六百十一生目 強者
「こんなん聞いてねえぞ!」
「森にこんなやついたか!?」
コカトリスのうち1体は吹き飛んでノビている。
のこりは2体。
うろたえているうちに次の行動だ。
派手に音を鳴らし地を砕く勢いで駆ける。
すぐそばにもう2体もいるからあっさりたどり着き……
そのまま飛びかかる!
「う、うおおおおお!!」
暴れようとするのを重さと力で完全に封じる。
後ろの蛇たちがかわりに襲ってきたが鎧に牙が当たったらそのまま跳ね返されていた。
それを見て闘鶏部分が明らかに動揺する。
「か、硬すぎる……な、なあ俺だけでも助け――」
肉球パンチ!
「ぶべらっ!?」
なお今足の裏は針が変化した鎧で作られた重い硬い靴である。
しっかり"近接攻撃"の光をまとい"連重撃"のスキルもオンのままだから2回全力で殴られたのと同じである。
……もちろん"峰打ち"もね。
目を回したところで次ラスト!
背を向けて逃げる闘鶏部分とこっちに向かって必死の威嚇を繰り返す2頭分の蛇。
とぐろをまきやたら縮こまっているからビビっているのがわかる。
逃さない! ジャーンプ!
「げえっ!? ウソッ!?」
重量モリモリの……ダイレクト踏みつけ!
「ぐぎゃっ」
まさにひきつぶした声が足元から聴こえた。
"峰打ち"は入っているものの完全に気絶している。
早めにどいて……と。
とりあえず彼らはひとまとめにしておいて治療を施す。
"無敵"も同時にかけるのを忘れずに。
これで戦意をなくし他者との協調性が少しだけ芽生え逃げ出すだろう。
それにしても……確かに前の森にコカトリスだなんて見かけなかったなあ。
もちろん森の魔物を全て知っているわけではない。
ただこんなに派手に暴れるタイプの魔物ならば知っているはずだ。
だけれども漆黒の嘴……つまりアヅキがいなくなるまで息をひそめていたとは。
パワーバランス的にも本来はもっと弱い勢力なのだろう。
そんなこんな考えつつ走ればすぐに音に釣られ新たなコカトリス!
「さあかかってこぶふぅっ!?」
「うわあなんだコイツ強い!?」
奥地までやってきた。
コカトリスは集団でも動きはてんでバラバラでまったく数の利を活かせてなかった。
というか互いの足を引っ張り合う場面も。
あとやはり石化は強いからとにかくそれを押し付けてくる。
効かなければ腕っぷしでとパターンが決まっているのでほぼ一方的に勝てた。
問題はこの先に気配を感じるリーダー格か……
話によると蛇側の丸呑みもおそろしく強いらしいから大きくなれるグラハリーを選んだという面もある。
十分対抗できるといいのだが。
石化も強いらしいからなあ……
とにかくこちらは相手の技で即死に等しい行動をされがちだ。
補助魔法は道すがらかけてきているのでだいぶいい感じ。
あとは……普段はあまり使わない魔法も。
[アクティビィ 対象の生命力と傷を徐々に回復する。また身体が活性化して一部状態悪化に対し抵抗力が高まる]
普段は使いどころかわからずにそんなに使わない光魔法のひとつ。
自分しかいないし強力な石化もなんとか防げないかなあ。
とりあえずズズイと進んで見よう。
この形態は不意打ちは無理だしね。
木々をかきわけ進んでいくと少し開けた土地にそれは……いた。
それははっきりいってコカトリスとは別物だった。
確かに同じ系統だとはわかるがまずサイズが違う。
闘鶏部分は二回りは大きくなり尾のような2つの蛇は立派な丸太がごとき太さ。
そして目立つのはやはり闘鶏の頭だ。
もともと頭の多い生物だがここにきて闘鶏の頭が3つに増えている。
なんでもアリか! "観察"!
[コカケロスLv.28 比較:ふつう(異常変動あり) 状態変化:不明]
[コカケロス コカトリスのトランス体。別名コッコイーター。睨んだ相手は全て石化し蛇の頭が次々丸呑みする。卵は産んでも育てない]
コカトリス! ってなんだろうこのステータス。
こういう"観察"妨害する相手はたいていよろしくない力を持っている。
3つの頭が同時に笑いながら闘鶏の身体が持ち上がっていく。
というより尾の大きな蛇が身体をうねらし地面に腹をつけて持ち上げているのか。
ちょうどそれぞれの頭位置がならぶところまで持ち上がると翼を前で合わせるようにした。
ニンゲンで言うところの腕組みかな。
「「ハーハッハッハッハッ!!」」
「誰も帰らぬからおかしいと思えば」
「勇者どのが単身乗り込んできたか!」
「ならばその蛮勇に答え」
「「愚者として葬ってやろう!!」」
なんだろう。すっごいボスムーヴしているな。
いかにも何かの力を手に入れ万能感から振る舞っている感じ。
それに最近うまくいってるみたいだから余計に。