六百三十三生目 花先
大蛇と対峙し地下に叩き落とした。
地上のツタや木はズタズタでまたあそこで歩くのは危険だろう。
ヘビの身体があたりに降りてきて周囲を徘徊する。
棘は危険で鱗は固くさらに体力多い。
攻撃は鋭利かつ強靭。
本来はこれに毒があるが私に効かないと踏んであれ以降やってこない。
土魔法"ソールハンマー"2連すら決め手にはならないあたり今までのやつらとはかなり違う。
……毒を使うか!
効かなかったらそれはその時と思うしか無い。
毒を発射または注射するには尾先か首周りの赤い花型棘で攻撃する必要がある。
首周りの方は攻撃しづらいがイバラは巻いてある形なので反撃に向いている。
尾は伸ばせるため攻撃向き。
もはやイバラの伸び縮みは手慣れたものだがその不思議な感覚にはまだ慣れない。
あっ! 無理やり剣ゼロエネミーが刺さっている部分が外された!
急いで念力のように魔法を使って掴んで回収。
ドライよろしく! アインスは補助を!
(剣ゼロエネミーいくぜ!)
(ほいほーい! さしこむスキを見つけるよ!)
脳内の意識をさく領域を整理して自分がやるべきことだけに集中する。
剣ゼロエネミーは私の思考から逃れドライが改めて構える。
くるりと回ってから突っ込みだした!
私も後を追い駆ける。
しかしどこを見てもヘビの大きな身体だらけ。
よいしょ! 飛び越えるのも大変だ。
(あしもと! くるよ!)
"止眼"がアインスにより発動する。
確かに飛び越そうとしている部分あたりだけうねって見える。
このままではヘビの背中にある毒針の餌食。
"止眼"解除!
"薙ぎ払い"で対抗!
イバラと跳ね上がってきた大蛇の身体がぶつかり合ってイバラは貫通するが棘も折れる。
そして私はその勢いでジャンプ!
よし! これをくり返せば!
ジャンプ! "薙ぎ払い"! ぶつかり合ってハイジャンプ!
連続でっ! 繰り返しっ! 横から迫る大蛇も回転しながら抜けるっ!
全力を出してきて四方八方から大蛇の身体が迫る。
イバラを何本も伸ばして無理やりスキマを確保!
そのまま通って行く!
イバラを回収して蛇の身体同士がぶつかる。
もちろん棘が刺さる形だ。
毒は自分のは効かないだろうし大したダメージではないだろうがまあよし。
ついに逃げ回る大蛇頭付近までこれた。
剣ゼロエネミーが早速飛んでゆき勝負を仕掛けだした!
私は"鷹目"であたりを見回す!
おおっと!
慌てて伏せて胴体のなぎ払いを回避した。
そしてジャンプ!
反対側のも避ける。
剣ゼロエネミーは蛇の頭と斬ったり咬まれたりしているから今のうちに。
(あった!)
アインスの思考により私の方も察知できた。
さっきしっかり皮を剥げた部分だ。
うごめいてしかも長すぎるからなかなか見つけるのはつらい。
む! 魔力反応!
地面から……土魔法"Eスピア"か!?
少しコワイが突っ込む!
地面から飛び出した土槍は大蛇が放ったもの。
私を穿つために勢いよく飛び出した土槍は私の胸部を刺し貫き――
「やあっ!」
――はしなかった。
私に触れる直前に砕け散ったのだ。
蛇の方をよくみる余裕はないが驚愕はしただろう。
上位スキルによる下位スキルの封殺……! 成功して良かった!
おかげですぐに剥げている部分にたどり着ける。
尾をすぐに振って伸ばし逃げる前に剥げた部分へ刺す!
グサリと尾先の赤い花先端がえぐり入る。
蛇が痛みで怒りさらに威嚇しているが頭は剣担当で魔法はさっきのことでどうすればいいかわからなくなったらしい。
胴部分は動き出す前にこの周りだけでも武技"縛り付け"しておこう。
他のイバラを伸ばして光をまとったイバラが一瞬にして胴体にまとわりつく。
絶妙な配置で蛇の身体でも動きにくくしばれたようだ。
もがいているが跳ねてこれていない。
2段階目として赤い花中央先端だけでなく周りの赤いトゲまでささるように深く刺す!
残念ながら私は蛇の体内知識にはうとい。
血管に届くと良いが。
花先から毒の注入開始!
私の中から相手へ何かを送り出すというのはなんとも言えない感覚がある。
お……ちゃんと入って行く! それに手応えがある!
"猛毒の花"でこの赤い棘の部分にはしっかり毒がある。
けどなんだかここまですごく効いている感覚があるとは。
拘束が解けるギリギリまで深く入れ……
暴れて振り回されるまえに自切!
拘束と尾先は残して私は離脱。
直後に蛇の尾が叩きつけられた。
別に自切したところで毒が送られ続けるわけじゃない。
フタの役割がメインだ。
蛇の身体は大きいからここだけでは効果が薄いだろう。
それと今のえも言われぬ気持ちよさがあった。
相手は気持ち悪いだろうが……戦術的には有効ということで。
よしやろう!