五百八十七生目 熱水
「うおおおおおっ!! やってやるぜ!!」
熱く拳を振り上げた召喚獣が叫ぶとまとった水が気化し水蒸気を上げる。
拳を振るうと圧によって水蒸気が吹き飛ばされ私達へと飛んだ。
風の影響で熱くはなかったが十分な威圧を受けた。
[インパルス 比較:やや強い]
[インパルス 月の古き神1柱。滾りと哀愁を司る。水竜の姿で顕界すると言われている]
「こやつに力を示せッ! 我々では対処不能と思わせる程度にはなッ!」
「……わかりました」
「やろう!」
「うおっし!」
私以外の全員が武器を改めてとる。
オウケン上級王は跳んで安全圏まで移動し召喚石を掲げる。
私は……準備をせねば。
「みんな、少し時間を稼いで!」
「その間に倒しちゃうかもな!」
オウカがタンカをきる。
ただ……これまでの経験上神クラス召喚獣相手の場合はタダの比較的な強さ以上のことをするはずだ。
「宣言だッ!」
「ああっ!! 宣言! 『相手は状態変化や防御行動を行えなくなる』っ!! ハッ!」
水色の光があたり一面を包み込む。
そして……
「うわっ!? なんだか身体の調子が変だ!?」
「……言われたとおり一部スキルが使えません!」
グレンくんやゴウが言う通りこっちに不利な力が押し付けられた。
これはまたマズイものを。
「強化や弱体ッ、そしてしのぎ……それら柔は良いものだッ。しかしッ! 今は純粋な力勝負よッ! 突っ込めッ!」
「いくぞっ!!」
混乱するなかインパルスは容赦なく水をまとって突っ込んできた!
私達は慌てて散開し回避する。
私は駆けてとにかく距離をとる。
幸いこの部屋はもともと戦う予定だったらしく広い。
「受けられないのなら、先に斬るまで! こっちだ!」
グレンくんが長剣を構え直し突撃。
ゴウも矢をつがえダンも叫ぶ。
あの叫びは自身に敵の注意を引きつける状態変化を……あっ。
「効かないぞっ!」
「わっ!?」
「これもダメか!?」
ダンに注意が向いた瞬間に切り裂くいつもの作戦。
しかし今さっきの宣言でやはり効果がない。
初動の混乱からついいつもの作戦をとってしまっている。
当然手前に来ているグレンくんが狙われ剣を振るうスキを突かれて尾で殴られる。
「吹きとばせッ!」
「ダアっ!!」
「うわあっ!?」
光を込めた2撃目!
グレンくんはクセのように"防御"しようとして……気づく。
"防御"が出来ないと。
光が水となり尾でグレンくんがノーガードなところを吹き飛ばす。
スプラッシュ!
単にスキル的な防御だけじゃなくて剣を構えていてもあまり威力が減らずに肉体にダメージがいってしまうらしい。
後ろへ吹き飛ばされたグレンくんは着地すると膝をおり腹部をおさえうめく。
かわりに前にオウカたちが立ちはだかった。
「完全に急所をついたかのような入り方……アレは危険だね。宣言ってやつ」
「必ず攻撃は避けてください。援護します!」
まずい……試しにやってみたが強化魔法も入らない。
送られた目線に否の意を返す。
ゴウが苦虫を噛み潰したような顔をした。
「まさかエネルギーを満たして自然に硬化することすら防がれるとは……」
つまり私たちは今。前世のニンゲンたちとほとんど防御力が変わらない。
オウカたちがふんばっている間に私は壁の方へ駆ける!
さっき探知した時にあったほう……ここだ!
壁へ一心不乱に爪をつきたてる。
岩盤質だから掘るというより切り崩す。
むっ気配がこちらに!
「何をやっているかわからないけれどっ、とにかくスキだらけだあああっ!!」
「水弾放てッ!」
「わっ!」
水弾が何発か放たれ慌てて避ける。
なんとか跳んで転がって避けれたもののさっきまでの場所が水浸しである。
注意がそれたインパルスに向かってゴウが早撃ち!
「やらせませんよ!」
「おおっとお!」
「盾を構えよッ!」
1射目をなんとか避け続けざまに水で出来た盾を貼る。
当然水中は抵抗が大きいし技で作り出したものだ。
次々刺さる矢が推進力ガタオチして字面へ突き刺さる。
「くっ!」
「じゃあ私が! ハァッ!」
光の剣がほとばしり地を踏み込んで斬り裂く!
水の盾とぶつかって光が弾けあった!
私は気配をできる限り消して再び壁を斬る。
……おや。さっき強い力で濡れた影響で崩れやすくなっている!
ラッキーだ!
掘って掘って……
「うおおおっ!!」
「殴らせろおおっ!!」
更に深く……もう少し。
剣ゼロエネミー! 鞘から抜いて……
くわえながらこの壁の向こうへ刺すッ!
「水の熱き力、思い知れっ!」
「爆破だッ!」
「「うわあああっ!!」」
うっ!
大爆発が!?
水を圧縮し一瞬で気化させて爆発を起こしたらしい。
オウカとゴウそれにダンは吹き飛ばされ地に転がってしまった。
かわりにグレンくんが前にでて痛そうにしつつも身構えた。
けれど……これで間に合った!
剣ゼロエネミーの先から龍脈の気配を察知する。
"進化"だ!