五百八十四生目 蜜花
砂カエルに案内されついてきた先。
いた蝶嵐対策に『イイヤツ』の正体。
それは……
「あ、先程はどうも……」
「え? あれ?」
「ヨウ! やっぱこのへんにいたか!」
あの崖入口付近に巣穴があって挨拶をかわした魔物。
巣穴から出て全身がはっきりとした水玉斑点のある獣の魔物だった。
ひと回り小さいトランス前らしい背に草を背負うタイプは複数いる。
全身が出てやっとわかったのだが草を背負っているのは尾に花が。
背負ってないタイプはフルーツのようなものが実っている。
"観察"!
[ミミミノ 常にあまいかおりを放っており多くの生物に狙われやすい。しかしピンチになるとさっと背の草で全身を隠せるため、なかなか見つからない。まだ粘液が不完全で保護が弱い]
[ミミミツ 全身の体表にミツが流れておりその元は尾の中。砂漠の環境を防ぎ攻撃を滑らせる以上にこのミツは甘い。しかしミツを味方につけて真昼間から堂々と活躍できるのが特徴]
巣穴から外に出ているせいかぷわ〜んと香るあまいかおり。
彼らからするのね。
「……いいにおいだ!」
「ど、どうも? なぜか知らないけれど、キミたち言葉が……? さっきの烏骨鶏に乗ったヤツもそうだったし……」
「ああ、おんなじです! 実は……」
またミミミツとミミミノにも説明をした。
「なるほど……わかったようなわからないような。ただ敵意はなさそうなのはわかった」
「ええ」
「アア、お前に用があるらしく、連れてきたんだ」
ミミミツたちが私達を見渡しアタマに疑問符を浮かべる。
「え? 何か……御用でした?」
「実は……蝶嵐の突破にご協力いただきたくて」
「蝶嵐の……?」
砂カエルにミミミツとミミミノの視線が集まる。
砂カエルは跳んで砂地に飛び込み地面の中へと消えていった。
「……なるほど。まあご期待に添えるかはわからないけれど……貰えるものさえ貰えれば、蝶嵐を引き付けてあげる」
「本当に!?」
もし蝶嵐を引き付けられるのならそれはとんでもなく嬉しい。
だが本当に大丈夫なのだろうか。
相手は通った後を全て砂以外なくしてしまうのだが。
「その……引き付けられる保証はありますか?」
ゴウが同じ疑問をいだいて口にする。
しかしミミミツは態度を崩さない。
「ミミミノたちならともかく、僕は全く平気。元気なら1時間は余裕で蝶嵐を引き受けれるよ」
「そんなに!?」
「そこまで強そうには見えないがなあ……」
グレンくんが驚きダンが首をかしげた。
しかしミミミツは態度を崩さない。
「生き抜くのは強さだけじゃない、ってことだよ」
空魔法"ファストトラベル"でオアシスに飛んできた!
ミミミツやミミミノも共に身体を寄せ合って飛んだ。
彼らの要求は……
「本当にオアシスに一瞬で来れるだなんて!」
「良かった。ちょうど立ち寄っていたんですよ」
"ファストトラベル"はその性質上1度寄って見た場所にしか行けない。
オアシスをたまたま見つけていて良かったよ。
ゴウの言葉を聞き流しながらミミミノたちがオアシスの水場に突撃する。
「ここ、簡単にこれたら楽だなぁとは前から思っていたんですが、さすがに距離はどうしようもなくて……」
「だよね……カルクックの足でも1時間はかかるから、キミたちが徒歩だと行って帰るだけで日が沈むね……」
オアシスに飛び込み存分に水浴びするミミミノたち。
ミミミツも後に続いてフチで水を飲む。
バシャバシャと水が弾け平和な光景だ……
だから余計に不安になる。
今の私よりも小さいのだし。
蝶嵐はアレほど猛烈だったのだし……
「さて! やることはやらなきゃね」
オアシスから戻った私達は再び谷を歩いていた。
今度はミミミツだけは一緒だ。
ミミミノは巣穴に帰った。
「この先あたりだったね……」
「じゃあ任せてくださいな」
この谷を道なりに曲がった先が蝶たちがいたところだ。
尾の実を揺らしミミミツは堂に入った様子で進んでいった。
……少し時がたち。
「大丈夫かな……音沙汰ないけれど」
「嵐の音がこっちまで来ていないが……一体何が?」
「やっぱ心配だな、様子見てくるか!?」
「おーい!」
話していたら遠くからゆるい呼び声。
もっと緊迫感ある方を想定していただけに驚いた。
「こっちきてみてー!」
呼ばれてカルクックたちとともにそっと覗き見る。
……うわっ!
「蝶嵐!」
「けど端で動いていない……?」
「僕はここだよー! 今のうちにー!」
声の主を探しよーく耳をすますと……
なぜかあのミキサーとも言える蝶嵐の真ん中から聴こえる。
……蝶嵐の下側から顔を出したのは身体中に蝶が止まっているミミミツだった。
す。すごい見た目だ……