五百八十八生目 再臨
「熱いっ! 熱いコンビネーションだっ!」
「やらせ……ない!」
グレンくんが長槍を取り出して構える。
確かにアレならまともに近接でやり合わずに済みそうだ。
そして私の方も間に合った。
あの時以来の『ネオハリー』だ。
大きく息を吐いて……吸って……"進化"だ!
それにより"神化"する!
「はああああっ!!」
「なっ!? なんだこの気配は!?」
剣ゼロエネミーから力がなだれ込んでくる。
剣先から龍脈が伝ってくるからだ。
光に包まれ殻が発生し私はその中で融解する。
そして……殻を突き破る!
無事もう一度『ネオハリー』になれた!
よかった。しっかり龍脈さえあれば大丈夫らしい。
「うおおおおっ!! 何が来ようと負けないっ!!」
「やれッ! 水攻めッ!」
インパルスの周囲がきらめき泡立ちだす。
さらに距離をとりグレンくんたちを正面にとらえつつ私も見られる位置についた。
だけれどもこの全合わせ+角つきなら!
ガードが出来ずとも……貫く!
空魔法"ディメーションスラッシュ"を全力で唱える!
剣ゼロエネミーを魔法で念力のように掴むために"フィクゼイション"を唱えることを忘れない。
インパルスから強い行動力反応……くる!
「うおおおっ!! 燃え尽くせ!!」
「させないッ!!」
私はみんなの前に……グレンくんのさらに前に立つ。
そして両腕に空間を歪曲した光を集めたような刃を持つ。
こっちも準備完了だ!
インパルスの背後から徐々に光が形になっていく。
半透明だった水の波がすぐに色づき肉つく。
透明だからこそわかるその波の厚さ。
「これがッ! 我らのッ!」
「俺たちのっ!」
「「全力ッ全開だああああああああっ!!」」
海のおだやかなそれではない。
押し寄せる何もかも飲み込む水の流れ。
それが私達だけを飲み込むために生み出されクリアに透き通っていた。
「……ハアアァッ!!」
"二重詠唱"で手に入れた2つの"ディメーションスラッシュ"。
どちらも全力を込めただけあって持っていても返してくる力は大きい。
今波に向かって大きく踏み込み両刃クロスさせ振り払った!
光が伸びて外側に貼り付き空間に傷が入る。
そして……波が空間ごと裂けた。
派手に砕け散り波の勢いは消え雨のように拡散する。
「何!?」
空間の切れ目が戻った時に……正面に大きな穴が出来た!
インパルスまでは届かなかったが……十分!
"フィクゼイション"発動! 剣ゼロエネミーを念力のように掴み……私の前に配置して突きの構え。
「突っ込む!」
今の私ならひとっとび!
地面を強く一度蹴れば派手な音と共に弾丸のように身体が弾き飛ぶ!
2足の身体でこういうことは慣れないが……いける。
「盾ぇッ!」
「やあぁ!」「うおおおおっ!」
インパルスの目の前まで来て水の盾が発生!
剣ゼロエネミーを食い込ませた状態で止まる。
だけど……押し込む!
「ぐううっ!?」
横へ逸れようとしているな!?
判断が早い。けれども!
こちらの方が速い!
背中からイバラを伸ばす!
"縛り付け"!
光をまとったイバラたちがインパルスを包む!
「束縛っ状態にはっならなっ……なっ!?」
全力を込めて何度もイバラを伸ばした時にひと何かの感覚がつかめる。
スイッチが入ったかのように不思議な気分になったあと……
インパルスを捕まえていた!
あれっ。
時間稼ぎのつもりがまさかの成功!?
「ぐぬぬっ……なぜ宣言が効かなっ……抜けたっ!?」
こっちも向こうも驚きの連続。
なぜかあっさりと束縛状態がとけてしまった。
ぬるりとドジョウのつかみ取りのように。
さっきの感覚も消えている……
けれど時間は稼げた!
水の盾から剣ゼロエネミーを引き抜き変化。
鞭剣モードにして武技を展開!
"龍螺旋"!
上空に飛び上がり剣ゼロエネミーは光をまとう。
通常ではありえない波打つような軌道でインパルスに襲いかかる!
「クッ! 水弾ッ!」
「うおおおっ!!」
もう遅い!
水のボールがひとつは生み出されたが斬り裂く。
そのままインパルスを切り裂いた!
「ぐごっ!? 重い……!」
「まだだ!」
光がインパルスの身体から飛び散る。
召喚獣の血のかわりだ。
しかし"龍螺旋"は追撃がある。
直後に水のボール含め爆発!
"連重撃"の効果で2連続爆発!
当然インパルスは煙を尾に引きながら大きく吹き飛んだ。
そして落ちて地へ伏し――
「ぐ、うおお、おおおおおおおおおっ!! ド・根・性!!」
立ち上がった!?
召喚獣とは言えしばらくは難しいと思ったのに。
きっと私の"頑張る"みたいにスレスレで耐えるスキル持ちか!?
いつになく瞳が燃え上がっているインパルス。
その構成された水の多そうな身体が煮えたぎっている。
明らかに何か危険そうだ。