表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
63/2401

五十九生目 接続

 この感覚、なんて言えばいいか。

 私の前世知識上で似ているのは電話をかける感覚。

 力を飛ばして元々知っている相手を見つける。

 みんなそれぞれバラバラに遠くいるからね。

 少し待って相手が電話をとる……ように許可がおりれば、繋がった! と感じた。


「おーい、聴こえるか? あ、聴こえててもそっちの声は聴こえないんだっけ」


 イタ吉の声が中から響く。

 森の中が映っているが少しぼやけてるな。

 これは多分スキルのレベルが低いせいせいだろう。

 何となくラグも感じる。


「まあ繋がってる感覚はあるからこのまま進めていくぜ。おーい、みんな! 作戦実行の合図だ!」


 私が地面に座っている感覚とイタ吉の二足で立ち上がっている感覚が同時に来る。

 これ、気をつけないと酔うな!

 特に私が思っていないタイミングで動き周るのが気持ちわるくグルグルしそう。

 やたらコマ数もすくなく断続的だし解像度も低い。

 うえ、もう気持ち悪くなってきたぞ。


 イタ吉が知らせにいった先にニンゲンたちの姿。

 ミニオークの部下たちだ。

 イタ吉の声がわかるわけではないが、イタ吉のアピールに意味が通じたらしい。

 質の悪い壊れかけのヘッドホンで聴いているような音でニンゲンの声が聴こえた。


 そして浮いている鳥籠たち。

 彼らは高速で戦場を飛び回って正確な位置を常に情報交換している。

 交換先は私とオジサン。

 オジサンは元々ある程度字が読めるから簡単な単語程度ならすぐに覚えてくれた。


 それら簡単な単語を使って敵全体の把握図を作ってある。

 改めて整理してわかる絶望的な戦力差。

 私が進化の万能感に飲まれていたら無鉄砲なゲリラ戦法を繰り返し、行動力が尽きたところを滅多切りされて死んでいただろう。


 骨軍団はそれぞれがつかず離れず一定の距離を保ちながら森全体へ徐々に手を広げている。

 わざわざ一度通った所も時間をあけて別の部隊が通る徹底ぶり。

 これだけ巡回していれば雄鶏たちの霊化でなければ間違いなくうっかり出会う。


 また地理の詳細把握はオジサンが前回収した地図つかっている。

 何を隠そうここの場所はオジサンの隠れ家だ。

 複雑な地形の奥にあるので骨軍団の手が伸びるのはまだ先だ。

 今のうちにかたをつける。


「報告!」

「うわっ!?」


 思わず目をあけて身体リンクが途切れる。

 するとそこには報告に来た鳥籠の姿があった。


「どうしました?」

「いや、大丈夫、良いタイミングだった」


 当たり前だけどリンクしている間もこちらの耳は健在。

 不意にこっちの耳で聴くとびっくりしてしまう。

 けれどタイミングが良いのは事実。


「報告の後、作戦開始を全体に告げて。その後にこちらの把握している情報通りに味方を誘導して欲しい」

「なるほど! ついにその時が! それではまずは報告を!」


 鳥籠から報告を受けてその情報を元に地図を修正していく。

 鳥の目で戦場を俯瞰するとかよく例えられるが、本当に鳥の目を使っているから便利さがよく分かる。

 それにしてもやっぱり……


「あ、アレだね、ニンゲンらしい動きだねえ。これなら凄く簡単だよ」

「ええ、凄くお行儀良すぎますね。おそらく骨たちが大した思考がないせいですね」


 ド丁寧すぎる。

 少しの間観測していれば完全に次の道が把握できるほどだ。

 ただひたすら純粋にしらみつぶしで動いている。

 狩りにはそこそこ自信のあるホエハリたちからみたら捜索のド素人過ぎてイライラする動き。


 獣道も足跡も無視して直進し、ある程度あるけば折り返して少し道を変えたらまた直進。

 木や地形が邪魔なら少しだけ避ける程度。

 こんな動きハートペアの前でやったらさすがのハートペアでもバツを言い渡す。

 まあ……今回はそれが敵だから良しとしよう。


 鳥籠に詳細を伝えて飛んでいってもらった。

 また私は身体リンクでイタ吉に接続。

 すぐに繋がった。


「お? また来たな? ちょうどいい所だ、ホラすぐ来るぜ」


 イタ吉、自身の小ささや骨軍団に敵視されていないことを利用して堂々と骨たちを見ていた。

 なんというかイタ吉サイズだとさすがにニンゲンぐらいの大きさはこわい。

 頑張って二足立ちしているがまるで大きさ足りてないからね。


 そのままイタ吉の横を骨軍団がすり抜けていく。

 ……と思った瞬間に崩落音!

