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五百九十七生目 太刀

「私のことはともかく! 大太刀は置いてある?」

「へ、へえ。ただ多分大きすぎますぜ」


 現在グレンくんの武器選び中。

 打刀を一発で壊してしまったので店主を呼んで別の武器に交換してもらった。

 今度は大太刀というものだ。


 ただ……でかい。

 グレンくんがどうやっても鞘から引き抜けない大きさ。

 結局鞘側をダンが持って必死に引き抜けた。


「うわあ……わわわわっ! バランスが!」


 グラリとグレンくんが揺れて必死に支える。

 さすがグレンくんは倒れずに支えたものの持ち上げた剣と自身の位置があっていない。

 これだと重心の関係で重さの関係以上にふらつく。


 出てきた刀身は確かに刀ではあったが……

 とにかく太い! とにかくデカイ!

 背中側なんか背骨みたいなのついててとんがりまくっている!


「やはりグレンくんだとこれは大きすぎるね……」

「大きいなら大きいで……やり方は、あります!」


 グレン君はあえて地面へ横付けし自身の後ろに刃をやる。

 つまり地面を支えにしてバランスをとったわけだ。

 そのまままた送り足。継ぎ脚!


「やああっ!!」


 下から上への切り上げ!

 カカシが強く斬り飛ばされる!

 今度は……


「わっ!?」


 鈍い音。

 カカシは確かに吹き飛んだ。

 しかし大太刀の刃である一部も空を飛んだ。


 確かに全体からすればわずかである。

 刃先が欠けただけとも言える。

 ……ただし一撃で。


「戦闘には……使えなさそうだね」

「ごめんね、もっと質の良いのを仕入れられればよかったんだけれど。強度を取り入れると今度は能力が落ちてね……普段はかかしを斬っても刃こぼれなんてしないんだけどなあ。まあそれは直しておくよ、まだ買ってもらってないしね」

「あ、ありがとうございます」


 ごめんなさい。それはグレンの剣の力を引き出しすぎる力のせいです。

 武器を店主へ返し肩を落とすグレンくん。


「まあまあ、武器ならいくらでもあるさ! 伝説の、勇者の剣がキミを待っているー!」

「勇者の剣かあ……刀も使ってみたかったなあ。強度と切れ味を両立させたような名刀とか、売ってないかなあ……」

「そういうのは、売ってないだろう! あったとしてもオーダーメイドだな!」

「オーダーメイド……」


 なるほど名工に作って貰えばいいのか……

 ただ刀鍛冶屋は記憶にはない。

 だが……ならばツテを巡ろう。






「おおー! 何もかもが大きい! 僕が小さくなったみたい!」


 ひと晩はもらった迷惑料で飲んで食べて楽しんだ後に私のアノニマルーズ(むれ)へ来てもらった。

 グレンくんは続々新しくなっている各地域を案内しつつ目的のサイクロプス区域へ。

 ジャイアントなサイズなためとうぜんなんもかんもが大きい。


 ニンゲンたちにはわりと好評なエリアなのでうれしい。

 どうしても間隔すらもデカいここの移動をぐるっとして……

 ついたのはサイクロプスリーダーが鍛冶をしている現場。


「こんにちはー! 聞きたいことがあって!」

「うん? なんだ? ふたりいるのか? 少し待ってくれ……」





「というわけなんです」

「なるほどなあ、そっちの初めて聴く声の武器か。しかも刀とな」


 グレンくんが持ってきたサンプルの刀をつまみ上げて刃をペラペラと動かす。


「確かに強度は悪そうだ。やはりニンゲンがもつにしても、武器は鉄塊棍棒が良いだろうが」

「気持ちはありがたいけれど、それは今求めてないからねぇ」

「俺は、やはり刀でかっこよく活躍したいなあ……って。他の武器も使えるし、ハンマーだってありますし」


 鉄や鋼製の刀では性能が下がるのは仕方ない。

 前世のように技術面で鍛えられ強度と切れ味を両立させたものが生み出される時代ではないし……

 こっちの世界にしか無い金属を使って合金仕上げにしようとしたらやはり名工に頼むしか無い。


「ふむ……なら、噂の鍛冶師をあたってみても良いかもしれないな。俺と同じように魔物でありながら鍛冶師らしいが……とにかく品がとんでもない力の込められたものが多くて、一部はニンゲン界にながれていて、それが確かこんな刀という武器だ。あの種は確か……」





「え!? (わたくし)の里にですか!?」


 彼とは普段書類上ばかりのやり取りだ。

 だからこうしてちゃんと向き合って話し合うのは初めてかもしれない。

 たぬ吉が金融担当任命したアノニマルースの噂を聞きつけ秘境からやってきた竜人。


 大商人との話の折り合いやその後もかなりうまくやっている彼の名前は……


[ジンド 個体名:ドンガルヴァ=ラゴート

 閉鎖社会をつくる種族で誰にも知られず暮らすことで小さく高度に成長していく。群れを出る時は絶対秘匿の言いつけと共に二度と出入りが不可能になる]


 もう"観察"内容から里のことをきくのがもうしわけなくなるな!

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