六百十五生目 王女
クイーンはプリンセスと紹介した。
クイーンの裏で隠れ見ているひよこたちだ。
クイーンと比較すれば普通のひよこサイズだがキラーコッコたち白色レグホンサイズと比較すればもはやおとなの大きさ。
「だ、誰ぇ……?」
「前もこっそり見てただろう、今回の助っ人、ローズオーラ戦友だ」
「だいじょーぶ……? しなない……?」
「……プルプル」
「姿は少し変わっているが、気配が完全に一緒だ」
3羽が顔を見合わせてから……出てきた。
赤と青と黄色。
天然のカラーひよこだ!
「よーし! ほめてつかわす!」
「わたちたち恐かったんだから!」
「プルプル!」
「……あれ?」
すごい感じがさっきと違うんですが……
フン! と手羽先を腰に当て偉そうに並ぶ3羽。
すごい強気に出たな。
「すまないな。まだプリンセスたちは訓練中でな。まともに対面する相手は私くらいで慣れていないのだ」
「い、いえお構いなく」
面食らいはしたがカラーひよこでそれを舌っ足らずで言われてもキュートなだけである。
……遠方から爆音。
それと共にプリンセスズは震え上がりまたコッコクイーンの背後に隠れる。
「「ひゃあ!!」」
「……詳しい話は後にしよう。兵たちは私たちをここまで逃がすために今も身体をはってくれている。まさかこっちの方向まで来ているとは思わなかったが……何せ奴らは集団行動の基礎がまるでなってなかったからな。ここに来てこうまで統率した行動を見せるとは……」
「囲まれていた、しかも集団でということですか……」
「すまないが本作戦への助力願いたい」
「ええ、もちろんです! でもあなたたちはどうします……?」
コッコクイーンは視線を1方向へ向ける。
確かあっちは……
「このまま川を超える。奴らが嫌う……いや私たちすら近寄らなかった『漆黒の嘴』の気配がまだ色濃く残る、カラスの縄張りに身を潜めるつもりだ」
「……わかりました、お気をつけて! ピンチになったら連絡を! やり方は――」
コッコクイーンに"率いる者"の使い方とそこから"以心伝心"を扱っての連絡を教えた。
ある程度の絆なら私のスキルが借りれるというスキルだね。
「なるほど、これは便利だ。我が軍にも覚えさせたいな……おっと。それでは武運を祈る!」
「ええ、ご無事を祈っています!」
こうして別れて私は追撃を開始することとなった。
「耐えろ! ここで倒れたらクイーンたちが逃げきなくなる!」
「ぐおおおっ!」
「隊長ー!!」
「さあ、どうしたどうした!」
どうやらコカトリスを止めるために無謀な戦いをしているらしいキラーコッコ小隊を見つけた。
多分コッコクイーンの護衛だろう。
浮いているのが20羽ほどに対してコカトリスは5羽。
落ちているのはもはや30羽ほどはいるのでは……
これで撤退判断を本当はしなくてはならないのだろうけれど後ろがコッコクイーンだからそうもいかないのか。
でももうコッコクイーンは大丈夫だ。
「みんな! 助けに来たよ!」
「その声! 先程の……え?」
またパワードスーツみたいに全身を大きく鎧で包みこむ!
針を変化させただけだからいくらでも代用は効く。
……まあそれを見てコッコたちがすっとんきょうな声を上げているが。
とにかく攻撃だ!
同時に裏で光魔法"ヒーリングラージ"準備!
同じく見上げてこちらを見ているコカトリスを爪で蹴り込む!
「うぐはぁ!?」
"峰打ち"で殺しはせずに次。
今のショックで動き出した他4匹。
とりあえず石化睨みした正面の相手に駆け込む。
「な、なぜ効かない!」
"影の瞼"と"戦場の獣"で防ぐのは強いな……
そのまま重さと勢いを活かして跳ね飛ばす!
「ぎゃあああ……!」
遠くへ跳んで行った。
コカトリスたちはとっさに太い木々の中へと隠れる。
「こういうところならアイツは入ってこれないはず」
狙いは合ってるが残念ながら私にも地の利はある。
大きくなった身体に気をつけつつこの大きさでも通れる位置をイメージどおりに駆け抜け……
勢いよくスライディング!
「背後っ!?」
「あの巨体で!?」
まずは直接突進!
3体目が驚いている所に私の身体が刺さる。
あくまで比喩表現なので大きく吹き飛んだ。
「うごっ!?」
「ここだぁ!!」
コカトリスが私の胴へ猛烈に連続蹴り!
それは分厚い壁を蹴るのに等しく……
鎧の口を開いて首をおもいっきり振り牙を相手に当てる!
「あっがっ!?」
「なんなんだ、なんなんだよお!?」
重量と力で回転して空に打ち上げられ傷が大きく引き裂かれた。
"峰打ち"があってもコレは痛そう。
背後から蛇2頭による攻撃が来たのでコレを尾で叩き込む!
「んな、がっ……!?」
蛇を叩いたら闘鶏部分も共に倒れたようだ。