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五十八生目 軍勢

 多すぎて数え切れない!

 獣型人型鳥型なんでもござれの軍団!

 こんなんやってられるか!!


「逃げる! 急いで!」


 気づけば足元の骨すら動き出している。

 このままではこの場にある骨たちがみんな動き出すのも時間の問題。

 こいつにとって死体は全て味方か!


「キラーコッコたちは上空のまま素早く撤退!」

「わ、わかった!!」

「なんだこの光景!!」


 雄鶏たちを数匹の鳥骨が追っていったが強くは無さそうだし大丈夫だろう。

 問題は地上組。

 "私"とオジサンはすぐに駆け出したもののあっと言う間に骨たちが形づくっていく。

 早く逃げたいが行く先々で道を塞いでくる!


 右、左……いやあそこの骨も組み立てられてる!

 ある程度は強行突破!

 炎膜魔法(フレイムガード)を唱えた後突進!

 多少のスケルトンなら燃えて砕ける!

 だが追ってくるスケルトンは数えるのが馬鹿らしいほど。

 囲まれる前に間に合え!!


 一番端のスケルトンにオジサンとともにタックル!

 そのまま外の森へ!

 背後は振り返らずに走る!

 振り返らずとも聴こえるガラガラと骨の鳴る音。

 速度を上げてさらに直進。

 しばらく走り続けた。

 そうする事でやっとその音は聴こえなくなった。




「アレはマズイ!」

「早く対策をたてねば」

「我々より多かったぞ!!」


 雄鶏たちとなんとか合流し帰還できた。

 口々にどうにかせねばと言うが打開策は思いつかない。

 私たちも一旦進化をといて休憩中だ。


 スケルトンが寝てくれる気はまったくしないし視覚がないので目潰し系は無意味。

 いくら単体が弱くとも数でゴリゴリ潰されれば無意味。

 私達の仲間をただかき集めて正面から殴り合っても勝てない。

 だが希望はある。


「彼ら単体では大したことがないし、頭が良いわけではないから……それに作るのはニンゲンひとりのみ。

 行動力は無尽蔵じゃないから、正面突破は無理でも……」

「き、奇襲と地の利を活かした罠で、少しずつ削っていけば?」


 そこまではみんな納得した。

 だからこそ『うーん』と誰もが悩むことに。

 どんな罠でどんな場所にいるか把握していつ来るかわからない敵を迎え撃つ?

 あまりにも戦力差が大きすぎて思いつきにくい。

 ……あっ。


「そういえば、キラーコッコさんたちも追われていましたよね? 倒したのですか?」

「いや? 途中までは追ってきたがなぜか見失ったようにいきなり引き返していったぞ」

「上から見ていたが、お前さんたちはずっと追われていたな! ありゃ大変そうだったな!」


 うん……? もしかして。

 えーっとログをさかのぼって……あった。

[霊化 自身の姿に別次元を覆い被せ存在ごと隠蔽する。現実界への媒体が必要でそれが見えたり霊体感知により暴かれるが比較的隠密性が高い。]

