六百八生目 天敵
10羽いたキラーコッコは5羽にまで減らされていた。
のこりは石化という硬直状態になってしまい身じろぎひとつせず床に転がったり攻撃を受けて籠ごと落とされていた。
残りの5羽も籠の破損がひどい。
このままでは蹂躙だ。
だが……コカトリスの蛇のうち1頭が何かに気づいたように激しく首を振り回し顔が険しくなる。
牙を向いて威嚇する姿勢。
他の頭とも連携が取れ一気に警戒度が高まった。
だけれども。
「もう遅いぞ腐れ中途半端蛇鳥野郎」
キラーコッコのひとりが血を拭いながらつぶやく。
突如四方八方からキラーコッコたちが『そのまま』現れる!
先程からみていてなんとなくは思っていたがやはりコカトリスは同時に2つや3つの頭から石化の視線は送れないらしい。
そして今みたいに一斉に現れたさいは誰が使うかで争いになり……そして3つの頭の瞳が中途半端に光るだけで不発に終わる。
キラーコッコたちにコカトリスが気づけなかった理由……それは岩や土の裏に隠れられていたからだ。
サーモグラフィー的に見えるピット器官も無敵ではない。
赤外線が物理的に届かない遠い位置と物理で防がれる障壁には弱い。
それでも普段から警戒していればわかったかもしれないが……
正面に堂々といたキラーコッコとの戦闘に意識を割かれてしまっていたんだ。
当然キラーコッコたちが相手のこういう事情を知っていてやったとは思えない。
ひたすら犠牲を積み重ねて得た学習なのだろう。
それと私が昔教えたゲリラ戦法みたいな知識もオリジナルミックスしている。
正面のキラーコッコたちはバレないように位置誘導していたし普段から籠に入り空を飛び姿を消して鳴き続けるキラーコッコの習性を全て不利になるからと抑えていた。
そうキラーコッコにとって鳴かないのは普通ありえない。
だから天敵のコカトリスは鳴いている10羽しかいないと強く思い込んでしまったのだ。
キラーコッコたちはたっぷりためこんだ力を解放する。
本来キラーコッコたちが閉じこもるための鳥かご。
それが大きくかつ部位ごとにわかれ展開される。
錯乱しているコカトリスの全方位にあっという間に鳥かごが完成した。
それは普段キラーコッコが使うものより遥かに大きい。
そして足元は無く側面を地面に刺して使っている。
柵はコカトリスが出るにはスキマが狭すぎる。
闘鶏部分が寄ってタックルをかますもビクともしない頑丈さ。
周囲のキラーコッコが籠に力を注ぎ耐えている間に……
さらに追加のキラーコッコがやってきた。
彼らは更に別の力をためこんでいる。
上空に飛び上がり30羽一斉に……様々な魔法を叩き込む!
そう様々なのだ。
霊魔法や飛行魔法の応用攻撃だけではなく風や水それに氷なんかも飛んでいく。
これまでのキラーコッコならありえない行動だ。
それでも彼らは新しい戦法のためにあえて協調性だけではなく個性も伸ばした。
そしてこの猛攻につながる。
キラーコッコの天敵であるコカトリスにとって普段キラーコッコがしない攻撃はあまり対策を取っていない!
「コカアアッ!!」
籠の中で逃れられず"防御"してもまともに喰らう。
降り注ぐ攻撃はその殆どが当たり……
気づいた時には倒れ伏していた。
籠が解除されみながじりじりと近づく。
見た目は完全にノックアウトしているようだが……"観察"!
「……あっ! 危ない!」
「まさかっ!?」
キラーコッコたちの動きが私の声で止まり1羽に向かって隠れていた蛇の頭1つが跳んでいく!
そして……キラーコッコの目の前で止まった。
闘鶏部分がやられて重りとなり動けないのだ。
必死に威嚇を繰り返しキラーコッコたちに下がらせる。
最後の悪あがきに困惑するキラーコッコたちだが……
コッコクイーンはいつの間にやら隣から飛んでいた。
「見苦しい!!」
轟音と共にコッコクイーンが着地する。
その脚は的確に蛇の首を捉えていた。
痛みと驚きに怒り狂い暴れる蛇。
その頭に向ける視線はゾッとするほど冷たく……
無いはずなのにカチャリと拳銃を構える音が幻聴されるようだ。
「滅べ」
次の瞬間に蛇の頭に3つの風穴が空いた。
拳銃……ではなく強烈なクチバシつつきだ。
今度こそコカトリス全体は動くことはなかった……
「祝杯だ!」
「「おー!!」」
天敵の討伐。
それはキラーコッコにとって大きな一歩だった。
みな安全な水を大いに飲み食事を喰らっている。
私はその様子を見ながらコッコクイーンの隣で話を聞いていた。
「やつらはほとんど群れはつくらん。だから1羽倒せば少しはしのげるだろう。だがその代わり別の奴が幅をきかしだす。すぐにでも次が来るだろう」
「石化したコッコも含めてこちらはみんな回復は終えましたが……アレの連戦は厳しいですね」
「特に『ほとんど』作らないはずの群れを敵ボスは力で従えさせているらしい。やはりそいつを落とすのが最優先だ」