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五百六十四生目 死滅

 荒野の迷宮管理者になってしまった。

 管理部屋にきたらポロニア用……ただし読まれていないものが積んであったので必死に解読。

 中身は簡素簡潔だったもののとにかくページが重いほどに大きくて。


 読み終えた時にはなぜか足の裏が汗でびっしょりになるしまつ。

 読書なのに肉体労働だ。

 とりあえずこの管理部屋の使い方は分かった。


 読めば読むほどにポロニアに償いをさせて自分を赦せるように仕向けたかったのがよくわかる。

 わかるがゆえに伝わらなかったのはあまりにかなしいすれ違いだ。

 私の代で実を結んでも彼らはもういないのだから。


 ここから何日もかけてポロニア用にいじられているのにほとんど触った跡がない管理部屋を私用に変更していく。

 なんでもかんでも大きすぎるんだよ!

 仕方ないけれど!


 ふらりと私がドコかへいってもみんなは幸い放っておいてくれている。

 まあここ数日はみな浮かれて休みと同等だ。

 スキに仕事をしてスキに休んでいるから過干渉しないのだろう。


 なお私の自宅にある机の上には書類が徐々に増えてきている。

 私はトップではないけれどとりあえず色々と目を通してもらった方が良い扱いになっているのが原因。

 仕事はやってもやってなくてもなんなら楽しむ計画も規模が大きくなるとどうしても複数で考えたいし複数のお墨付きがほしいわけだね。


 大きなため息をつきながら荒野の迷宮管理部屋をカスタマイズしつづける。

 それでも気持ちはアノニマルースのほうにあるとどうしてもアレコレと思い出す。

 そう……アヅキのトランスについてなんかも。





 あれは私達が大山脈から降りてアノニマルースへワープした日。

 私達がついた時にはすでにその事件は発生し半ば解決していた。

 けれども聞かされた時は驚いたものだ。


「アヅキが燃やされた!?」


 慌てて病棟へ行くも治療そのものは終わっていて元気なアヅキの姿。

 些事だからわざわざ報告するなとアヅキが止めていたらしい。

 だが……その元気なはずのアヅキの姿は……


「……どうかしましたか? 主」

「どうもしたもこうも……羽根が全身アチコチハゲたままじゃない!」


 そう。やけどの跡は全て脱毛ならぬ脱羽毛していたのだ。


 事件は簡単。

 ふらりと現れたヤツは魔王を復活させんとする秘密結社のカエリラスの魔物。

 しかもそいつ自体は特色のない暗殺者で有名になっていたアノニマルースに侵入しようとしたところボコられる。


 ……が。

 そいつが放った最後っぺがまずかった。

 小さい召喚石で喚び出された魔物は怨霊の籠もった炎という風貌の召喚獣。


 私達が普段戦う神の名を冠するものよりはるか格下ながら炎をめちゃくちゃに撒き散らすので兵たちが恐れた。

 そこで炎の扱いには慣れているとしてアヅキが登場。

 燃え盛る相手に渾身の攻撃を叩き込み退治した……のはいいのだが。


 暗殺者はやはり普段どおり一瞬にしてワープする道具で逃げ失せ召喚石だけは何とか奪取。

 召喚獣が消えた後に残ったアヅキは全身いたるところをほどよく焼かれしまっていた。

 ウェルダンにならずミディアムで済んだのは不幸中の幸いだが……


 何故か燃えた箇所の羽根が生えなくなった。


 そこで原因究明のために今病棟にいるムネを聞いた。

 そんなことを話しているバーン! とドアからやってきたのはユウレン。


「原因がわかった!」


 ユウレンは死霊術師のニンゲン。

 焼いた相手が怨霊のような魔物に見えたという点で別路線で探っていたらしい。


「医務関係ではなぜ生えてこないのかさっぱりだったんですが……わかったんですか!」

「ええ、コル先生。彼はズバリ……」


 ユウレンのタメに周囲から注目が集まる。

 特にコル先生は医科学や医魔法から探ってダメだったから期待がかかる。


「ハゲの呪いよ!!」


「「……ハゲ!?」」

「正確には毛根を死滅させる呪怨よ」

「「なっなんだってー!?」」


 おっそろしい単語が部屋内を揺らした。

 ユウレンがビシッと指をつきつけ放つ言葉はあまりにもショッキング。

 というか……


「何その毛根を死滅させる呪いって……ものすごく限定的な上に嫌がらせに特化している……」

「まあ、暗殺者もまさか呪炎の怨霊がこんなものを使うとは思わなかったでしょうね。戦力として期待していたものね。ただ、呪いとしては厄介よ。呪いは限定的だったり制約を多く用い、捧げるものがしっかりして、そして想いが強ければそれだけ効果は乗算するのよ。漠然にみんなしねーってタイプより遥かに厄介で、そして本人がまさに毛髪により苦しみ死んだ怨霊ならば、あまりにも純粋にそのパワーが高まっているでしょうね」

「や、厄介すぎる……」


 アヅキの1言に尽きる。

 なんつーやつを連れてきてくれたのだカエリラス。

 絶対に赦されない!


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