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その能力は無敵! ~けもっ娘異世界転生サバイバル~  作者: チル
生き残るのはどちらかだけ
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五百五十六生目 管理

「ハァ……ッハァ……! どうやら、やればできるようだな」


 "観察"すると疲れている方が本体。

 生命力が半分になっている。

 対してもう片方が純粋なポロニアの分身。


 生命がちょうどわかれたように半分ながら行動力は5割ほどあるしなんなら疲労していない。

 さ。最悪だ!


「まさか……今新しく能力開花した……?」

「年寄りでも……追い詰められた時は何をしでかすか、わからんぞ?」


 ゾクリとした。

 どちらも漂わす強さの気配は同じ。

 ここまでみんなが頑張ってくれてもこんな事が起きてしまうだなんて……!


 同時に湧き上がるのは高揚感。

 これからのために恐怖を打ち消そうとする生理反応。

 ……絶対に生き延びる!


 先に動いたのはどちらか。

 一瞬で加速して互いにすれ違うように切り裂く!

 剣ゼロエネミーも魔法で念力のように操っているし背中のイバラと尾も"猛毒の花"含め全開態勢。


 それでも互いに切り裂いた攻撃は跳ねあって弾かれる。

 互いに着地した瞬間には次の飛翔。

 2と2の影が何度も何度も交差する!


「……ずいぶんと己の腕が弱ったのを感じる」

「それに、必死で対抗しているのに! イヤミだね!」

「フッ……そうではない。健常な分身もいる。それなのにワシは攻めきれないでいる」


 互いに打ち合わせたかのように距離をとったら魔法が互いに放つ!

 炎が水と弾け氷が雷と砕け土が風とぶつかり破砕する!


「改めて、そして中身を変えて言おう。いい仲間をもったな」

「……うん、みんな最高の仲間たちだよ。だからこそ、それを壊し傷つけるポロニアたちを、止めたかった!」


 前は皮肉めいた言葉だったが今は言葉通りと褒め言葉として用いたようだ。

 みんなが褒められるのはうれしくもあり……それを攻撃するポロニアに対してはやはり怒りを多少持つ。

 私達を喰おうとしているわけでも無いのが不思議。


 近接に持ち込み互いに削り合うように殴り合う。

 猛毒を持つ尾の一撃がカスれば大勢は決するが向こうも赤いトゲは意識的に避け続ける。

 剣ゼロエネミーを節ごとにバラす。また網のように細く複数の頑強な魔力線をつないだ。


 それを攻撃と防御どちらにも使う。

 線を武技でも爪で殴れば魔力が弾く。

 節は刃だから飛ばせば自然にポロニアの身体は傷つく。


 それでもポロニアはこちらに弾のような攻撃を放ったり分身と即興のコンビネーションで攻めてくる。

 片方を網で止めれてもその間に私の背中が鎧ごと引き裂かれた。

 痛み。反射的に回復魔法。針の変化した鎧を増殖し押し付け致命打を回避!


「くっ……くっくっくっ……昔を思い出す。あのころわしは……私は、ただ善きことをしようとしていた」


 互いについたり離れたりを繰り返しながらスタミナと息をうまくつないで互いにラッシュしていく。

 こちらが斬られても鎧の上を滑らせこっちがイバラや剣で殴っても丁寧にガードされ毛皮の上を滑る。

 どれだけ毛を斬ってもしかたない……


我武者羅(ガムシャラ)に、ただ自身の正義に従い、それに味方をした。楽しい時期ではあったが……それは何も見ていなかったからだ」


 ポロニアが何か語りだした。

 それでも互いの刃は止まらない。

 ポロニアの過去……荒野の迷宮で多くを救いそしてある時忽然と姿をくらました話か。


「ただ救い、そして崇められたかった。いや……もっと単純に、認められたかった。必要とされている、みなを救えるものになりたかった」

「それなら、なぜ……」


 私達を傷つけるのか。そして過去なぜ途中から英雄的活動をやめ急にいなくなったのか。

 問のかわりに爪と鎧を纏ったイバラを交え押しあう。


 そもそも私は今フルで補助魔法がかかっている。

 相手がいくら2体に増えてもこちらは攻撃は炎をまとい力は増し体力が底上げされ防御も何重に強化されている。

 1体の弱った相手なら押し切れるところをひたすら2体目が妨害するのだ。


「ある時、迷宮の主に招かれた。今はいないその姿は今でもしっかりと覚えている」

「……! 迷宮の、前の管理者!」


 互いに攻勢は増していくのに反して声は落ち着き沈んでいく。

 ポロニアが管理者になる前の……その話だ。


「見せられたよ。私のした事を淡々と。殺した敵は子どもがいて、守ったやつは別の者を(しいた)げだし、私が片方に少し力をいれれば、保っていた生態系の均衡が破壊された。それの意味を理解できるまで何度も親切丁寧に……な。この力の膨大さを理解出来ていないゆえに、他者がそのツケを払った。自らにかかる不利益は簡単に払えたが、払った先の弱者はその身代わりとなって潰えた」

「数が増えすぎた種がエサを求め他から奪い尽くしそれでも飢餓に苦しみ(たお)れだした。前に殺されそうになったところを助けた者たちの姿だ。食事に苦しみ親が斃れそれを()んだ後に斃れる子。前に追い払った敵のはずだった。全てはそのままでも起こったかもはしれぬ。しかし……言い訳としては虚しすぎる」

「だが彼らよりは遥かに長い時を生き、そして絶対的な力を持つ私は、自分が行ったその後を考え知る義務があった…………荒野の迷宮は生態系が崩壊しかけていた」


 剣ゼロエネミーがポロニア本体の顔を斬り付ける!

 燃える剣は深くは入らなかった……だが毛を一部焼き切った!

 過去を見据える左目がずいぶんとくすんだ色をしていた。

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