 もしかしたら、使えるかもしれない。


「よし! キラーコッコのみんなは一度群れへ戻ってこのことを伝え、出せるだけ数を出してもらって良い?」

「ああ、良いが何をするんだ?」

「霊化したままなるべく隠れつつ骨軍団の見張りを頼みたい。おそらくやつらは生きている存在にのみ反応できるんだ」


 彼らには目も耳もないからそれらを潰す手段は意味がない。

 だが目も耳もないから作り出した本人が見ながら指示を出すか生命反応を追わせるしかない。


「ほう! だが我々も生きているぞ?」

「それは透明になるいつもの魔法でごまかせるはずです。ただニンゲンに目で見られると気づかれるの気をつけて」

「なるほど分かった! 現状を把握したらそっちに伝えれば良いんだな!?」


 そのままテンポよく話はまとまり私達は別れた。

 オジサンは報告を受けるために隠れられる場所へ移動。

 そして私は私の群れへと走った。




 群れへと戻った私は真っ先に窯の側へと向かった。

 そこには私達が作って出来上がったばかりのものが並んでいる。


「おかえり、どうしたの慌てて?」

「あ、ただいまもどりました! ちょうどいい所に、前私が作ったアレってあります?」

「ああ、それなら……あった、ここにいっぱいあるよ」


 ハート兄がそう言って積まれた道具を見つけてくれた。

 それはホエハリには扱えないような代物だ。

 よし、予定よりはやいけれどこれをあの子達に渡す時が来た。


「みんなに伝えてもらいたいのですが、実は……」




 今度は天然洞穴の方へ来た。

 みなえっちらおっちらと家造り作業をしている。

 アヅキはともかくイタ吉たぬ吉もここにいたらしい。


「やあホエハリのあねさ……ええ!? なんだか数が多い!?」


 ミニオークの子が驚くのも無理はない。

 私の背後には群れの仲間たちがゾロゾロとついてきている。

 こんな事は一度もない。

 そして私含む5匹がとある道具をくわえていた。


「まずはこれを受け取ってくれ、色々頑張っている褒美でもあるが……急用だ」

「お、おう!? 魔獣使いの旦那、これって……スコップ?」


 シャベルとも言う私特製のニンゲン用道具。

 だが土の加護を血で与えたこいつの性能は良いはずだ。

 ミニオークが受け取ると両手で持って扱う大きさなのがよくわかる。


「そう、それは一種の武器だ。突いてよし叩いてよし切ることもできるが何より掘れる」

「へぇ〜、たしかに頑丈そうだけれど武器に……おお!?

 ちょっと掘ったらまるでゼリーみたいに!?

 それに伝わる感触が……気持ちいい!」


 私は使えないから試していないんだけれど、やはり土の加護は土を掘るにも向いてるらしい。


「おお、主と皆々様、どうなされたのですか?」

「なんだなんだ? 面白い事が始まるのか?」

「うわっ、いっぱいきている!?」


 アヅキやイタ吉たぬ吉も集まってきた。

 ミニオークの子分たちもシャベルを受け取っている。

 ここらじゅうを穴だらけにする前に伝えねば。


「今回みんなで来たのにはわけがあるんだ。実は……」




 もはや日が沈み2つの月が照らす夜。

 私はオジサンの元で雄鶏たちの次の報告を待っていた。

 その間に手に入っていたスキルポイントで新スキルを獲得する。


[身体リンク 対象の許可を得てなおかつ親しいものなら対象の感覚を受け取れる。こちらの感覚は送信されず思考は互いに共有されない]

 かなり変わり種のスキル。

 だが今回みたいな戦いでは味方を通して見られるので便利だろうということでゲット。

 ただし親しくないといけないので雄鶏たちとは無理だ。


 鳥籠が空から音もなく降りてきて近くの枝に止まった。


「報告! 敵軍団縦4横3の編隊で別れ未だ進軍中!」


 さらにそこから細かい今居る位置などの報告があり、終わり次第また飛び去った。

 骨軍団は12体で編隊し行軍している。

 私達を見失ったあと、ニンゲンがいた場所から私達が逃げた方向を中心にしらみつぶしに探しているらしい。

 他の魔物たちはわざわざ関わらないように避けているものの強力な魔物だとたまに潰すこともあるようだ。

 だが現在まだまだ9割は健在。

 数は発見されたものでおよそ600。

 なかなかふざけている。


 肝心のニンゲンは骨の山だったところから動いていない。

 そのかわり他の個体より凶悪そうな骸骨やガス状の何かが見張っているのだとか。

 相手はその時間に休んで行動力を治しているようだ。

 一晩休まれたら治ってしまうだろう。

 ケリは今晩中につけたい。


 骨軍団は基本的に他の野生生物を見つけてもスルーしている。

 その代わり敵対するものには容赦していない。

 おそらく私達の生体反応を特定できて探っているのだろう。

 逆に言えば、あの場にいなかったものは不意打ちし放題だ。


 さてそろそろ始めよう。

 私は合図のために目を閉じ身体リンクを使った。

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