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五百七十四生目 裁判

 オーナーは第2王子だった。


「ええ!? 色々と……大丈夫なんですか!?」

「ええ。この時代だからこそ、国は文化を慎重に守らねばならないんですよ」

「あの、帝都の方は……」

「もちろん。そちらの方も、ね」


 ウインクひとつ。

 なるほどもしや美術展というのも表向きの理由と裏向きの理由があるのかな?

 レジスタンスと協力しているっぽいなあ。


「それにしても……あの犯人は私の顔すら知らなかった。もしあれが国の荒れが生み出した歪な犯行だとしたら、なんと嘆かわしい」

「……もしかして、カエリラスの一員ですらない……?」

「おっと。考えが口に……いや、心配しないでくれ。みなが安心して暮らせるように、尽力するのが私たちの仕事だからね」


 そういわれれば確かにおかしい。

 そもそもカエリラスはすでに国の頭を抑えている。

 雑な自爆テロを起こす理由がない。


 カエリラスの思考や行動に感化されたものたちが各地で暴れるとしたら……非常に厄介なことになる。

 きっとそれの表面化が少しずつ現れているのだ。

 かなり困ったものだ……


「それではさようなら!」

「ええ、また」

「また次の美術展のときにー!」


 ただこの場では明るく分かれる。

 私も素性を明かしていないしハックもいるからね。

 騒動はあったが美術展は大満足で帰宅をとげた……





 こんにちは。裁判が終わりました。

 私のではないけれどアノニマルースの大事な裁判だ。

 アノニマルースに裁判があるかどうかという話からすると……これが初であった。


 アノニマルースの司法がついに機能をし始め裁判長も裁判官も検察も弁護士もいる正式なもの。

 中世的なものではなく私の知識にある限り現代的なものをチョイス。

 アノニマルースで裁くのは各国にはあまり法がない……魔物に対するもの。


 ツテを使い皇国からモノホン職のニンゲンたちも借りて参加してきている。

 法知識を交換し初心者しかいないなんちゃって裁判にならないようにととのえた。

 被告席に座るのは……カエリラスメンバーがひとり。


 私と大山脈頂上で戦闘し負けてアノニマルースでとっ捕まえていた黒檀(コクダン)の肉体を持つ細長い人形魔物。

 植物系魔物のエポニードだ。


 彼は弁護士という存在を非常に不思議がっていたものの最終的には任せることにしたらしくあまり裁判中は喋らなかった。

 犯罪については主に犯罪組織カエリラスの1員として任務を遂行した。

 犯罪組織への加担。そしてやったことに関しての裁判である。


 まずは彼が自白したことと実際に私達が味わった事件の全容がまとめられた。

 エポニードは3年ほど前から加入したそうだ。

 下積み……もそこそこ悪行ながら裏方の準備なんかがメインでそこに大きな行動はない。


 ある程度認められるようになってから表で活動。

 最終的に私達と出会う。

 表で活動したさいの事件は帝国の方の事件と照らし合わせ一致した。


 検察側は更に余罪も追求した。

 なにせカエリラスという集団行動のためどこまでが彼の犯行そのものかはわからない。

 エポニードが真実を告げていない可能性もあった。


 弁護側もそこらへんは踏まえて反論。

 裁判全体の傾向としては罪の軽減を求めるもの。

 さすがに現行犯逮捕だったしね。


 証言者や証拠も交え裁判を進めたが彼の多く行ったことは魔物狩り。

 ここで問題になったのはまず皇国にも帝国にも魔物が魔物を殺めてはいけないという法律は当然ない。

 アノニマルースはアノニマルースの面々は保護され互いの殺害は許されていないが範囲外。


 しかし無益な殺生そのものをいましめる法もある。

 業務外の一方的虐殺とかね。

 そこらへんが焦点となった。


 被害者のひとりである大山脈頂上のドラゴンであるホワイトアイは私を通じて裁判を見聞きした。

 ニンゲンのように裁きがあるのは初めてで良くも悪くも被害者の立場に徹したいらしい。

 でなければ『喰ろうてやりたいわ』と言っていたので止めてある。


 そしてかなり長期化。

 裁判が詰まっているわけじゃないから連日行う形で時期としては短くすんだが……

 なんとか判決が下りる。


 アノニマルース初めての裁判は『監視付き執行猶予3年』となった。


 禁固刑を求めた検察側と軽減と執行猶予を求めた弁護側の間とも言える判決だった。

 そして追加で当然だがカエリラスとの再接触を禁じられる。

 監視付きのためアノニマルースから出ることは許されず通常の労働を求められた。


 破れば改めて審判がくだりたいていは重い禁固刑になる。

 一旦各々の溜飲を下げるには十分だったようだ。


 エポニードは翌日には解放され私が迎えにきた。

 この先彼が住み働く環境を案內しなくていけないからだ。

 エポニードは相変わらず折れそうな枝みたいな身体で動かない表情筋のかわりに感情を大きく表していた。

 ……どうして? と。

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