六百三十六生目 潜伏
マグマ地帯を『エアハリー』で飛んでひび割れた壁にまできた。
死ぬかと思った……
「せーい!」
アインスにより"針操作"でたくさん生やした針を勢いよく壁に叩きつける。
量の勝利で壁は破れた。
向こうに広がっていたのは……
同じ溶岩地帯ながら今度は足場は広め。
その代わり鎮座している魔物が複数。
溶岩で身を固めている火を吐くトカゲだ。
トカゲと言ってもそのサイズは私よりも大きい。
ロゼハリーと同等くらいか。
それが3匹。
彼らは溶岩で身を固めている分非常に重く硬い。
腹部まで固めているので下からの攻撃にも強いのが特徴。
攻撃するには口内か……尾先が有効だった。
それが3体。広めの土地とはいえさすがにひしめき合っている。
そして3体ともただの溶岩の他に身に付けているものが。
光る文様が刻まれた溶岩だ。
それぞれが身体のどこかにある。
あれが鍵ってことかな……
こちらを見て溶岩トカゲたちは歯をむき出し身構えている。
どうやら話に応じるつもりはないらしい。
……飛んで!
(ほいさ!)
本当は嫌だが急加速で天井付近にいってもらう!
戦いに集中して吐き気を紛らわそう。
魔法を準備……
(じゃあわたしは!)
アインスが"針操作"でトカゲたちに放ちまくる!
距離があることもあるし"鷹目"でも見れる限りが有るから針の精度は低め。
バリバリと降り注いでは弾かれている。
それでも何本か尾に刺さりだした!
あっ! 火をためて口を開いている!
「わあっ!」
火球が作られ飛んでくる。
慌ててアインスはアクロバットに回避。
私が気持ち的に死ぬ。
さすがに3体もいると点制圧ではく面制圧を狙われる。
つまり動きをある程度予測して放ってくるうえにみんな別のところに撃つ。
軽くだが火であぶられている……
これは火魔法じゃなくて技だからということか。
火を溜め込んだ口には針は燃えてしまって届かない。
尾はさすがに警戒されているしそんなにダメージは入らないか。
だからこうだ!
地魔法"クエイク"!
私から地魔力が地面へと放たれ直後大地が鼓動しだす。
溶岩トカゲたちが慌てだし口を開いたり閉じたりしたりほとばしる魔力の波動を食らって吹き飛んだりしてスキだらけ。
今だ!
「そこだぁっ!」
"針操作"で大量の針を1匹ずつ集中砲火!
こっちに攻撃がこない今なら落ち着いて操れる。
アインスの"針操作"は慣れたものだ。
大口開いたトカゲから順に針をしこたま食べさせられる。
まさに針千本飲ます状況。
指切りはしないが次々と口すら閉じれない状態に。
そして……剣ゼロエネミー!
指のかわりに尾へ切り込んでもらう!
ドライが操作して華麗にぶったぎった!
……3体ともついには動かなくなる。
霧としては消えないらしい。
今のうちということか。
アインス操作で接近してもらい溶岩剥がし。
文様の輝く溶岩を1枚2枚と剥がし……3枚目。
後少し……
「かったいなー」
……ん!?
アインス! 飛んで!
(え!?)
素早い回避! それと同時に私がいたところには頑強な顎が空をきる。
危なかった……マグマの中で完全に息を潜めていたとは。
こちらを見るそのハンターの瞳は……トカゲたちとは少し違う。
彼らよりふたまわり大きくてさらにはワニのようにも見える。
溶岩まといも同じだし雰囲気はトランス体か。
……彼の脚にも光り輝く紋章の溶岩がある。
「こんどは、コッチのばん!」
アインスが"率いる者"で誰かからレンタルしたらしい水魔法が放たれる!
水の渦が発生して相手へと飛んでいく!
溶岩ワニは素早くマグマの中へと隠れる。
マグマの上を水の渦が走り凄まじい蒸気を上げていく。
同時にマグマが冷え固まっていくようだ。
これは相手の行動を制限するチャンス。
アインスは同じように水魔法で狙って!
私は……大きく魔力を練る!
(わかったー!)
アインスが次々水魔法を放っていく。
よく誰が何を持っているか把握しているなあ……
ワニはマグマから目だけだして泳ぎなんとか避けつつたまにマグマを纏った光で牙状の攻撃を放ってくる。
剣の衝撃波放ちと同じようなものだろう。
速いが直線。
アインスなら当たらない!
私はその軽やかな回避で肉体には反映せず精神的にきらめきを口から放っているよ……!
しゅっ集中せねば……
何度か互いのやり取りが続くが冷えた溶岩はすぐに煮えたぎるマグマへと戻る。
それでも……これだけ時間を稼いでくれたなら!
火魔法"クールダウン"だ!
対象は……この部屋のマグマ全域!
一気に熱が光と共に拡散する!
冷え固まり溶岩となるマグマたち。
当然その中で泳いでいたワニは。
「とじこめたー!」