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五十七話 骸骨

 現在はささっと案内されるまま移動中だ。

 結局少数で偵察を優先。

 その間にスキルを確認。

 自動で行動力の治るスキル幸楽と抑えるスキル行動力節制がどちらもレベル3にあがったおかげかだいぶ自由が効く。

 一日の間を多く動くにはこの2つは必須だな。


 さらに無敵のレベルが上がった。

[無敵Lv.5 効率が上昇する。また敵意が無抵抗になるよりももう少し改善されることがある]

 ようはあんまり変わってないな!?

 まあ致し方ない。


 現場へと近づいてきたらしい。

 異様な気配が強まるなか、ついに辿り着いたときは我が目を疑う光景だった。


「この先がニンゲンの拠点だ……!」

「うッ!? 何これ、骨だらけ?」


 嗅覚が示す濃厚な死の香り。

 目の前に広がるのは骨墓場とも言うべきか。

 クローバー隊が昔に話していた、骨が山のようにある場所とはここか!


 そして奥地にボロ布で出来たたような小屋があるな。

 テントより少しはマシかもねと言ったほどだ。

 あ、あそこにニンゲンがいるのか……?


「よし、そっと近づくぞ……! 全員続け……!」


 雄鶏たちに動きを合わせて徐々に近づいてく。

 うへえ、踏む場所の殆どが骨!

 気味が悪い!!


 カラカラと鳴る骨を越え小屋の側へ。

 レーダーは……いるな、ひとり。


 スニークの魔法を自分たちの足回りにだけかける。

 こうすれば骨を蹴飛ばしても音はならない。

 さあ、中へ潜入だ。


 そう思ったその時。

 急に小屋の周りの骨たちがガタガタと鳴り出した!

 みながみなを見渡すが誰も骨をふっ飛ばしたあげく遠くの骨に当てたりはしていない。

 誰かのドジではないとしたら……


 驚いている間にぼんやりとした光をまとった骨が組み上がる。

 一瞬で人型の骨が組み上がった!

 だがみるからに使われた骨は人ではなく様々な魔物の組み合わせ。

 その手に骨で出来た剣を持ち虚ろな眼窩(がんか)がこちらを睨んだ。


 うへえ。これはおぞましい。

 しかも1体じゃなくて次々出来あがり合計7体。

 こちらと同じ数か!


 中からニンゲンがでてくる気配はない。

 とりあえず観察しよう。

[スケルトンLv.15]

[スケルトン 骨から生み出された低級アンデッド。意思は持たずただ生者を破壊し尽くそうとする。見た目通り身軽だが崩れてしまうと能力が消える。]


 ザ・魔物だ!

 ここまでされたらはっきりとわかる。

 中のニンゲンは死霊使いだ!


「来る、迎え撃つぞ」


 スケルトンたちが先にこちらへかけだした。

 私は機動防御に努めながらガンガンと強化魔法をかけていく。

 その間にオジサンや雄鶏たちが前へ出た。


 スケルトンたちはリーチに入る瞬間に動きが急変する。

 さも当たり前かのように人体の動きを無視した低姿勢な飛び込み。

 文字通り余計な肉を持たないスケルトンたちは身体のパーツを崩して異様としか表現しようない体勢で切りかかった!

 ギリギリ反応したオジサンは足元狙いの薙ぎ払いを跳んで避ける。


 だが鮮血が上がった。

 普通振ったら振り切るまで動作は変わりにくい。

 だが跳ね上げるように切り上げた!?

 見るとスケルトンが剣を持った腕を外してもう片方の腕で持っていた。

 んなアリか!


 非力さか私の強化魔法のおかげか傷は浅く済んだらしい。

 今度はお返しといった様子でタックルをかましている。

 まだ元気そうで良かった。


 雄鶏たちは乱戦状態。

 呪い絶叫の主たる部分である呪い効果。

 聴く耳が物理的にないスケルトンたちには当然効かない。

 だが吹き飛ばし効果はあるようでスケルトンたちが景気よく吹き飛んでいる。


 しかしそこはスケルトン。

 吹き飛んだ先から頭の骨だけぶん投げる奇行。

 ガンッと鳥籠に当たり響く硬い音と共にそこに他の骨たちが集まっていく。

 どんな理屈だ!

 鳥籠は壊れはしなかったがしっかり跡が残っている。

 怒ったように鳥籠を掴んでいた鳥足が離し、スケルトンたちをザクザク引っ掻いた。

 スケルトンも剣を爪に合わせていてなかなか素早い。

 それが同じ場で5体と5羽が鍔迫り合い。

 どちらが勝ってもおかしくない。


 そして私の方にも1体急接近。

 チェンジだ"私"!

 所詮こいつからは大した力は感じない。

 早いだけの奇策師だ。

 奇妙な動きをする事自体も一度見れば理解する。

 "私"の目は早いものほど良く追えるからな!


 相手が振りかざした剣はスキル影避けで回避。

 そのまま背後へ回り込む。

 むッ、肩をそのまま回転させて背後にまで剣を!

 だがしょぼい、防御!


