六百生目 転生
「さあさあ、異世界転生者だって吐くじゃん!」
「確かに、見る人が見たらあなたの事を『生者』と同時に『死者』としてみている儀式で色々チェックしているのをみたら、おかしいなとは思うかもしれないけれど……まさかここまで突き止めるだなんて」
私たちはお茶をすすりながら談笑……ではなく約1名のみ明るく私とユウレンは暗い顔をしていた。
その明るいウロスさんが私のことをまさかの異世界転生者であるむねを特定するとは。
やはり自身が転生に関する知識と実証の成功者だから強いのか。
私はユウレンの弟子についてから裏でずっと死霊術師の訓練や魔法の学習もしていたし定期的に魂の検診も行っていた。
それでバレるあたりカンが鋭いだけではない。
中身は人生手練のおばあさまなのだとウロスさんの子どもにしか見えない見た目と振る舞いのギャップに驚かされる。
ちなみに私は死霊術師としての才能は凡も凡。むしろ他のステータスを鑑みれば悪いくらいだった。
かなしい。
他にも剣はリビングアーマーに戦術はジャグナーに……と割と教えてもらう相手は多い。
「もうこうなったら仕方ないから……師匠にも話すしかないわね。面倒なことになりそうだから話したくなかったんだけれど」
「何があるかわからない、の相手に自分の師匠をちゃんと込めているのね……」
ちなみにこの場で茶と菓子を運んだりしている執事のカムラさんはバッチリ知っている。
完全にこのチーム死霊術師ではウロスさんかハブだったのである。
それだけ彼女をユウレンは危険視していた。
なにせ考えが斜め上で死者に対しては嗜好があるレベルで好んでいる。
何が起こるかわからないというのが今までの結論で……
今その何かが起こりそうになっていた。
「もうしかたないよねこれは……はい。私は異世界から転生した者です」
「へぇ〜! 何から!?」
「何って、それはニンゲン……?」
そりゃそうだろう。私の前世知識サルベージ的に。
記憶はないけど。
「ほう! ニンゲンから全く別種族の魔物に! しかも異世界に!! 面白いじゃん!」
「本人にとっては大問題よ。記憶がないのだし」
「知識はあるんだけれどね……思い出そうとすれば」
「不完全な転生なんじゃんな? じゃあ……」
ウロスさんはお茶をぐいっと飲み込み一息ついて。
「精神状態は? 生まれ直す時の記憶の始まりは? 魂の変質具合は? 損耗や疲弊は!? 知識の思い出すつてって? 未練や前世の執念を受け継いでいたりは? 肉体の変化による異常は!? 精神が肉体とさらに成長したさいに何が起きた!?」
「待って待ってストップ!」
やばい! ウロスさんの舌が止まらない!
さらに目が据わってる!
ユウレンの顔がひきつっていた。もう止められないというそういう諦めと予想通り予想をこえだしたというドン引きが合わさっていた。
「おお、それは僕も気になるな!」
「えっ!?」「「え?」」
不意に私の真横に現れた気配。
というか聞き覚えのある声色。
そして慣れてなさそうなホエハリ語。
そこにはケンハリマがいた。
私と同じ種族……いや。『私と同じ姿』のケンハリマ。
唯一違うのは節のような美しい角が生え小さな帽子をかぶっているという点。
私だけは。
ひと目見て。
こいつの正体がわかってしまった。
「ええと、どなた……?」
「兄弟か何かじゃん?」
「いいえ、違いますよ僕は――」
「そーくん!? なぜここに!? なぜ私の姿に!? そして話ややこしくなるから出てこないで!?」
こいつは……蒼竜だ!
蒼竜は神だし魂をなんやかんやして具現化しているらしくこうやって誰かの姿を真似れる。
できるはずなのに角と帽子はなんなのか。
アイデンティティというやつなのだろうか。
「もう……いきなり現れたあげく、性転換して私の姿になるだなんて。よくアノニマルースに入れたね?」
「アノニマルースには普通に手続きして入れたよ? それと別に性転換はしてないさ! 僕は僕だよ! 神に性とか縛りがあると思うかい?」
「こだわりはあってほしいかな……」
私をコピーしているから私とおんなじ顔が話しているという奇妙な事態。
ユウレンとウロスさんたちニンゲンたちからしたらよくわからないだろうけれどケンハリマにも当然顔つきというのはあるし体つきも存在する。
まったくごちゃごちゃしている間に話が大幅脱線してしまった。
「ふむ……つまりそこのそーくんとやらは自称神なんじゃん?」
「神だよ!」
蒼竜はそーくんとして紹介した。
はっきりと紹介するのは蒼竜という5大竜のうち1柱だと言うのはこの世界の負担的に重すぎる。
それに……さすがにコレを各地であがめられ立派な像もたくさんある蒼竜っていうのは酷。
そーくんでいいのだ。
自称もそうだし。