 骨軍団はあっと言う間に下へと落ちていった。


「うっほー! おもしれー!

 バカみてーに落とし穴にひっかかったぞ!

 ニンゲンは面白いこと考えるなー!」


 イタ吉が穴を覗き込むと艶のある液体に塗れた骸骨たちが滑っている。

 もちろんまだ健在なようだが……


「やれ! 燃やせ!」


 ニンゲンの声がイタ吉を通して聴こえてくる。

 先程のミニオークの子分だ。

 投げ入れられるのはあの発熱させる魔法液が入った壊れやすい入れ物。

 それらを穴の中へ子分たちが投げ入れると派手に壊れた音が鳴った。

 そしてあっと言う間に炎が上がる。


「おっと熱い!」


 そう言ってイタ吉が穴から顔を出した。

 油が穴の中にあったわけだ。

 大して熱く感じなかったのはまだ伝わり具合が悪いのだろう。


「これでこいつらは全滅! さあ次だ!

 丸太転がしかな? 岩落としかな? 楽しみだなー!」


 イタ吉が楽しそうな間にリンクを切る。

 ミニオークとその子分たちは昔から罠づくりは出来たが、学んだ知識を活かしてより凶悪かつ効率的なものができるようになっていた。

 万能シャベルのおかげでこのような罠も楽々出来たのでいっぱい作ってある。

 ルート予測していくつもしかけてあるがこの調子なら平気そうだ。


「オジサン、ここの部隊を罠で殲滅したみたいです」

「ち、ちゃんと効果あったんだね! 良かった」


 次の動きがありそうな場所を調べる前に本当に倒せたかちらりと身体リンク。

 ……丸太を坂で転がして骨軍団が跳ねられていた。

 心配する必要はないらしい。


 その情報も書き加えて次へリンク。


「あ、きたきた。 みんなー、作戦の合図みたいだよ!」


 繋いだのはハック。

 安心するにおいたちは群れのみんなだ。

 父や母もいるが彼らは予備戦力。

 常に背後に控え旗色が悪くなった時のみ動く。


「よーし! やるか!」

「この籠についていけば良いんだよね?」

「はなまるもらえるように頑張っちゃうよ!」


 それぞれがガヤガヤと話している。

 そして鳥籠の移動と共に動き出した。

 彼らはニンゲンのように罠を作るのは難しい。

 だが戦力的には集団時に十分強い。

 ゲリラ的に横から骨軍団へ襲撃!


 鳥籠によって先に位置がわかっているのは強い。

 ホエハリが群れで横腹に突撃するだけで骨軍団が轢かれた。

 12体程度ならこちらもどうにか出来る頭数を揃えるからね。


 ハックが残党へ向かって魔法を唱える。

 小さい竜巻が起こって骸骨たちが空へ打ち上がった!

 いつの間に新魔法を……


「ローズお姉ちゃん見てた? 風の魔法だよ!」

「よーし、今度は俺だ!」


 そういったインカの方へハックが目を向けた。

 インカが跳ぶと右前足近くに拳の形をしたエネルギーが発生した。

 武技か!

 そのまま思いっきり骨へと殴りつける。

 拳型エネルギーは当たると弾けて相手を粉砕した!


「どうだ! これぞ新技正拳突き!」


 見てたぞーめっちゃ物理で押す武技じゃん。

 それめちゃくちゃ欲しい。


 ハックが小型のエネルギー盾を発生させるスキルで的確に攻撃を防いで怯んだスキに集団で殴る。

 これでここの骨軍団は全滅。


「じゃあ次行くねーまた後で!」


 ハックがそう言うと向こうは身体リンクが途切れた。

 相手から切ることも出来るんだね。

 そうして戦力図にまた書き加える。


 次々と減っては行くがまだ敵は多い。

 ガンガン繋いでいこう。


「あ、さっきカゴが来て誘導されたので準備中ですよ」


 草陰にいるらしく光景が一面葉っぱなのはたぬ吉らしいっちゃあらしいね。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