六百三十五生目 紅蓮
大蛇を倒した。
そしてひと晩を過ごし……
ついに未踏の地である31階へ踏み出した!
31階からの情報はない。
つまり私からのデータが大事になるわけだ。
未知はこわいがワクワクも少しある。
たとえこれが造られたものだと知っていてもだ。
ここの景色は……灼熱の土地。
踏みしめる肉球から出る汗がすぐに蒸発する。
息を吸うだけでカラカラな空気が気道から水を奪う。
水のかわりにぐつぐつと煮えたぎるマグマだまりがありそこからマグマで出来た魔法生命体が這い出て襲ってくる。
ここはまさに活火山内だ。
「ふぅー……魔法で対策しておかなくちゃ」
この熱さでは水と疲れや熱中症それに燃えやすいものの燃焼が危惧される。
何があっても良いようにと用意してあった不燃液もかけておこう。
全員に耐火対策を施しつつ火魔法"クールダウン"を定期的にかけたりもする。
こういうスキルで何度もかける魔法は魔法使いのニンゲンたちが開発した技術でこなしやすくなる。
無意識化に仕込んでおく技術でようはタイマーだ。
『何をした』時に『何を起こす』をあらかじめ決めておき扱うのだ。
前世だとノードなんて言い方もあったよね。
これで光魔法"ディテクション"が切れる寸前にまたかけなおして脳内マッピングを絶やさないというのはよくやる。
今はダンジョン内で相手が強くなってきたためひととおり補助魔法のノードもオンにしてある。
"クールダウン"は今組み込んだ。
問題なく動くだろう。
まあ普通の魔法使いだとここまで大量に動かしたら処理が混雑するし行動力切れちゃうけどね。
とにかくこの土地はただいるだけで危険だ。
特に15匹には。
もうすでにみんないやそーな顔をしている。
目の前に迫ってきている魔物は……すごい。
鉄の甲羅を背負ったリクガメだ。
まさに火山仕様。
こちらに近づくと手足を引っ込めて回転。
一気に近づいてきた!
速い! 避けたら背後が……
剣ゼロエネミー!
大盾モード! 防ぐ!
重さが加わるが……耐える。
そのまま跳ね返す!
吹き飛んで体勢が大きく崩れたところをシバイヌが飛びつく!
腹へ食いついた!
それを見た他のみんなも追い打ちをかけていく。
……やがて鉄亀は霧へとかわった。
ずいぶんと助かった。
彼らもかなり戦い慣れしてきた。
見ることは出来ないがレベルも上がっているかな。
さて……他の魔物も近づいてきているか。
「ありがとう! 行こう!」
「「!」」
みんなひと鳴きした。
31階層からの灼熱地帯はマグマに誰かが落ちかけたり飛び込んでも平気なやつがいたりとにぎやかに進む。
こういう時水魔法つかえたらなとは思ったもののないものは仕方ない。
火魔法"クールダウン"あたりをうまく駆使しつつ道を切り開いた。
そして……35階層へ。
「うわあ……コレはやりすぎじゃあ」
辺り一面マグマッ!
煮えたぎる赤が私たちの乗る土地といくつか以外を埋め尽くしている。
たまに大きく破裂し細かく空気に触れた瞬間から溶岩として小石になり落ちる。
そしてマグマへと還っていく。
私たちも少し間違えたら同じことになるだろう。
さて……どういう謎なんだここは?
謎の調査そのものは比較的時間がかかってしまうだろう。
ただ今の所霧の魔物気配はない。
じっくり時間をかけて調べよう。
……よく見るとマグマから飛び出ている足場に出来る土地はあちこちにあるが道のようにつながっている。
複雑な行路になるが跳んで走ってでなんとかなりそう。
そしてそのルートの先。
"鷹目"で追っていくとあの先にあるのは壁……だがヒビが入っている。
どうやら道はあるらしい。
だがここを跳んで行くのは少し命がけすぎるんじゃないかな……
「みんなは少しココで待ってて!」
15……から16匹になったみんなには待っていてもらう。
4つの魔力を集め……"進化"!
『エアハリー』だ!
エアハリーは背中から展開された翼の骨格のような針が魔力を宿し空を飛べる。
小柄な姿だ。
これなら問題なくいけるけれど……
(はいはーい! 飛ぶのはまかせて! たのしいから!)
う。うん。動きは任せたよ。
もはや慣れたものでアインスはすんなり浮くとマグマが当たらない位置で低空飛行した。
不燃や熱取りなんかしているから良いけれどこの距離にマグマあると本当に燃えてしまいそう。
あとアインスは慣れたが私は慣れていない。
慣れていないッ!
コワイ!!
高度低くても下がマグマなこともセットにして非常におそろしい。
本当に落ちないかハラハラする。
だがそれでもフラつくことすらなく素早く飛んで壁へと移動した。
よかった……生きてる!