五百九十ニ生目 決闘
床に転がされたナイフを拾った。
新参者がいきなり優勝をかっさらうことに面白くなさを感じた元1位の5人組がフルフェイス防具で顔を隠し決闘をしかけてきたからだ。
これで決闘成立らしい。
場所は路地裏から移り決闘場。
武の街でわざわざルールがある段階で察していたが……
すっごい立派なバトル場所だ。
長方形に広めのフィールドが観客席もたくさんあるのに6つも存在し現在5つ使用中。
ニンゲンなのに血気盛んすぎないこの街の住民……?
私はオウカたちと話を詰めた文書を魔法契約書に記していく。
なぜかというと……魔法契約書の独自ルールというか……つまり『魔法契約書の特性または書き方的には無効になるかもしれない』『魔法契約書ではこれは解釈が異なる』『場合により法的または憲法が上回ってしまう表現』に対して徹底的に詰めたからである。
まずひとつめ大事だったこと。
「なんでも1つだけ言うことを、というのは……」
「魔法契約書ではNG……つまり無効化してしまうのか」
「効能に対して願いがあやふやすぎるんだね」
ゴウが手元の資料をめくりダンが項目を読みオウカが「ふぅむ」と考えつつ語る。
そう。やつらめ早速私たちをひっかけるつもりだった。
ただ魔法契約書そのものは一般的。
契約をこなすという冒険者の役柄やオウカたちがなんやかんや重要なポジションについているため怪しいものをとっさに調べられる。
精査して確定していく作業だ。
「これは先に内容を決めてしまおう」
「ええと……こっちは? 疑いを止めて謝罪するって方」
「疑い止めるってすっげえ曖昧だな……」
「なになに……ああ、やはり。指定がないとみなされて解釈されます。最悪指摘不十分で消えますね」
「もしかして謝罪するっていうのも……」
「最悪……『っす』で済まされるかも……? 大人の世界って……」
「グレンくんには、そこらへんはまだ後の方がよかったなあ」
こうして記した文書を記し……
プロの決闘ジャッジの前で交換。
利用するニンゲンはそこまでいないが確かな需要があり使われる。
「うわっ! 細かいな……スゴイ量だ」
相手は驚いているがこっちも苦笑いである。
なにせやはり書いてある内容がこまかーくたくさんあるのだから。
しかも私がざっくり画像情報として覚え脳内で精査するとまあ出てくるでてくる……
この文面だと……たとえ無い罪でも告白させられる。
さらに1位を返すというよりももはや最初から私たちがいなかったことにされる。
さらにテテフフライト。あの原石すらもさらっと盗られるぞこいつは。
……"見通す目"! 読心!
(ぐ……読み込みには時間が足りなさすぎる)
相手リーダーはどうやら速読はあまり得意じゃないらしい。
今互いに決闘者だけしか前に出ていないからね。
リーダーの速読が間に合わないと不利益が生じる。
というよりこっちがここまで慣れた対応するのが想定外なんだろうなあ。
『盗掘者』ってさんざんバカにしてたしなあ。
本当に卑怯しているとも思っていそう。
ただ……この文面なら。うん。
「もしかして、負けた時の事を考えています?」
「何!?」
相手を煽るということにあまり慣れてないから心臓がドキドキする。
私はサラサラっとサインをしてジャッジに提出した。
「……へっ、なら俺も」
文面にこちらが勝ったさいの縛りに関してはなかった。
ならばさっさと飲んでしまい相手も返事を急かせれば良い。
……相手の強さは"ふつう"。
かなりの事故しなければ……つまり油断しなければいける。
ただ私は"変装"して剣士として片手に剣をぶら下げ戦うという縛りがいる。
私は剣士としてアチコチに登録してあるからね……
さらになるべくなら剣ゼロエネミーの能力も派手には使いたくない。
少しは大丈夫だけれどむやみやたらに広めるもんでもないし。
剣ゼロエネミーは本来国宝級になってしまうところをごまかしてもらったものなのだし私の手の内を多く晒し有名になるのもなんか違う。
多少はダメージ覚悟でしっかり握りしめて……戦うか。痛いのは嫌。
どうやら彼はこちらの仕掛けた契約書の罠……というより彼らが罠にハメようとしたカウンターには気づかなかったようだし。
勝てばなんとかなる!
「双方のサイン確かに。決着がついた時に、契約書の内容は果たされます。良いですね?」
「はい」「ああ」
「それでは、位置へ!」
私と相手。双方とも距離をとり所定の位置へ。
長方形サイズの決闘場の長いほうの端と端が初期位置だ。
裏路地から改めて剣ゼロエネミーの持ち手を掴む。
「位置につきましたね? それでは……始め!」
抜剣!
勢いよく引き抜き身体を捻りつつ前傾姿勢。
4足に慣れていると2足の普通はむしろやりづらいからあえて変種で!