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五十四生目 交渉

 キラキラーと光が舞えば外傷は治まっていく。

 私達も元の姿へと戻った。


「や、やっぱりキミだったんだね……! 驚いた、もう進化を!?」

「オジサンに習っていたので、そのおかげで出来ました!」

「い、いやそんなことはないと思うけれど……へへ」


 久々にオジサンの照れ笑いを見た。


 それからこれまでの経緯をかいつまんで互いに話した。

 オジサンは冬の獲物さがしに苦労していたらこの雄鶏たちに見つかって襲われたらしい。

 こっちは進化が出来るようになって出歩ける許可が降りたのでちょうど会いに来た話をした。


「そ、そうかぁ会いに来てくれたのか。ありがとうね……助かったよ」

「いえ、助けてもらったお礼を返せたようで良かったです」


 実際たまたまとは言え借りを返せたようで良かった。

 彼がいなければ進化方法教えてもらうどころか、生きてなかったかもしれない。

 互いの無事を喜べあえて本当に良かった。


[キラーコッコLv.24 状態:通常]

 生命力ゲージは治っている。

 戦いの傷は多少痛むかもしれないが後は目覚めれば大丈夫。

 状態変化の霊化はあの透明になって鳥籠の中にいた魔法だろうが、死霊操作という変化はなんだったのだろう。

 書かれ方からすると、まるで彼らが操られていたような……




 私たちが久々の再開で雑談に花開かせている間に雄鶏たちが次々に目を覚ましだした。

 オジサンには私のスキルで彼らと話せることは伝えてある。

 なので話を聴こうとしたのだが……


「ひえっ!? た、助けて!!」

「え?」


 私を見るなりそう言った。

 進化前の姿は私は見せてないからバレないと思ったんだが……


「……あ、あれ? 血だらけではあるけれど、違う? さっきのは夢……?」

「えーと、良いかな?」

「わっ! 言葉がわかるのか!?」


 ああ、私達に付着する血が多いからびっくりしたのか……

 鏡がないからわからないけれど、やはりとんでもなくついてるのかな。

 オジサン見る限りはそこまでスプラッタじゃないけれどなあ。


 私が言葉が通じるとわかると雄鶏たちは騒ぎ出した。

 ひゃあうるさい!

 呪い絶叫ほどではないが、単純に声がめちゃくちゃ不快だ!

 しかも普通に喋っているだけなのが分かるから恐ろしい。

 彼らの普通の声が、もう周りには不快音にしか聴こえない種族なのだろう。

 迷惑な種族だな!


「ちょ、ちょっと待って! 何!? どういうこと!?」

「おっと! すまない、確か我々の声は他の種族には不快だったな」「魔除けの声! 敵を遠ざける声!」「我々の美声に誰も近づけない!」


 うるせぇ!

 これじゃあ確かに誰も近づかない。

 彼らにしてみれば天然の武器の1つだなぁ。

 彼ら自身は美声にしか聴こえないのだろう。

 何せ音波攻撃無効の種族だ。

 強いな、色々と。


 落ち着いて貰ってゆっくり1羽ずつ小さい声で話して貰った。

 ニンゲンより声がデカイからこれでやっと少しはマシな音量だ。

 そして意外な話が聞けた。


「我々はニンゲンと出会った!」

「その後からまるで何かアイツの言うことを聴かなきゃならない気がして……」

「おかしい! 我々はコッコクイーン以外の命令は聞かない!」

「そもそもニンゲンの言葉はわからない……だが心に直接響くように命令される」

「そのことをおかしく思わなかった、それがおかしい!」

「魔法だ! 魔法の力だ!!」


 ヒートアップしてきてうるささが戻ってきた!?

 オジサンも頭かかえているが私は聴かなきゃならないから余計つらい。


「うるさいから! 落ち着いて!」

「おっと! どのぐらいの音量だったかな?」

「そのぐらい、そのぐらい……頼むよ」


 それにつけても興味深い話だ。

 誰かが魔法か何かで彼らを操っていたというのか。

 死霊操作という状態がそれかな。

 たぶん、何かユーレイみたいなものをとりつかせて操るのかな。

 彼らが元々霊化みたいな事が出来て親和性が高かったのかもしれない。


 にしても……死霊ってなんだか久々に聞いたような……

 ……あッ! クローバー隊を襲って1頭殺されてしまったという死霊使い!?

