六百十ニ生目 神風
ついにコカトリスリーダーと対面した。
こちらは『グラハリー』に"進化"してある。
やたらボスとか魔王とかが似合うムーヴをしているしているリーダーはコカケロスという魔物だった。
「どうした勇者よ、恐れて声も出ぬか?」
「よせ、兄弟。ヤツは我らの崇高な華鬘語が理解できるような頭をしているとは思えぬ」
「ならば後ろの卵を使うまでもない。我々の手で葬ってやろう!」
後ろの卵……本当だ。
よく見るとなにかの卵がある。
あれがコカケロスの……つまりコカトリスの産まれる卵か。
使うって言葉がひっかかるが……とりあえず相手の動きを見て対処しよう。
「「ゆくぞ!!」」
グワッと激しく大蛇が揺れる。
それに合わせて支えられていた闘鶏部分も揺れる。
ポーズをとり5つの顔が平行四辺形を描けるよう整えられてから鋭く光った!
「「固まれぇ!」」
「ぐっ……」
"影の瞼"が発動する。
身体は……動く。
ただわずかな時間だけ動きが阻害された気がするからあまり連続でやられるのも危険そう。
「あ、あいつ! まだ動いている!?」
5つの頭全てから範囲に向かって石化させられるのは恐ろしいな……
結果的にひとりで良かったかもしれない。
跳ぶように駆け爪を振り下ろす!
「うおおっ!?」
「はっはやい!」
羽根だけが切れる。
動きが蛇たよりなのに自由に闘鶏部分の身体位置を動かせるし……やりづらい!
急いでコカケロスは距離をとった。
「くっ……どうするアイツ!」
「ふんふん……なるほど!」
「よっしゃあ、それで!」
どうやら蛇たちと体内会話していたらしい。
私の追撃を逃れるために高く飛んだ。
真上か!
5つの頭に光が集まっていく。
魔法か!
霊気を祓うような明るい光が放たれる!
光のラインとなって空を描き出し私の全身に当たると同時に爆発!
景色がまばゆい。
「やったか!?」
やってないよ!
というわけで光の残り香を突っ切って駆け出し鎧から針をたくさん生やす。
"針操作"だ! いけっ!
「生きてるー!!」
「うおお、防げ防げ!!」
切り離され空を飛ぶ針たちはアクロバティックにコカケロスへ襲いかかる。
必死に"防御"で防いでいたがついには耐えきれなくなって落ちた!
大きい肉体がゆえに派手に土煙をあげる。
……確かに能力は恐ろしいが。
もしや完封できるのでは?
「お、おお……効いた……」
「ぐふっ……まだだ……」
「こういうときこそ……奥の手よっ!」
うん!? なんだこの禍々しい気配!?
コカケロスのまわりに瘴気のような黒い霧が出始める。
さらにその霧は卵たちに向かい吸い込まれ……
ヒビが入った。
「「行け! 卵たち!!」」
卵が割れ中からコカトリスが!?
いやそれだけなら問題ない。
まるで成長速度を無視して生まれた瞬間から急激に育ちほんのわずかな間に成鶏してしまった。
「キャッキャッ」「カカカッ」「アギャー!」
「ふん、オツムの中身までは成長しないか」
「あー、いててて……絶対俺たちに近づけざるなよ、良いな!」
コカケロスの急に現れたあの気配……
もしや悪魔憑き?
だとしたら目の大きさによってはかなり厄介。
悪魔は魔王復活秘密結社のカエリラスが異界からひっぱりばらまいて実験した存在。
こいつがそうなのかはわからないが……森を破壊しかけているくらいは恐ろしい存在だ。
「ゲェゲェゲェー!!」
幸い卵から生まれたてのこいつらは弱い!
多少悪魔の力で強化され狂化してあっても考えなしだ!
技と硬さでゴリ押しさせてもらう!
互いの身体をぶつけ合いながらこちらに突撃してくるコカトリスたち。
おそらく自身の大きさすら把握できていないのだ。
警戒すべきはなんらかの自爆狙いと時間をかけたことによるコカケロス自体の準備が整うこと。
初手は"防御"!
相手は硬い壁にぶつかるかのように自分からぶつかっておいて痛がっている。
自爆はしてこない。
連続衝突の質量押しをなんとかしのぎ……
"峰打ち"つけたまま戦闘の相手に爪を振るう!
「ウギアアァ!!」
「カアアアァッ!」
とにかく狙いがわからない以上慎重に早く倒す!
爪を振り回転して尾でなぎ払い……
思い切って頭突き!
4体ほど倒したが次々やってくる……
キリが無い。
それにやはり時間稼ぎか先程からやたら組み付こうとしてきてうっとうしい!
「つ、強すぎる!」
「だ、だが、なあ?」
「イヒヒ、良い、良いぞお前ら……今だ!」
この離せっ!
ってやっている間にコカケロスがこちらを睨みつける。
だが私に石化は効かな……私には?
「っ!?」
ガチガチと身体がしっかりと固まるのは……コカトリスたち。
しまった!? これが狙いか!