六百二十五生目 霧散
霧のダンジョンと呼ぶ不可思議な迷路に挑むこととなった。
1日目は早めに撤退して情報共有。
それらのデータを活かすための2日目。
「俺たちはここでもう少しデータを整理してみる」
「敵の居城を落とすというのはロマンだな……たっぷり練ってやる」
「よろしく!」
ダカシとジャグナーは入口に入れないので簡易キャンプで待機。
その代わりデータをさらに有用活用できるようにしたり拠点の改築を行うらしい。
私とイタ吉は再びダンジョンへ!
再使用可能となっていた魔法の扉をくぐり抜ける。
暗闇から出るとまた昨日とは違った景色が広がっていた。
広めの空間になんか物が落ちているようだ。
"変装"を解きいつもどおりに。
結局外界近辺には龍脈はなかった。
困ったものだ。これでは『ネオハリー』にはなれない。
このダンジョンの情報。
最初は全体的に弱く後半に行くほどに強い。
魔物たちは生きているようだが何らかの方法で倒せば霧となって消える。
つまり魔術で作られた偽物らしい。
ただしっかり敵意はあるので注意。
同士討ちは基本的にしないが協力もそんなにする素振りはないそうだ。
今回道具を長く潜れるように準備してきた。
空魔法"ストレージ"でしまいこんであるが火をもたせるための炭があったり栄養価重視の乾物がたくさんあったりする。
緊急離脱用の帰還の糸もある。
5階は特殊で10階は強力な敵が待ち構えている。
それは15階と20階も同じ関係で30階までは少なくともそうらしい。
その先は自分の目で確かめねば。
少なくともしばらくはゆるやかな階でしかない。
というわけで気配を消しつつ歩く。
さすがに直線上から来られたら廊下だとどうしようもない。
とりあえず落ちていたものに近づきにおいをかぐ。
……木の実だ。というかりんごだ。
正確な名称はあるもののまありんごで良いだろう。
毒はなし。ありがたく拝借してあとで食べるかな。
空魔法"ストレージ"にしまいこんだ。
ちまちま歩いたりかわいらしい魔物をやりすごしていたらまた細々としたものが拾える。
使い方のよくわからない物や何かの植物まで。
どれもこれも霧になるのだろうか。
ちなみに一応『落ちていたものは持ち帰れた』『食べ物は身体を満たした』『落ちている謎のものは慎重に使い方を探った』と聞いている。
ただいざ見てみるとどれがどういう効果やら。
割と似たりよったりだしデータが多すぎてちゃんと見られていない。
ここらへんは持ち帰ってからのお楽しみにして……
ついに階段を見つけた!
まるで迷宮へ入っていくのような上り階段だ。
4足での階段もさすがに慣れたものだ。
テクテクと登って……
「うわっ」
通路に出た。
私が今通った階段は光に包まれて出口と同じ雰囲気を感じる。
それよりもだ。
ほぼ正面にモンスターがいた。
思わず互いに固まってしまう。
だが相手の方が早く我にかえる。
獣型魔物の噛みつき!
小型犬サイズでいかにも弱いが長旅で無駄なダメージは受けたくない!
思い切って相手に向かって針を生やす!
思いっきり歯茎に針が刺さり痛みでキャインと悲鳴を上げる。
そこにしっかりと踏み込んで蹴り上げ!
キレイに入って吹き飛び目を回したようだ。
……これだけだと霧としては消えないのか。
じゃあ……
"ヒーリング""無敵"を組み合わせ治療と落ち着かせを行った。
目を覚ますと服従のポーズをとる。
ちなみに"観察"してみたが言語不明に種族不明。
多分それらしきものをこのダンジョンを造る術者の思考から作り出しているだけなのだろう。
仮定。シバイヌ(仔)にリンゴを渡すと食べた。
すると尾を振ってついてきた。
……なんとなくで餌付けが成功してしまった。
そのまま階段を見つけて次の階層へ。
一緒についてきたが大丈夫なのかこれは。
その後戦闘を重ねてちゃんと『霧となって消える』条件をさぐった。
絶命はともかく気絶した後に拘束をしたら消えた。
それと戦意を失って敗走も同じ。
敵は霧となって消えるものの直に時間がたつと新たな魔物が追加されるらしい。
どこからともなく現れる。
ただ今の所囲まれることは無く平和である。
……5階。
特殊だと聞いてはいたがなるほど。
このエリアは簡単な謎解きがある。
ええと。踏むと変わる色。
レバー。扉は赤。
何の看板も無いが……仕掛けとしてはわかりやすい。
床を何度も踏んで赤色にする。
そしてレバー……
の、近くにあるヒビの入った壁を叩く!
あっさり突き抜け壁がバラバラになる。
こちらにちょっとした空間と色の変わる床。
こちらも赤にして……と。
レバーをガチャと倒して。
扉がギギ……と開き階段が見えた。
なんだかシバイヌがポカーンとしているが大丈夫だろう。