 まだわからないが、気になる関連性だ。


「そう、そしてさっき」

「夢のような出来事だった」

「命令で狩りをしていたら」

「仲間を呼ばれてそれが恐ろしい」

「あっと言う間にみんな殺された!!」


 あー、うんそれ目の前にいるねえ。

 一応オジサンに翻訳しつつ話しているけれど渋い顔している。


「悪魔だ、あいつはアクマ!」

「白いアクマ! オレたちの白と全然違う!」

「あんたが治してくれたんだろ? そうじゃなきゃオレらも死んでいた!」

「首狩りアクマは狩った体から血を飲んで笑ってた!」

「あんたがオレたちの血をかぶって癒やしてくれなかったら、オレたちも……!」


 い、言い出しづらくなってきたな……

 そうか、あの時の"私"はそう見えていたのか……

 ドン引きして近づいて来なかったのかな。


「あの白いアクマはどこへ行ったのだ!?」

「我々に命令していたニンゲンも危険だ!!」

「クイーンが危ない!!」

「急いで戻らねば!!」

「ところで後ろの方はどなた!?」

「だから声が大きい!」


 また「おっと!」と言って収まっていく流れが繰り返された。

 にしてもこいつらが襲った時はまだオジサンは進化しておらず、その後に進化して姿を変えたはずなんだけれど。

 まさか狩りの対象を覚えていないとは。

 あれかな、3歩あるけば忘れる鳥頭というやつ。


 騒がしくあったが情報はそこそこ集まった。

 彼らを操っていたものがいて、彼らの群れの長も巻き込まれている。

 そしてその操っていた奴はなんらかの理由でオジサンを襲わせたと。

 あまり穏やかじゃないですね。

 死霊使いと関係があるのならまた意図してホエハリが狙われたのかも。


「……という感じのようです、オジサン。おそらくまだ危険かもしれません」

「そ、それは……困ったな。どうしようか、ちょっと離れたほうが良いのかな?」

「いや、むしろ探って見たほうがいいかもしれませんね」


 はっきりいって向こうが強力で凶悪なタイプのニンゲンならば今回の騒動に手をうたないはずがない。

 ホエハリの考える『ちょっと離れる』は森の中だ。

 森中(ローラー)される可能性も考えねば。

 なにせそのニンゲンは死霊操作で手駒を増やせるらしい。

 自身は椅子に座りながら森全域を探させる事も可能だろう。


「敵が死霊操作という手駒を増やせる手段がある以上、森の中に安全圏はないと考えたほうが良いです」

「う、数の利か……じ、じゃあ彼らについていってこっそり様子を見る……?」

「そうですね! それが良いと思います」


 問題は、どう告げるか。

 何せ今さっき対立していた相手だと後で知ったらこじれるだろうしなー。

 うーん、だったら先にバラしてしまうか?

 それで逃げたらこっそり追いかける。

 説得できそうなら案内してもらう。

 それでいこう。


「コホン、ええとこちらの話し合いが終わったので、そちらの話し合いちょっと止まってもらっていいですか?」

「だから今すぐ戻るべきだって!」

「だが今我々だけ戻っても! ……おっと! はい、どうぞ」


 ただ賑やかなだけなら良いが、彼らの声は張り上げられるほど不快さが増していく。

 イラってするだけならともかくげっそりしていく感覚。

 心の活力を治す魔法ないですかね? ……いや一応あるか。

 火魔法アクティベーション!

 ふう……活性化させる魔法だけれど、いくぶんか心が軽くなった。


「私達も無関係ではなくなってしまったようなので、ぜひ解決の手助けしたいのですが」

「おお! いやしかしいくらなんでもそこまで……」

「あああちょっとまって! ……ええと、言いづらいのですがちょっと言いそびれた事がありまして」


 5羽の雄鶏が一斉にはてなを浮かべている。

 やっと聴いてくれる体制になったらしい。

 さて、進化するだけなら魔法3つぶんの行動力消耗で済むんだよね。


「私達はもうあなたたちと争う気はなく、ただ今回は反撃のためだったのです。それをご考慮いただけたならと」

「はて? 我々は命を助けて貰ったことならいざしらず、争ってはないはず? 言うなれば命の恩!」

「はい、その……最終的には回復した、という事はしっかりと覚えておいたまま、ちょっと見てもらえますか」


 ひどいマッチポンプになってしまう。

 ただ、捕虜にはそれなりの手当はしたよということで何とか穏便に済ませたい。


 そうして私は口周りについた血液を一舐めし"私"の姿を表す。

 メキメキと変化していく私の姿を見て徐々に彼らの表情が劇的な変化を遂げた。

 ですよねー。

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