 防膜魔法(シールド)にスキルの防御での膜と頑強魔法(スタッドボーン)を貫けず無惨に剣は弾かれる。

 そのままスキル肉斬骨断でカウンター!

 炎付与魔法(フレイムエンチャント)の爪で斬り裂く!

 ボウッ! と背骨を燃やし切り裂き手を緩めず連続爪攻撃。

 あっと言う間にスケルトンは灰へ還った。


 所詮は雑魚、オジサンも既に粉々に砕いてやったらしい。

 まだ残っている5体をちゃちゃっと灰にしてこいつらは終わりだ。




「あ、改めてあんたら強いな……」

「さっき剣を身体で弾いていたぞ、どんな毛皮だ!」


 雄鶏たちのさえずりはほどほどに聞き流しつつボロ布小屋へ目を向ける。

 明らかに感じる邪気が増していやがるな……

 そしてさも当然のようにそれは姿を表した。


 言い表せば、ニンゲンの女性に間違いはない。

 だが顔からは生気がなく白いというよりも青い。

 笑みを浮かべた目の球結膜、つまり白目のはずの部分は黒く瞳は赤く浮かんでいる。

 黒い衣装はまるで何かの暗黒儀式でも執り行うよう暗い色合いなのに華美にも見えた。

 そして異様に痩せているように見える腕が服の下から覗かせている。


 なんだ、これは。

 死んだニンゲンがそのまま動いているような異質さ。

 近くに要るだけで怖気がする。


[レヴァナントLv.15 状態:強化オーラ・絶望の気配 異常化攻撃:死霊操作]

[レヴァナント 固体名:ユウレン

人がレッサーアンデッドからさらにトランスした姿。生者より死者に近い存在だが人のまま人として死者を操る力を持つ]


 正解か! こいつが死霊使い!

 それに頭が痛くならないから恐らくコイツは前学んだ言葉と同じものを使うのだろう。


[絶望のオーラ スキルや魔法などで周囲に恐怖心をまいている気]

[強化オーラ 何らかの能力が強くなるさいに発せられている気]

 なるほど、この近くにいるだけで逃げ出したい気持ちはそのせいか。

 種がわかれば……わかっても嫌なものは嫌だな。


「スキルで恐怖を撒いてる、気を確かに」

「お、おう! 今度こそ負けてたまるか!!」


 そういって雄鶏たちが先走る。

 思いっきり恐怖に駆られた行動じゃないか!

 呪い絶叫がとぶ!


 だが彼女の前で声は霧散してしまった。

 やはり対策済みだったか。

 代わりにレヴァナントが手を雄鶏たちに向けると見えない力が放たれたのを魔感が捉える。


「上空へ避けろ!」

「!?」


 わけはわからない様子だがすぐに高く飛んだ。

 ゆっくり飛んでいる見えない力は雄鶏たちを追いきれずにどこかへと消えてしまった。

 何とか回避できたらしい。


「あら? バレたかな? それにさっきホエハリちゃんが鶏の声を出したような……」

「人の言葉もできるぞ」


 あえて老人風ではなく"私"の素の声に近い音で話しかけた。

 それに対して一瞬ギョロリと瞳が動く。

 "私"を見て、そして微笑む。

 ぞっとするなあ。


「あら? あらあら、どういうこと? ネームド? うふふふふ、興味深い」


 言っている意味はわからないが興味はアイツラからこちらへ移ったらしい。

 ッ!

 さっきの見えない力が飛んできている!

 腕の動きは関係なく、喋りは気を惹かせるためか!


 だがさすがに遅い。

 タッと走って避けた。

 見えない力が霧散し消える。


「あらあら、やっぱりあなた……『視える』の」


 なるほど、こちらを探っていたか。

 だがそれだけなら探られて痛い腹はない。

 ッて今度はオジサンの方へ!


「オジサン、正面に来ている、横へ大きく避けて!」

「わかった」


 見えない攻撃がゆっくりと飛んでいくが既にオジサンは移動した後。

 なるほど、これは厄介だ。

 死霊操作にする魔法だろうが、私たちに効くかどうかはともかく私しか見えないのは厄介。


「ふふふ、お隣のお友達は『みえない』のね。まあ、当たった所で期待は出来ないかな」

「だったら諦めて森からでてって貰おうか?」

「それはダメ。なぜなら……」


 そう言ってレヴァナントはその痩せぎすの腕を大きく振りかざし大の字に広げる。

 そして大量の見えない力が地面に……いや骨たちに吸い込まれる!?


「ワタシの理想郷をつくるのだから! さあ、この子たちと同じようになってもらうよ、うふふふふふふ!」


 次々と骨たちが集まり様々な姿形をとっていく。

 そしてあっと言う間に無数の骨軍団が出来上がった!

 こんな数え切れない数ほど作れたのか!

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― 新着の感想 ―
[一言] はじめまして。こんな面白い作品に今まで気づかなくても後悔してます。 検索で引っ掛かって、読み初めて2日。すでに引き込まれてしまいました。 まだまだ十分の一も読めてないけど、魅力たっぷりで寝る…
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