六百一生目 負荷
「それで、そーくん神はなぜここに?」
「あえて言うなら……キミたちの麗しい声に惹かれてかな」
「あ、真面目に答える気は永遠にないタイプだから無視して話戻しましょうか」
「神に対して凄まじい態度じゃん! 面白くなってきたじゃん!」
ユウレンとウロスさんで私の前世について語ろうとしたあたりで蒼竜ことそーくんが私そっくりプラス角と帽子つきで現れた。
神出鬼没とはこのこと。
話は戻され私の前世について話を進める。
まずは大前提として蒼竜にも私が異世界転生者だとつげた。
もはや隠しきれてないのでバレたくなかったがしかたない。
「異世界転生者……? ふむ……?」
だが反応はなんだか困惑しているような不思議がっているようなものだった。
もっと面白がって絡むかと思ったら急に真面目な顔である。
相変わらず掴み所がない。
その後ウロスさんが質問攻めして私が困惑しつつなんとか回答しユウレンが静止するも謎のパワーで振り切られ蒼竜が背後でガヤとばしていた。
なんだこの空間。
なんだこの空間は!
「ま、これなら迂闊に他人に話さないのは正解じゃん?」
「うんうん、神もびっくりだね」
「1番話すと危ないふたりに話したんだなって今日実感しましたよ……」
結局話が終わるのは夕食切り上げまでかかった。
なぜか蒼竜も普通に飯を食べている。
「いやー、今日は良い収穫があった、うっま! 良いねえ! これもうまっ」
「それで、いい加減なんで来たのか教えてくれない? アノニマルースの位置は教えてないよね?」
慣れた口付でがっつく蒼竜。
姿はケンハリマ……というか私なので違和感がすごい。
「なあんだ、そんなこと……まずアノニマルースは最近魔物たちなら名を知る者は多い。わりと広告活動うまくいってるね」
「みんなのスカウト活動の一環でたしかにソレは……」
「だから一度行ってみたかった。それで来たら知っている気配があってね。というのは街に来れた理由。もう1つは……キミに会いにきたのさ!」
帽子を跳ねさせキラリとキメ……ているつもりかな。
とりあえず冷めた目線を送っておこう。
茶化すな話せ〜。
「……信じてないね? まあいいや。ほらキミ、なんか僕の神力使って"神化"したじゃない? それが気になってね」
「えっ!? じゃあ本当だったんだ……?」
「なんだと思ってたのキミ」
意外だ……蒼竜がまともな受け答えを今みたいな状態でするとは。
というかやはりあれは蒼竜にも伝わっていたのね。
まあ本人の声聞こえたしね。竜だけど。
「ともかく、まさかこのスピードでそういう変化があったのにも驚いてさ。あと100年くらいあれば何かあるかなとは思っていたけれど」
「私が5回は寿命死するんだけど、ドラゴン算は毎度規模がおかしい……」
「えっ、短い!」
なんだろう。今鼻で笑われた気がする。
悠久の時を生きる無限寿命っぽい神はこれだから……
「まあともかく、調子どう? 僕の加護は便利?」
「いや、というか、アレらって全体的になんなの!? なんか出来ただけで理屈も何もわかっていなんだけれど!」
「そこからか! まあいいけれど! とりあえず……僕の加護の話をしよう。アレは、全力を出せるのさ」
「全力を……?」
一体何を言っているのだろう。
戦闘時に全力出していないわけがないのだけれど……うん?
そう言えば何か思い当たることが……
「何か気づいたフシがあるかな? まあ使ったことがあるキミならわかるだろうけれど、キミの中に眠る全ての力を引き出してその時やっていることにぶつけられるんだ。すごいだろう?」
「……待って。もしかして、火事場のバカ力を引き出している……?」
「うん? まあそうともいうかな」
「全部……?」
「全部」
ということはだ。
普段肉体は7割程度までしか頑張っても出せずもし死にそうな目にあった時に一時的に全開になるというものがある。
もちろんそれは生き延びるためであってその後ぶっ倒れても今は生きるため。
脳の負荷も普段あちこち効率よく使って全体的に使いつつも負担が常にあらゆるところで100%を受けないようにしているわけだが……これも生き残るさいに引き上げられる。
走馬灯は過去の出来事から死亡の選択肢を回避しようとしているしスローモーションは脳の処理をマックスで危険をどう避けようか考えているからだ。
ビビッと直感回避なんかもそのあたり。
もちろんそれはすぐ100%の負荷から下げることで無事にすむのだ。
つまりは。
「その力下手したら死ぬじゃないかぁッ!」
「えっ!? 自分で選んで自分で掴み取るために自分の全身全霊をかけるって時に力を使うんだから、もしその後多少危なくなっても本望でしょ?」
「知らずになんか勝手に発動して死にかけたわこの神ー!!」
「ハッハッハッ! そういう時もある!」
キラリンという擬音が聞こえてきそうだがそれどころではない。




