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五百九十八生目 秘境

 金融担当の竜人ラゴートから里のことの話を聴くことに。

 どうやら彼の種族ジンドに伝説に伝わる鍛冶屋がいるらしい。

 もちろん同種族だからわかるとは限らないが……ジンド自体が希少な種族だからどうかなーって。


「……とまあ、こういうわけなんだけれど」

「な、なるほど……突然来られたので何かとんでもないトラブルをやらかしてしまったのかと……あ、お茶のお出しもできないですみません」

「ああ、いえいえおかまいなく」


 真摯に耳をかたむけて話を聞いてくれただけでなくトラブルの心配や突然の訪問に気遣いもしてくれている。

 なんというか話に聞く以上に律儀で丁寧な方だ。


「それで……刀鍛冶のことなんですけれど」

「ああ! うーん……確かに伝説かどうかはわかりませんが……里に武器をおろすのに、めったに表に出ない相手がいるとは聞いたことがありましたね。確か(わたくし)の倉庫にも……少しとってきます」


 ラゴートが家の奥へ行き少しして戻ってくる。

 ドンガラガッシャンという音が聞こえないあたりふだんから整理整頓していそう。

 手に持ったのは装飾が何もない柄に入った刀。


「これです。お探しのものだと良いのですが」


 まさかのすぐにビンゴとは!

 グレンくんが受け取り鞘からそっと引き抜く。

 そこには緑色をした刀身が艶かしく輝く刃が。


 何でも斬れそうで……そして風が巻き起こる。

 驚いてグレンくんは鞘にしまいこんだ。


「い、今のって!」

「風の力を刀身単位で込めてあるそうです。詳しくなくて申し訳ない」

「い、いえ……それで、その鍛冶の人に依頼ってできるのでしょうか?」


 そっと"観察"してみたが店で売られていたものより遥かに強靭で鋭いっぽかった。

 あれならグレンくんの使用に耐えうるかも。


「あー、その……まず、(わたくし)はその鍛冶師の大雑把な場所しか知らなくて……顔も見たことないのです。それに里のみんなを刺激するわけには……あっ! (わたくし)はもう里を生涯立ち入れない覚悟で出てきたので、もう戻れないのです。それどころか別の相手を見かけたら怯えてしまう……隠れ潜んでいたので」

「うーん……」

「ですので、ぜひこの刀をお持ちください。これも倉の中で眠っているよりは幸せのはず」

「いや……その刀を持った時に思ったんだけれど、その刀はすごくラゴートさんのこと好きみたいですよ。僕は前似たような剣を持ったことがあるのでわかります」

「そ、そうなのですか?」

「ええ、ですのでそれは受け取れません。僕としても残念なんですけどね……わかってしまったので……」


 グレンくんが肩をおとす。

 たしかに今の話だと鍛冶師を見つけられるかもわからないし里の場所を言ってもらうのも心苦しい。

 だとしたら……


「それじゃあ……ええと、確認だけれどその鍛冶師のジンドさんは里には住んでないんだよね」

「え? ええ。そうらしいです」

「里の位置をできるだけ避けてその場所を探れる、そんな魔物を選抜して向かう……そういう場合でも厳しい? 迷惑をかけないように配慮できるメンバーに依頼する」

「うーん……それならば……口が硬く見つからないか、見つかっても変に思われない魔物たちならば……里を出たとしても、里のことは大事なんです」

「…………うん、よし。その向かうメンバーにだけ、付近の情報だけを教えます。これ以上は、譲れないのです……」

「うん! ありがとう、ムリを言ってゴメンね」


 本当にふるさとに対しても義理堅いようだ。

 結局私たちにすらその場所は伝えられなかった。


 アノニマルースの冒険者ギルドを通して信頼できる面々を依頼のかたちで集めてもらい再審査し正式採用。

 まずは上空探索ということで飛行部隊が行った。

 成果が出るのは……もう少し先の話。





 後日。

 オウケン王に呼ばれ授与式が行われた。

 先日の地下で会ったフランクなものではなくおごそかな空気の中でオウケン王の顔を見上げるだけですごい多くの手続きをくぐり抜けるハメになったのが大変。


 跪いた状態で面を上げてオウケン王の顔を見る。

 そこにはあいも変わらず豪快で強烈な笑みを浮かべた顔があった。

 そこで事前に用意された大会への褒め言葉がつらつらと読まれた。


「――と、実に健闘であったッ! それを讃えッ、褒美を取らすッ! 発言を許可するッ! 何が望みだッ?」

「あ、ありがとうございます、ええと……」


 あれ? とみんな心の中で思っているはずだ。

 周りの兵や宰相たちそれにオウケン王はいかにも当然とした顔をしているが。

 私たちは前年とか複数優勝しているアイツらに話を聞いていたから違和感たっぷり。


 この時前年度までなら特に指定はできず向こうが贈る何かをもらっておしまいだ。

 今年は優勝者が兵士じゃないからというのもあるが……

 そういうことではないだろうね。


 つまりこれはテイよく使ったこっちへの支援だ。

 そのために何かオウケン側が動いてもおかしくないための。

 もちろんカエリラス側がぶつくさ言うだろうが。


 ただカエリラス側は国全体に『いつもどおりに』と言っている手前強くは出られない。

 それについに結界を維持する装置はあと1つ。

 それどころじゃないというのもある。


 ある程度ならオウケン上級王側が有利と見ての行動……なるほどね。

 宰相が優秀なんだろうなぁ。

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