六百十七生目 処刑
目隠しして拘束したコカケロスを前にコッコクイーンは横に立つ。
キラーコッコたちはコッコクイーンの動向を見逃さないようにと静まり返った。
「我らはこうしてここに敵将を捕らえ、戦いに勝った! しかしそのための犠牲は多い!」
「「むぐ……もご……」」
ちなみに蛇頭は単純に危険なので縛り闘鶏頭3つはコッコクイーンの要請により口を塞いである。
アレでは何か言いたくても話せない。
実際もごついている。
「敵将は、悪魔の力というものを手に入れてのさばっていた! この森と我らを破壊し尽くすために! それも見事援軍の此度の働きにより破壊され、今こうしてここにある!」
「「おおーっ!」」
キラーコッコたちから喜びの声が上がる。
そして示し合わせたかのようにピタッと止まった。
普段訓練とかしているのだろうか。
「敵軍は散り、もはや前よりも貧弱である。そして我らはより強大になった! そして敵軍に致命打を与える将首はここにある! 処遇をどうするか……貴様らに問おう!」
「え、ええと……?」
「つまりは処刑……殺すか否かだ」
キラーコッコたちがざわめき互いに言葉を交わし合う。
少したったあるころに声が上がりだして。
「処刑だ!」
「処刑……」「処刑!」「処刑を!」「処刑ー」
「「処刑! 処刑!」」
「ふむ、貴様らの考えは分かった。では……せめて命乞いに鳴いてもらおう」
嘴を塞いでいる部分をコッコクイーンが3頭とも外す。
コッコクイーンに促されそれとなく今までの内容を翻訳してコカケロスに伝えた。
すると3頭とも必死の形相で訴え始めた。
「「待ってくれ!」」
「確かに俺達やりすぎたけれど」「言うこときくからさ」「殺すのはやめて」
「いっぺんにしゃべるな!!」
「「は、はいっ!」」
コッコクイーンに叱られ縛られているのに飛び上がるほどビビっている。
今度は右頭から順に話し出した。
「その、俺もやりすぎたのは確かだけれども、俺たちも悪魔にそそのかされた被害者なんだよ……やつの言葉に抵抗できなくなっちゃうんだ……ほんと……申し訳なくて……」
「翻訳を頼む」
「あっ、はい」
コッコクイーンに言われ私が言葉を訳しそれから次へという流れができた。
次は左頭だ。
「殺さないでくれ! 頼むよ! もう二度とここ以外のコッコすらも食べないから! ほ、ほら僕ら縄張りがあるから、僕がここの縄張りをマーキングすれば他のコカトリスは絶対寄ってこないよ!」
そして真ん中の頭。
「私、まだじにだぐない! なんだって、出来るごどなら死ぬ以外ならなんだっでずるがらぁ!」
「――とのことです」
「ウックックックッ……」
「「ワッハッハッハッ!!」」
私の翻訳を聞くたびにキラーコッコやプリンセスは沸き立ちクイーンは笑いを噛み殺している。
歯はないけれど。
どうもこのパフォーマンスが狙い通りに行ったらしい……
「いやあ、すまんすまん。ところで……ローズオーラ殿はどうしたい?」
「えっ!?」
ここで私に話をふるか!?
「何せ直接戦ったのはお前だ。どんな非道い扱いを受けたり、暴言を吐かれたかはわからないが、どうせ何かされたのだろう?」
「う、ううん……」
先程の戦いが蘇ってくる。
ボスムーヴに小物ムーヴそして自爆特攻させる技など。
あんまりといえばあんまりである。
それらを比較的やんわりと伝えた。
「――といった感じでした」
「なんてやつらだ!」「同じ空気を吸いたくないな」「死ねー! ゲス野郎!」
「まったく、想像以上にひどいな」
「「ま、まってー!!」」
コッコたちが強くざわめきだす。
コッコクイーンもやれやれといった様子。
コカケロスが叫びだすとコッコクイーンは煩わしそうにまたまた嘴を3つとも塞いだ。
「「モゴッ!?」」
「黙れ下郎。何を勘違いしているかは知らんが……お前はそもそも戦いの場で命を落としていてもおかしくはなかったのだぞ?」
「「モガッ……」」
コッコクイーンの凍てつくような視線と私の後追い翻訳を受けてコカケロスは黙るしかなくなった。
「さて、改めてだが今の話を聴くにコイツは死すら生ぬるいな。悪魔にそそのかされていたとしても、一線をこえている。というよりももはやコイツは視界にすら入れたくない。誰かコイツに触って処刑したいか?」
「「否! 否!」」
「ふむ、それでは仕方ないな。コレ貴君の群れへ持っていけ」
「え!? アノニマルースに!?」
改めて振られて驚く。
「今回は何から何まで世話になったからな。こいつの命そのものも、おまけでやろう。煮るなり焼くなり好きにしてくれ。ただこの森からは永遠に追放させてもらう。こういうタイプは自身の思い通りにやれないと酷く苦痛を伴うだろうから、お前の群れでやってると聞いた集団労働なんかさせると、良いぞ」
コッコクイーンが黒い笑みを浮かべた。
うわあこれどうしよう。
「ヤツに死んだほうがマシだったと思わせてやれ」




