六百四生目 居座
神の使い。
それは神の力を引き出して使う者の事。
特定の神……今回は蒼竜に認められることが大前提だ。
私は神の力を引きだすところまでは成功したのだが……
これどうすればいいのか。
「こ、ここからどうすれば!?」
「え? そのままでも十分脅威だと思うんだけどな……まあいいや! 神使行使はキミの在り方を肯定し、僕の力で現象を起こせるよ。逆に打ち消すこともできるかも。まあそこらへんはいろいろ試したらわかるんじゃない?」
「雑……」
「仕方ないじゃん、それ僕に対して息ってどうやってやり、何ができるんですかって聞くようなものだよ!」
ううん生まれつき神ならではの返答をされてしまった。
ただ少し思いつくことはある。
召喚獣の『宣言』を打ち消すことだ。
あの時はたしかに宣言を上回った拘束ができた。
その時をイメージしつつ……周囲に向かって効果を広げるように。
「相手の『宣言』を……無効化する!」
腕ごとマントを振るうと周囲に青白い光がひろがる。
ドーム状に出来た光は蒼竜も飲み込んでから霧散した。
ただ蒼竜にも少しだけ青白い光が漂っている。
「お、何か出来た?」
「何か……出来たみたい」
なんかできてしまった。
ただ……これ似たようなものを見たことがある。
グレンくんの勇者の加護だ。
周囲に悪魔特攻を与えるものだったが……
もしやグレンくんは勇者だし無意識に神の力を扱えているのかもしれない。
勇者に神はつきものだし。
「……あれっ? マントが……」
「色が変になったねえ」
蒼竜の言う通り"鷹目"で見てみたらマントの下端側が変色している。
というより脱色したかのように白くなった。
……試しにもう一度!
「宣言無効!」
力は問題なく使えた。
しかしマントの脱色は進み下側1/3程度が色抜けしてしまった。
それにぼやっと感じるこの感覚は……
「もしかしてこれ……神のパワーを使える残量?」
「ああ、そうなのかもしれない。そういえば昔誰かも似たようなことを……忘れたけれど。あくまで神の力自体は僕の本体から供給されているけれど、それを扱えるキャパみたいなのかもね?」
ううむ。そう言われると不安になってきた。
なにせコレどうやって治るのかとか擦り切れたらどうなるのかあたりまったくわからない。
過去読んだ本にもあんまり記述検索に引っかからない……
「……今日はここでやめておこう」
「ウン? まあ、そうだね! お腹いっぱいで眠いし!」
「え? どこで寝る気で?」
「え? 用意してないの、神用スペシャルスイートホテルルーム」
「へ?」
こっこいつ……居座る気だ!
とりあえず元に戻る。
訓練してどういうものか身につけるためにも数日かけてやることにしよう。
蒼竜はなんとか客室確保して寝泊まりすることとなった……
「フンっ!」
「あっ!?」
私の模擬剣が吹き飛ばされる。
くるくると空を舞った後地面に叩きつけられた。
対峙するのは同じ模擬剣を持った鎧男。
その中身は無くいわゆるリビングアーマーと呼ばれる魔物。
私に剣戟を教えてくれる相手だ。
私が素の状態や今みたいに人型に"擬態"している時それぞれの闘い方を教えてくれている。
まあ今さっくり負けたんだけれどね!
「はぁ、はぁ、っむ、難しい」
「おや、どうしたローズ殿。随分とどんどん動きが悪くなっているが」
「そ、そうですか?」
模擬剣を拾い直してまた向き直る。
魔法だけに頼れない以上に相手が獲物を使う場合の戦いをもっと理解しなくてはならない。
だから頑張っているのだが……
「ふむ……見たところ異様に集中しておるようだが」
「ええ、まあじゃないととても読み切れなくて……」
「なるほど……ソレがダメだな」
「えっ」
集中しているのに……ダメ?
そう言われるのは意外だった。
どういうことだろう。
「ふむ……そうだな。剣を振る際に、いや接近をすること自体にどこをどうして何をするかいちいち脳裏で走らせてはいないか?」
「あっ!」
「どうやら当たりのようだな。それはそれですごいとは思うのだが……それは考えどう攻撃するかということばかりに集中している状態だな。まだ初々しい剣士に良くあることだ」
ふむ……どういうことだろうか。
攻撃されるのが恐ろしく攻撃するのがどうすれば良いかとか恐ろしいとか考えてはしまうけれど。
「例えばだが……私は剣を振る時に何も考えてはおらぬ」
「えっ!? あんなに的確に打ち込んでくるのに!?」
「おそらく思われている『考えていない』はぼーっとしている事であろうが……剣を振るということはそれではめちゃくちゃな振りになる。これは貴殿も剣を握りたてに覚えがあるはずだ」
まあ……それは確かに。
「剣を振った結果勝つ。それが『考えていない』状態の心理である」