがそう言うと黒い腕が空中から発生して伸び、爪と変化して敵を切り裂いた。
闇魔法の攻撃かな。
すると今度は何かを引き裂いた手応え。
オジサンはそのままさらに2回爪を出して斬り裂くとゴーストが霧散した。
「あまり強くない魔法だが、これには弱いようだな」
「なるほど、それじゃあ今後もこんな感じで」
あまり行動力消費が大きいなら"私"がメインでやったほうが良いかと思ったがそうでもないらしい。
さらにひっそりと作戦は行われた。
数自体は10ほど。
配置がバラけているのは本来はどこから来ても抑えるようにするためだろう。
だがソレがアダとなって楽々釣れる。
寄せる、引く、食い付かせて、魔法ザグザグ。
安定性をとるために釣り役は"私"で狩り役はオジサンとわけた。
おかげて効率的に狩れてあっと言う間に壊滅!
問題は小屋付近か。
あの付近は大きな骨の斧のようなものを持って待機している大型骸骨が2体、それにレヴァナントが話に聴く通り何らかの魔法を使って儀式しているようだ。
火を灯したり何かを地面に書いてたり、本を広げていたりと忙しそうだ。
さらに彼等正面はまだ2体ほどゴーストがうろついている。
直接的な脅威にはならないが、魔法を投げ込まれたら厄介だ。
さてどうするか……
「大変お待たせしました。
ただいま到着しました」
「あ! ちょうどいいところに!」
音もなく近くに降りたったのはアヅキだった。
呼んでいたからいつか来るとは思ったがかなり早い。
本当にちょうど良かった。
「やはり、その姿も何度見ても美しい限り、これから敵を血染めにするので?」
「いやお世辞は良いけれど、相手は取り敢えず骨と幽霊。血はないね」
雑なお世辞は流しつつ本題に入った。
これから雑魚を突破しあの儀式がなんなのかわからないが止めなくてはならない。
間違いなく放置しておけばロクな事にはならないからね。
細かな戦闘配置を決めて、攻める準備。
「あの上空から範囲魔法を放つのは?」
「申し訳ありません、私の力不足でもう使用は難しいかと。
それと仮令力が十分でも速攻をかけるには私の練度不足で、時間がやたらかかってしまいます」
「そうか、ならばやはり直接殴り込むのが良いね」
出来るんだったらそりゃあ上から爆雷放ったほうが強い。
適当に一掃したあとレヴァナントを拘束するだけでおそらくなんとかなる。
だけどないものねだりはしても仕方ないね。
というわけでまずは"私"とオジサンが前にエントリーだ!
「っ! 来たのね! 近づけるな、抑えなさい!」
レヴァナントの命令虚しく"私"は炎弾魔法で、オジサンは闇魔法でゴーストを消した。
「くっ!? やはり強い……! まわりの子たちは!?」
彼女が何かを唱え頭の周囲に暗い闇のような光が灯る。
すぐに消えると怒りと憎しみをこめた表情になった。
どうやら現在の呼び出している死霊たちを確認したらしい。
「ゴーストが全滅……!? 麻痺対策でも!?」
「さて、どうかな」
雑にごまかしつつ骸骨へと向かう。
あくまで後ろのレヴァナントを守るように動くか。
ならば燃やす!
炎弾魔法!!
火力増加させて温度を高めた。
さらにスイカ大の大きさ。
後ろのニンゲンを守るのなら避けられまい!
まっすぐ飛んでいくフレイムボールに大骸骨たちは斧の面をふたつ合わせフレイムボールに打ち付けた!
一瞬の競り合いのあとふたつの斧はまっすぐフレイムボールを打ち返してきた!?
あっぶな防御!!
じ、自分がまるこげになるところだった……
ヒーリング!
「ふふふ、遠距離対策していないわけ……」
「粉砕する!!」
とりあえず体勢を……と思ったら上空からアヅキが大骸骨たちを襲撃した!
いや、上から意表を突くのは予定通りだけれどスキがもっとある時じゃなくて!?
さらに何か叫びながら大骸骨を雷の剣で切り裂きまくっている。
「てめぇら何してくれてるんだ!!
主の御身に火を返すとは!!
塵に返す!!」
うわ、なんか口走りながら大骸骨2体をものともせず切り裂いてる。
口から泡がこぼれるほどエネルギー使っても。
斧が浅く切り裂いてきても無視。
そのまま"私"たちの出番がないまま大骸骨は電気で焼かれ灰に還った。
……つっよ。
アイツあんなに強いのか……
「な、なんでミルガラスがココに!?」
ああそうか、言葉はわからないし協力体制だとは思わないよね。
意外といっぱいいるんだ、ありがたい協力者が。
「後はお前だけだ!!!」
「ひっ……!」
そういってアヅキが雷の剣を振り下ろす。
だがレヴァナントに当たる前に何かに弾かれた!
今、レヴァナントの周りの魔法陣が光った!?
「きた……やっと準備ができた!
少し予定が狂ったけれどこれで終わりよ……!」
「何かくる、離れて!」
「ちいっ!」
アヅキを急いで下がらせる。
おそらくあの魔法陣は強力な防御結界をはるもの……
だとするとこのおぞましい気配は一体?
地響きが起こり地面の下から骨が出てくる。
それらは禍々しい闇の光を纏うと次々と組み合っていった。
かたやまるで恐竜のような……
かたや立派な牙を持つ……あ、あれは巨牙虎!?
しかも前足に一度砕かれて無理やり治ったようなあと。
私が追い掛け回されオジサンが斃したあの時の遺体……!
恐竜側は見たことのないモンスターだが二足と短めの前足、とても大きな頭と尻尾という王道さを感じる。
[ブラックスケルトンLv.35]
[ブラックスケルトンLv.35]
[ブラックスケルトン スケルトンと違ってより強くまた生者を恐ろしく憎むようになったもの。寄せ集めではなく純正品な事が多い。]
「ワタシにさえコントロール出来ない死霊たちよ……いけ!
仲間に加えてあげなさい!」
げえ、そのための防御結界!
確かに彼女がコントロール出来なくとも彼女を守る結界がアヅキの雷の剣を跳ね返す程なら……
「あれは、強いな」
「何、我々なら勝てます」
「また土へ還ってもらおうッ!」