六百二十生目 学校
こんにちは日付改めました私です。
森の迷宮騒動のあとにプリンセスの1羽がアノニマルースを見たいと言い出した。
他の2羽もゴネだしてその上クイーンも、
「将来世話になるかもしれないところを見に行くのは良いだろうな……」
と賛成気味だったので私が折れることとなった。
もちろんそのままでは行けない。
彼らの声はたとえひよこでも非常に不快だ。
防音の魔法の仕組みは理解していたのでその場で組み立て直し濾過音の魔法にして3羽にかけることに成功した。
1羽ずつのカスタマイズで外から聞けばまともな声に聴こえるようにしてある。
「変な声になった!」
「プルプル!」
「なんか声がきたな〜い」
と彼女たちからは不評。
慣れてもらうしかない。
そうこうしてヒナ3羽を連れてのアノニマルースお出かけということとなった。
クイーンは『貴君にならなら任せられる』と任せてくれた。
なのでまあ半日連れ回して見て遊んでもらったのだが……
「た〜のし〜!」
「ヘンなまものたちがたくさん!」
「プルプル!」
「ああ、待って! バラバラに行動しないで!」
ものすごいはしゃぐ。
コカトリスたちに対してひどく怯えていたころが嘘のようだ。
周りわりとコカトリスよりもおぞましそうな見た目の魔物はいるのだが。
「そこのまもの〜!」
「おう、なんだい嬢ちゃん」
「頭の上に乗ってやるからかがむがよいー!」
「うん? 上に乗りたいのかい? ほら」
ジャイアントクラスの大きな魔物に対してもこの調子である。
かがんでもらってから頭に乗せてもらい幼い翼をはためかせまくっているようだ。
まあ喜んでいるようで何より。
そうこうしている間にたどり着いたのは学校。
学校とは言っても前世で想像するあれではない。
学び舎と言ったほうが近い大きめの木造施設ながら学校としては小規模の建物だ。
中はおとなや仔ども関係なく座り何をやるかでコースが分かれている。
極小や極大は別エリアで別の先生たちが教えているがここは比較的サイズ差はバラバラでも入学できる。
今はまだ子どもに勉強を教えるというよりおとなたちに集団生活と仕事を教える側面が大きい。
窓の外から覗いて見ると授業中だ。
カムラさんが襲撃と自己防衛について語っているらしい。
最新式の黒板を用いて色々と書いてある。
なぜ襲撃と自己防衛だなんていう話をしているかはプリンセスたちの反応を見てみればすぐにわかった。
「相手がおそってきた時? そりゃあもちろんブッコロ!」
「コッコ以外のシュゾクは〜、みんなたおせばいいの〜!」
「プルプル!」
黄色は足でシャドーボクシングしている。
とにかくすさまじく殺る気だけは伝わってきた。
魔物としてはそこまで珍しくない思考だろうがアノニマルースでそのノリだとかなり困る。
「せんせーどうしてムカついたやつは殺してはいけないんですかー?」
なおここに来る魔物はほぼ同じノリなのが漏れ聴こえる声でわかった。
"無敵"と"ヒーリング"はここの最初の壁を壊せるきっかけを生み出せるコンボ効果がある。
大事なんだなあ……と思いつつ授業の邪魔にならないよう離れた。
「……将来キミたちもここに通ってみる?」
「おもしろそ〜」
「プルプル」
「よくわからないけど、おしえてもらえるものはもらって、立派なクイーンになるの!」
どうやら完全に乗り気なようだ。
あとでクイーンにも聞いておこうかな。
この日は夕ご飯を大好評のうちに終えて無事帰ってもらった。
果たして彼女らがこのアノニマルースに来る日は来るのか。
そのさいの声対策はどうしようか……悩みのタネが増えた!
こんばんは。今日は大陸の方に来ています。
ここは帝国3つめの大都市がある土地。
今までの土地とはかなり雰囲気が違う。
まず冬じゃないのに雪が降っている。
いやこの地方としては冬なのかもしれない。
かなり寒冷地なため年の半分以上はこうらしい。
なおいわゆる真冬は外出が命の危険を多く伴うとか。
よくこんな所にニンゲンが住むな! となるが驚きのはここにある大都市も100万人都市だということ。
しかも……
「……見えた」
遠くに広がる極寒に耐えるための街並み。
そして……凍結した湖。
この2つは別々の位置にあるわけではない。
湖の中に作られた大都市。
それがこの宗教の街である。
何の宗教かというと当然のように蒼竜教である。
そして住んでいる者たちは当然深く蒼竜への敬愛と感謝の念を抱いて過ごし常に宗教的行事をかかさない。
なおたまに行う盛大なお祭りは多くの観光客も来るし常に蒼竜教関係での観光も絶えない。
……ぜひ本物のぐーたらっぷりは知らずにすごしておいてもらいたい街だ。