六百二十九生目 食事
大きなヤドカリと対峙して剣ゼロエネミーを取り出した。
空魔法"フィクゼイション"で剣を念力のように掴む!
剣魔力開放! 土魔力全開!
巻き貝部分に思いっきり斬りつける!
ギィン……! と不思議と響く音が鳴り響く。
金属……というよりシールドのような。
ゼロエネミーですら傷すらつかないということはやはりあそこへの攻撃はなかなか難しいらしい。
とんでくる水鉄砲や水鞭をなんとか避けつつ……
……おや?
しつこく剣ゼロエネミーで叩いていたら貝の音がうるさすぎたのか貝の中からヤドカリ本体が出てきた。
すごく嫌そうだ。
失った脚は生え変わっている。
土魔法"アーティストアン"!
"二重詠唱"なので2倍の数の土槍が地面から次々と生えていく!
ヤドカリがニュッ引っ込んだところで剣ゼロエネミーで思いっきり引っ叩くと慌ててまた出てきた。
そこに大量の土槍が本体を襲う!
6本もの土槍が光を纏って脚と本体を串刺しにした!
血のかわりに霧が吹き出してくる。
そして動きが酷くにぶり土槍からすら逃れられていない。
今のでも生きている辺りはすごくタフだなあ……
すると控えの10匹が飛び出てくる。
……! 水鞭が発生してあの5匹を狙っている!
剣ゼロエネミー!
すっ飛んで行ってもらい大盾展開!
最後の渾身の1撃は盾にのしかかる。
恐ろしい事に気づいた10匹たちは各々の反応でビビってしまったようだ。
しかしすぐに水鞭は萎えて崩れ落ちる。
改めて10匹たちが魔法や武技をヤドカリに叩き込んだ!
ついには泡ブクがたつような音を上げつつ倒れ込む。
そして弾けるように本体から上へ順に霧へと返っていった……
20階の強敵を倒したため扉が開き恵みの泉と何も起こらない安全な土地が確保できた。
上階へと続く暗い階段もある。
かなり順調だ。
ただ私の活動時間とこの先は直接味わったわけではないという点を踏まえてここで休息をとる。
10匹たちはむしろ私より疲労しているようにも見えるしね……
空魔法"ストレージ"からちゃちゃっと火起こしセットを取り出して着火。
最終的にアノニマルース特産の炭に熱を安定させる。
串にひものやリンゴなどの果物なんかも刺す。
拾った中で食べれそうなものはひと通り。
そして火の側に刺してじっくり焼くのだ。
しばらくしてよく焼けたら完成。
なんとも簡単な食事だが贅沢はいえない。
霧の魔物たちは見た所空腹というものはなさそうだ。
だけれども興味はあるみたい。
私が肉の干物を食べているところにやってきた。
試しに他のを串からはずしてあげてみる。
10匹とも炎と熱と黒くなった肉にビビり気味だったが……
私が更に串リンゴを食べだしたらシバイヌが動き出した。
恐る恐る口に含んで……
熱かったらしくすぐに離し。
それでもなんどかいじくりまわして冷めてからまた口に含む。
初めて『おいしい』というのを理解した顔をしていた。
好意の感情が全身から溢れ出している。
よろこびのにおいを発していた。
その後奪い合いが起きかけ私が串で焼き他の9匹にも上げてを繰り返すハメになったのは言うまでもなかった。
私の食糧が……!
まあおいしかったから良しとしよう。
時間で言うところのひと晩が経過する。
この迷宮内は常に明るさが一定であるため意識して動く必要がある。
明るいからといって油断していると疲労から動かなくなってしまうからね。
朝食は携帯パンも含み昨晩とは違うメニューを意識してみる。
まあ霧の魔物たちは食事摂取の必要性がないみたいなのが幸いか。
……羨ましそうな視線が気になるので急いで食べ終わる。
「よし、行こう!」
私の言葉と共に10匹は動き出す。
さあ暗い闇あふれる階段を登ろう。
……21階。
聞いていた通りの場所だ。
水のかおりはするが潮のかおりはしない。
そして岩壁ではなく木が立ち並びその間を不自然な程のツタが覆って道を塞いでいる。
基本的には今までの階と同じく通路と部屋で構成されているが天井は木の厚い葉というだけでだいぶ開放感が違う。
ここは密林だ!
少し歩くと水場があった。
どうやらここを魔法で歩けば反対側まで近道らしいが……
うーん……ワニのような魔物が見え隠れしている。
方向転換して別の場所へ!
歩いていくとこれまでのところよりも強力な魔物を見かける。
私の記憶にはない魔物たちだが別の国には翼がカラフルで大きな鳥の魔物もいるのだろうか。
とりあえず襲ってくる相手は迎えつうつ!
魔物ごとに違う仲間になりやすいやり方も探ってみよう!
10匹と共にこのエリアの魔物たちに駆け込み向こうもこちらに向かって飛んで走って……
ぶつかりあう!