六百三生目 神力
蒼竜と共に神使行使の実験中。
郊外で私はすでに"神化"して『ネオハリー』になっている。
蒼竜はなぜか私のケンハリマの姿になっていた。
「良いかい、今のキミは名ばかり神の使い。普通の生物とほとんど変わらないんだ。というかぶっちゃけ普通の生き物」
「この変なツノがあるのに……」
「ああ、それカッコいいね! 良いデザインだと思うよ!」
「これ私の"進化"で構成された部分じゃない――」
「さあやっていこうか!」
勢いでごまかされた……
やはり蒼竜も思うところがあったらしい。
「神の力というのは口で伝えづらいんだけれど……大前提としてキミはどうやっても神の力は出せない! 神の使いだからね!」
「早速!?」
「ああ、そこを勘違いすると話が進まないからね。良いかい、キミが使う神の力は……僕だ」
蒼竜……?
どういう意味がさっぱりわからない。
あ。でも…
「というと? ……もしや私はそーくんから神の力をもらうの?」
「うん。そういうこと。ただ受動的なもらうとは違って、能動的な引きだすかな。自分の奥底からではなく他者の力を引き込む。キミはそれに似たような事できないかな?」
……あ! スキルで確かに。
"率いるもの"や"指導者"はそれに近いかもしれない。
「……確かに!」
「おっ! 良さげな感じだね! じゃあそんな感じで僕を意識してやってみるといいよ!」
ううーんざっくり。
ただ知識面と感覚の話が揃ったのでだいぶやりやすいかも。
「それと……そのマントかな」
「マント?」
「うん。なんとなくだけれど、それは普通の物質で出来ているものじゃないよね。意識して力を引き出せたりしない?」
「うーん、やってみる」
マントか……
この若干ボロボロでダメージジーンズ的なかっこよさを追い求めていそうなマント。
これは普段のスカーフがホリハリーのミニマントに。それがさらに派生したもののはずなんだけれど。
正直これとツノのせいでかなり異形の悪がつく魔物に見える。
……うん? そいやこのツノはどう考えても蒼竜の要素だ。
そしてマントは蒼竜が言うには神の力を引きだすのに必要みたいな言い回し。
あまり自信はなさそう……違うなわざと紆余曲折した表現使って試し遊んでいるのだろう。
そういう神だし。
だから……イメージを持ちつつこうだ!
「うん?」
マントをひるがえし内側を右手で掴み取る。
マントは毛皮の延長に触られた感触は近い。
触った感触はわりとすべすべして高級そうな布。
そして身を包むように覆い隠し頭の方までもってくる。
ミニマントではないのでわりと余裕が大きい。
頭を下げツノへ同時に触る。
こう落ち着いた時に『ネオハリー』になるのはそうないのでいまさらまともにツノの感触を味わった。
わりとすべすべしているのにツノらしくゴツゴツしており同時にすこし温かい。
頭からつながっている影響で指先で叩くと中に軽く響くのが奇妙だ。
軽めだと思うから中は空洞部分が多いのかな。
蒼竜とは全く違うツノだがドラゴンのそれで間違いないだろう。
「なにやってるの? なんかイケてるよ!」
「マント意識しろって言ったから!」
あとツノは頭の位置。
蒼竜はとにかく帽子とツノはいつもある。
マントとツノを意識し関連するものとして蒼竜を強く思い描く。
ソレだけでは足りない。
あの戦いのときのように熱く勝ち抜こうとする想いを。
あの戦争の時のように限界のその先へ向かう心を。
蒼竜が見せた神というものの一端に触れた。
それを連想しつなげひとつとしていく。
目の前の相手はのほほんとしているだけだ。
あれは……魂の見た目を擬態しているだけにすぎない。
本当の蒼竜が語りかけた時がある。
最初に『ネオハリー』になった時だ。
アレを思い出し……そして出会い。
蒼竜の眷属ホワイトアイの力で感じ理解した。
いや……本当に会ったのは更に前だ!
そう。蒼竜の正体はもはや長年動いていない大山脈そのもの。
あれが蒼竜の肉。あの大自然そのものが蒼竜の力。
神とは……そこにあり。概念としてただある。
「……あれ?」
「出来たようだね!」
マントが風ではなく私から発せられる力により煽られはためく。
手を離すと後ろにマントが開いた。
全身をあの不可思議な感覚が覆っていた!
ツノを通して目に見えない何かを受け取っているようだ。
そして内側からその力がたぎり淡い光が漏れ出す。
これがもしや……
「おめでとう! キミは神の使いとして覚醒した!」
蒼竜が前足をビシッと突き出してキメて言う。
これは……維持にそこそこ意識を置かないとちょっとまだ難しいかな。
そもそもこれ……纏ったからといってどう使うかまったくわかんない!




