六百十九生目 採用
「ふむ、見知ったやつがそこそこいるな」
コッコクイーンが物陰に隠れひっそりと見つめる。
はぐれコッコたちを寄せ集め100羽越えが集まっているところだ。
意外なほどの集合率。
「ママのこどもがいるの?」
「ああ。親子は直感的にわかる」
「そうか〜、それは『ざんねん』だね〜」
「残念?」
私やプリンセス3羽も同じように隠れつつ緊迫感と諦めの空気が占める場を見つめる。
プリンセスのうち1羽が言う残念にってなぜなんだろう。
親子対面なら感動の場ですらある気がするのだが。
「我らコッコ軍は訓練兵が兵卒に階級を上げるさいに、試練として自軍を追い出すのは知っているな? そのさい元自軍はスカウトを行わない。軍とは言い換えれば兵がクイーンに劣情を懐きつつ、崇敬し集う集団だ。親子は必ず忌避感を覚える。だから互いにすぐわかるし必ずスカウトしない」
「オヤやコと夜に『おどりあい』したいコッコはいないもんね〜」
「まあ、『おどりあい』ができるのは、エリ〜ト中のエリ〜トだけどけどね〜」
「プルプル」
「踊り合い……夜……ああ、はい」
深くはツッコまないでおこう。
やぶ蛇だ。
とにかく親子関係は軍にならないと。
だから残念につながるわけだ。
……ん? そういえば。
「……兄妹の場合は?」
「それは問題なかろう? 忌避感はないしな」
「わたちたちもなにもかんじないよ!」
「そ、そっかー」
良いのかそれ。ホエハリ族も他種族のことは言えないが。
とにかく隠れていても状況は進行しないため木陰から私たちは歩みを進め……
キラーコッコたちの前に躍り出た。
「……誰だ?」「あ、さっきの……」「ええ!?」
「ま、まて、クイーンがいるぞ!」
「「クイーン!?」」
コッコクイーンの登場に一斉に場がざわつく。
何せただの避難所から一転してスカウトされるかどうかの場になるからだ。
「わ、私は誰よりも大きく美声を響かせれます! コケコッコーーーー!!」
「おれ、じゃない私はここの誰よりも籠を速く動かせますとも!」
「なにおう! 俺こそが1番だ!!」
そして先程の話どおりその流れに参加せずに後ろに集まる者たち。
「うっうっ、亡くなったクイーンを思い出す……!」
「カーチャンじゃん……! 生きていたんだ!」
だがクイーンはそれらを一瞥した後に足を大きく踏み鳴らす。
一斉にコッコたちの声が消えた。
「話を聞け! 貴様ら敗走兵に朗報を持ってきた!」
さすがこういう時のクイーンは頼りになるというかまったく違う軍のキラーコッコたちをあっさり掌握した。
プリンセスたちもクイーンとキラーコッコたちの顔を何度も見回して驚いている様子。
「コカトリスたちの軍将は倒された! 貴様らは自由だ! 私と共に来ても良い、プリンセスたちの将来を見届けてもらっても良い、はぐれとして生き延びても良い! それを伝えるためにここに来た!!」
「お、おお……」
場から急激に高まる感情が抑えきれないような声が漏れみな震えだす。
「「やったー!!」」
「ヤツはもういない!」「クイーン、終わりましたよ……!」「カーチャン、アイツを討ったのか……!」
もはや私の存在を忘れられている状況だ。
このまま都合よくクイーンに任せておこう。
場はひと通り狂喜乱舞しクイーンの演説にキラーコッコたちが感激するなどがあった。
今は落ち着いて組分け。
まずははぐれとして生きる組。
彼らは単独で森を生き抜きまだ見ぬいるかもしれないクイーンを探しに行く。
また森から出たい者は私が手助けして別迷宮にも行ってもらうつもりだ。
キラーコッコたちははぐれの1匹状態だと静かだしかなり周囲に影響は与えない。
ただその選択をしたコッコはほとんどいなかった。
1番多かったのは……エリート選抜をする組だ。
このクイーンに改めて忠誠を誓おうとするものたちだ。
それぞれを面談して決めていくらしい。
結果は悲喜こもごもだろう。
だがそれに負けず劣らずの数がプリンセスたちの方へと向く。
先程の面談で落とされた者も含むとかなりの数。
将来のクイーンへ忠誠を誓うために今のプリンセスの身の回りを世話するのだ。
先程の戦いでコッコクイーンがプリンセスのガードが足りないことを痛感したらしい。
それに独立する時はやはりたくさんのコッコたちが必要。
そのあしがかりにもなるそうだ。
「さて、こんなものか」
「なんだかひと通りやってくれてありがとうございます」
「いや、しばらくは兵の追加の見込みが無かったから助かった。こいつらが育たないとな」
クイーンの立ち回りに感心しつつひとまずはこの騒動は終わることとなった。
だが……
「わたち、そのおまえのムレをみてみたい!」
「「えっ!?」」