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五百六十五生目 翼失

 私は荒野の迷宮管理室で自分用にカスタムし直したり管理再開しつつ過去の出来事を思い出す。

 アヅキがカエリラスの小型召喚獣から呪いを受けて燃えた部分の羽根が生えないという厄介なものだった。

 なにからなにまで嫌すぎるうえ強力ときた。


「……解けないわね。想定してはいたけれど、完全にこちらの力を上回っている」

「私の魔法でもダメかぁ……」


 魔法やユウレン式呪術式で解呪を試みるもまったくもってアヅキには効果がなかった。

 生えない呪いは凶悪すぎる。


「まあ、あまり困らないものなのは幸いですが……」

「いや、そうはいかないんじゃないの? アヅキは羽根が特に胴体周りがかなり喪失しているけれど、翼も少なくないダメージできちんと飛行できるのかしら? それに寒暖の影響も受けやすいし、防御能力も格段に落ちる。それと……見た目も、ね」

「……クッ、確かに……このままでは主にお使いするのにあるまじき姿」

「そっち!?」


 ユウレンの言う通りアヅキは格段に能力が落ちていた。

 ただハゲるというだけでも我々獣……さらに鳥類に至っては死活問題。

 アヅキはまだ歩く能力が高いから良かったが実際に危険が多い。


「とにもかくにも、このままだと様々な意味合いで弱ってしまうわね。服とか着たらどうかしら?」

「フク……ああ、主がたまに身につけたりニンゲンが着るものか」

「服かあ……そうだ! 服と言えば!」





 場面は大きく変わる。

 アノニマルースの一角。

 小型魔物区域の中でも工房が立ち並ぶ通り道。


 ここに……私の服を作ってくれた服屋さんがいた。

 本来は小さい魔物たちが九尾博士と共に暮らしている街に住んでいたが私の服のその後が心配すぎて移り住んできたのだ。

 めちゃくちゃ驚いたよ。


 服屋さんはカワウソなのに尾が枝分かれしてこれを器用に操り服を作り上げる。

 やや服への情熱が依存症傾向で寝食忘れやすいが周りのサポートと何よりホンニンがまったく後悔していないので問題は無しとされている。


「うん、今日はメンテナンス?」

「いや、今日は私じゃなくて……」


 すごすごと位置をゆずりアヅキを正面にする。

 アヅキのボロボロの見た目に高身長かつ鋭い目線。

 服屋から被捕食者じみて全身が固まる。


「……頼みたいのは、他でもない。俺の服だ」

「……ヒャア!? わっわかった!」

「……ゴホン。すまない、見たとおり覆うものがないと驚かせてしまうのでな」


 アヅキが服屋の態度を微妙に勘違いしてかがむ。

 これで服屋から見たら相手が凄んできてより鋭いくちばしと目が射抜く勢い。


「お、覆う……目とかくちばしとか……!? わ、わかりましたから助けてローズさん!」

「む?」

「はいはい、アヅキは離れてねー」


 このままでは互いに勘違いして覆面が出来かねないので間に入る。

 改めてココまでの経緯を話した。


「なるほど……羽根が生えない呪い。そういえば、そのようにも見えるね」

「逆にソレ以外どう見えていたんだ……?」

「それで、服は受けてくれるかな? 似合う感じのもので。材料ならある程度調達してくるよ」

「わかった。じゃあそのオーダー引き受けました」


 改めて服屋に依頼をした。

 その後採寸をはかったりアヅキから聞き取りを行いそれを元に何が合うかを考える。

 翌日には設計が出来ており案をどれ採用にするか決めてから材料とお金を渡した。





「……はい。最後の調整終わり。これで完璧」

「おお! 良いね!」

「お褒めいただきありがとうございます、主!」


 アヅキの着込んだ服は山伏と呼ばれる修行僧の服をベースにしたアヅキの黒に似合うものにした。

 カラーリングを全体的にクールな雰囲気でまとめてある。

 調理用に腕もまくりやすい。


 本来翼部分はあまり服飾しないのだが今回はハゲ隠しの意味合いが大きいためそこまで服が通されている。

 ここが完全にニンゲンの山伏とは違うところだ。

 おまけに作ってくれたどこぞの中世医師がつけてそうなマスクという名の頭巾は不評だったので山伏帽子に。


「初めての服の感想は、どう?」

「なんだか……すごく息苦しいように感じます。単なる感触で、実際苦しいわけではないのですが……」

「ああ、よくあることだね。大丈夫、すぐに馴染むさ」





 その言葉はすぐにアヅキは理解した。

 1日たてば違和感は消え2日たてばよく馴染む。

 3日もすれば身体の一部のように着こなした。


 とは言ってもハゲは治らずしばらく時は流れる。

 かわりにアヅキがやったことは……


「さあ、今日こそ働いてもらうぞ!」

「チチチッチイッチイッ!」


 奪った小型召喚石でハゲさせた怨霊を喚び出していた。

 機動力が落ちたから代わりに働いてもらうと息巻いていたが……

 そもそも問題は彼と意思疎通できないことだった。


 アヅキがアレコレ言い怨霊が聞き流すさまをみてユウレンはため息をつく。


「アレってなんで言葉がわからないんだろう……」

「正確には喋ってないからよ。そんな大きな思考力も無くて、生前の鳴き声なんかをリピート再生しているだけ。アヅキとの信頼関係もないから、召喚石を通した意思疎通もあまり出来てないようね」


 大変そうだ……


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