五百五十九生目 増幅
虫の息で3重結界を張り溜めて大技準備出来るのはポロニアならではだが……そこから覆してきそうなのも彼だ。
アインスが飛んでポロニア上空を位置取る。
結界を……突き破るよ!
(いけいけー!)
(やるぞ!!)
ポロニアが私を……私を通してみている自分を拒絶するのなら。
私が届けなくてはならない。
ポロニア自身を。
もっとも貫通力のある一撃必殺。
普段は殆どやらないが今はやるその時。
魔力を5つ混合させビームとして放つ!
"進化"として適応するさいに使う混合魔力。
それを"進化"ではなく攻撃に使うものだ。
本来は"進化"の実験をしていたさいの副産物で耐えきれる力以上を放つため1撃で疲労し反動で動けなくなる。
だから今が使う時!
また"進化"したときのように魔法を唱える。
ただし精霊がいるから同時に4つだ!
地魔法! 聖魔法! 空魔法! 土魔法!
詠唱し……中断!
精霊たちが唱えた分は私に魔力を還元!
さらにもうひとつ! 火魔法!
唱えて……キャンセルし浮いた魔力をため込む。
ポロニアとその分身の方もヤケに高まったエネルギーをジンジンと感じる。
魔力混合は難しい。
だけれどもまた私の中に残っている龍脈の力を借りる。
龍脈のパワーを意識して探り当て私の中の魔力へと誘導する。
そして……全てを溶かし1つの膨大すぎる魔力として残した。
いつ暴発するかわからない魔力。
だけれども直感でこれを射出するには私ではパワー不足だと感じた。
前にエネルギーを放つということは同時に後ろに吹き飛ばないように耐えるということだ。
今なら空中加速する必要があるが……足りない。
それどころか単にうしろへ足場を作ろうとしてもおそらく私が耐えられない。
どうすれば……と考えた時に妙案が閃く。
簡単なことだが……やったことはない。
だがためしてみる価値はある!
アインス! 姿勢を逆さに! もちろんポロニアの方を頭に!
(あいあいさー)
私では絶対できない空中制御で簡単に天地がひっくり返る。
今は感情はあとだ。
この溢れそうな魔力……制御の助けを頼むよドライ!
(少しズレただけで大きくブレて外れるだろうが……"私"とツバイそれにアインスならできるさ!)
私こと脳内性格ツバイ。この3つの心なら出来る。
魔力を放つのは2方向! 片方をかなりの割合にしつつもう片方にもしっかりと!
同時にアインスが空中加速してバランスを取る。
全力を出し切るにそれを……一切狂いなく同時にやるしかない!
もう魔力の保持も限界でポロニアと分身は光が輝いている。
何か強力なものが発射寸前。
力強いパンチはコシの動きと足の踏ん張りで決まるとよく言われるが……それと似たような話だ。
私が吹き飛びながら撃つよりもこうした方が遥かに強力で高能力だと直感で確信する。
……決める!
「やあああああああぁ!!」「ガアアアアアアアアアァ!!」
吠える。それと同時に私とポロニアたちどちらからもビームが放たれる!
アインスが思いっきり加速しさらに足方向からは拡散して魔力ビームを放つ。
これを足場に腕先から思いっきり混合されてビームが放たれ……
双方衝突!!
その瞬間すら衝撃でズレてしまいそうになるがアインスとドライが全力で修正。
私はそれに構わず放ち続ける!
気を抜いたら押しきられる!
「うぐぐッ……!」
このごに及んでこんなパワーを!?
想いの強さだけで強さが変わるというレベルではない。
やはり根本的に相手は強い……!
重なり合ったビームは光の火花を散らす。
あまりの強さに徐々に押し込まれている!?
剣ゼロエネミー! 頼む! 追撃を!
魔法で念力のように操っていた剣ゼロエネミーが自然に私のビームの中に入る。
剣ゼロエネミーがこうしてほしいと考えているかのように伝わってくる。
そのまま衝突している先頭まで動き剣ゼロエネミーも衝突!
やっとこれで押されていた部分が拮抗しだしたが……まだ足りない!
このままでは押しきれず私が動けないところに追撃をもらう未来しか見えない。
あと頼れるものは……
そう考えがよぎった時にふと周囲に強大な気配を感じる。
目を横にむけたら顔がぼかされシルエットとして曖昧な姿の蒼い竜が光として現れていた。
下半身すら無く……本物の蒼竜よりも遥かに小さくなっているが私より遥かに大きい。
前足をそっと私のビームに重ね合わせる。
姿が散ると同時にビームが根本から膨らんだ。
これは……蒼竜の加護というやつ!?
いけない! バランスが崩れる!
蒼竜はこういうときすらいつもどおりか!