六百三十七生目 官軍
溶岩ワニがマグマ泳ぎしていたところを冷え固めてやった!
これでもう逃げ回れない!
岩の中に閉じ込められたのと同じだろう。
逃れようと動こうとしているがあそこまでがっちり固定されては筋力ではむずかしかろう。
後は気を失わせるだけだ。
アインス!
「それー! ハイパーキーック!」
くるりと回転してから直下落下!
エアハリー特有の降下加速蹴り!
……!? ワニの周囲が赤く!?
「わわっ!? ストップストップっ!」
ワニの頭に当たる直前で止まる。
そしてワニは全身が赤くなり……
「あっつ!!」
溶岩が溶けた!?
マグマに戻るほどの加熱を!?
しかもそれが弾けてコッチに来るから毛皮が焦げる!
もう一度天井へ!
幸いなことに一部彼の回りだけが溶かせたようで溶岩の上に這い上がってきた。
私たちの方をじっとにらみチャンスを伺っている。
確かに溶岩ワニからしたら全身を覆っている溶岩は鉄壁でしかもトカゲたちよりも戦い慣れしているだろうことはさっきまでの動きで伺い知れる。
ワニは構造上口閉めは高速だしさっきから不用意に開かないようにしている。
"クエイク"やったら開く……という考えは甘そうだ。
尾すらも溶岩に覆われているから……針は効かない。
いけるとしたら魔法か剣ゼロエネミー。
どうにかして弱点に叩き込まねば。
あの大蛇には耐えられてしまったが……きっと土魔法"ソールハンマー"なら。
この姿だと魔法の火力も落ちているから念には念を。
まずは剣ゼロエネミーだ!
(行くぞ!)
ドライによる素早い剣戟!
あの溶岩ワニ。脚は遅いが攻撃の瞬発力はなかなかだ!
剣ゼロエネミーの振りに合わせて溶岩の上を剣がすべらせている。
きっちり角度を変えて受け止めているのだ。
ううむなんでも斬れる素質があってもやはりまだまだ剣の技術はドライと共に研究しなくては意味がないか……
あとさっきからちょいちょいと溶岩を砕いて跳ね飛ばしてくる。
天然のショットガンだ。
きっちり殴り跳ね飛ばすさいに爆炎を上げているから接近きたら蜂の巣になるかもしれない。
今の所軽微な痛みで済んでる。
剣ゼロエネミーとかちあいながらやってくるとは……
元気に暴れているけれど……
ドライ! ドリルモードを!
(おう!)
剣ゼロエネミーが節ごとに分離。
さらに魔力線で繋がり螺旋でつながる。
つまりは……ドリル状だ!
岩盤採掘用の形をしているこれを激しく回転!
そのまま相手へ突っ込んでいく!
溶岩ワニはまた溶岩部分を鎧のように使い受け止め……
食い込んだ!
溶岩ワニは明らかに動揺した。
そのまま回転しつつゴリ押す!
硬く深く入り……貫く!
ぐっ! ズラされたか!
腕の溶岩だけが破壊され剥がれた。
するとワニは腕をマグマに漬けてすぐに上げる。
ワニの身体が赤くなるにつれガチガチと音をたてるように溶岩が再び固まる。
焼け石に水……でも。
土魔法"ソールハンマー"!
少し前より小型ながら"ニ重詠唱"で2つだ!
土のハンマーを喰らえっ!
重量級の相手に重量級の攻撃が入る。
鈍く重い音が響いて溶岩の身体に深く入る。
響いた振動は大きくてワニは身体を間違った方向に曲げるほどのようだ。
(ココだ! もらったーッ!)
ドライが再び激しく回転しているドリルゼロエネミーで貫く!
今度は脚に当たった!
苦しみつつも必死にワニはドリルを溶岩で蹴り飛ばして離させる。
貫いたドリルはまた肉がそれた!
ワニはニンゲンなら脂汗浮かしながらも笑っていそうな感情を見せる。
けれど。
「とれた!」
アインスが空を飛びその剥がれた溶岩を回収する。
ワニはぎょっとして剥がれた部分を見ると紋様のある部分がないことに気づいたらしい。
あっけに取られているようだ。
最初からこれが目的だ!
ぶっちゃけワニの相手はおまけだからね!
さらにドリルゼロエネミーがさっき剥がしかけていたトカゲ3枚目も剥がす。
アインスが回収すると……
溶岩たちが光をまとって宙に浮く。
そして1つの溶岩へとぴったりハマって合わさったのだ。
紋様がひときわ強く光り輝いだあとに粉となって粉砕される。
どこかで何かが動いた音がする。
おそらくは最初のところだろう。
「バイバーイ!」
「ッ!」
ワニがなにか言いたげにしているが"観察"できないのでわからない。
雰囲気から察するには……卑怯者ー! とか。降りてこいー! とかのあたりかな。
勝てばよかろうなのだ。
(血も出ない奴の相手なんて斬ってもツマンネーからな)
うん……まあそれはドライらしいとして。
飛んで最初の位置に戻ったらみんなのほかに床の1部が開いている部分が。
魔法陣が描かれている。
見たことのない紋様ながらどうやら移動用らしい。
多分これが階段だ。




