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五百九十五生目 契約

「それでは、決闘の儀による結果、魔法契約書の破棄と行使を行います」


 決闘に私が勝った。

 魔法契約書の処分と執行が行われる。

 処分は簡単。目の前でジャッジが燃やしておわりだ。


 私が気にしていたのはここ。

 魔法契約書に魔法記述などで見えないように隠蔽されて燃やした時に発動する何かがないかを気にしていた。

 その罠は今回はられていなかったが。


 そして行使だが……


「今回は代表戦ということで、全員に魔法契約書の効果を発動させます」


 ジャッジが淡々と述べる。

 しぶしぶうなずく4人とノビているひとりが並ぶ。


「えー、『汝ら、敗北をしたか?』」


 契約書が輝きノビているやつに向かって光が行き来する。

 すると契約書がピカッと輝いた。


「承認されました……『故にここに契約は果たされん』」


 契約書の光が伸びて5人に向う。

 まとめて当たると苦しそうな声が聞こえてきた。

 光が消えたらそこには影で作ったような鎖が彼らの身体に巻き付いていて……するりと消えた。


 今のが契約の縛りというやつかな。


「これにて決闘の儀を終えます。お疲れ様でした」

「改めて……おりゃ!」


 威勢よく短剣を掴み投げようとして腕を振るう。

 しかし……彼は掴んだまま手を離さない。


「……え!?」

「何をやっているんだ? そりゃ! ……なっ!?」

「やあっ! ああっ!?」

「それっ! ま、まさか……」


 彼らはみな短剣の柄を握りしめたまま何度も腕を振っては焦った声を出す。

 もうこれで安心だ。

 ジャッジはおじぎして机の上に契約書を置いて去る。


「な、何をした!?」

「いや、そこの契約書に全部書いてあるだろう?」


 オウカが机の上にある契約書を指差す。

 みな急いでその紙に詰め寄って端から読み出した。


「多い……細かい!」

「フルフェイスの鎧つけながら見るものじゃない……」

「んじゃ、かわりに内容を要約して伝えよう。まず、何でもひとつ言うことを聞いてくれるってことだったから、先行してその願いを書いておいたんだ。それは、『私たちへの危害を一切禁ずる』だ!」


 魔法契約書は心をどうこうすることは出来ない。

 人道的な面でも問題しか無いし。

 かわりに行動の制限はかなり細かくできた。


 危害を禁じるとひとことで言ってもその危害に対しては細かく書き込んである。

 決闘の申し込みはもちろん直接攻撃や監視それに尾行も含めたあらゆる行為を禁じてもらった。

 相手の思考により判定されるため安全。

 まったく思考せずに行うことはできない行為ばかりだしね。


 理解したらしいひとりが思わず握りしめていた短剣を落とす。

 落としてからハッとした顔をしていた。

 やっと手から離れたがそれは決闘の申し込みでもなんでもなかった。


「さらに! 大人の謝罪は形によって示される」

「それではこちらをどうぞ」


 5人分の署名欄のある契約書。

 それを見ただけで彼らは顔をしかめる。

 それもそうだ。さっきも散々やられたしまた字が細かい。


 こちらも契約書ではあるものの決闘時に使ったものとはまた違う。

 はっきり言ってこっちの契約書は……かなりあくどいこともこなせる。

 ゴウがサラサラっと書いてくれました。


 ちなみにオウカが持っていた。

 オウカによると、


「私ぐらいの立場になると、やりたいかどうかにかかわらずする必要があることが増えてね……」


とぼやいていた。

 まあオウカの性格的に確かにあまり好むやり方ではないかも。

 彼女の場合は斬り伏せたあとに『これが目に入らぬかー!』と印籠なんかを見せたがるタイプ。


「誰がこんなのに書く……か、あら、あれあれ?」

「ま、まさか……ぐぐぐ」

「次の5人分契約書には必ずサイン。これを謝罪の証として受け取ります。その旨が書いてあったはずですが。もちろん良く読んでもらって、違反する行為は何か、そのさいの罰則に関しても読んでもらってかまいません。まあ書いてもらうことにかわりはありませんが」


 ゴウが流れ作業のようにペンと紙を渡して書いたら受け取るをくりかえす。

 ノビていたもうひとりはダンが抱えたあとに活を入れたら目が覚めた。

 わけのわからぬまま名前を書かされる。


 そしてまた先程のように光って今度は彼らの影に蛇のような姿が入り込んでは消えた。


「はい。確かに。内容に関しては、お詫びとして一部金銭の贈答、繰り返さないこと、この契約書を破壊しないことなどが盛り込んであります。反故にした場合は……あまりよろしくないことが起こるかと」

「な、なんだこれ! 段階式……!? 最悪私たちが首輪付きに!?」

「しかも連帯責任って……お、おい! こんなのありかよ!」


 話聞いているだけで末恐ろしい。

 なんとこの契約書に書いてあることは意図的に破れる。

 あまりに大きい代償を支払って。

 だてに権力者やってない相手を敵にまわすとこうなるというシロモノだ……


「おいそれよりも! 早くこれをやらないと!」

「そ、そうか! やべえ!」

「いやだ〜〜!! アガッ!?」


 あ。今明確に「嫌」と言ったひとりが頭を抑えて倒れ込んだ。


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