五百五十五生目 時間
グレンくんたちが罠や環境そして装置を使って徐々にポロニアを追い詰めている。
私も各地に回復! 補助! 攻撃! と戦術塔による支援。
分身たちとの戦いは……実に優勢だ。
今回の戦い。ジャグナーは壁の本来の力である籠もって持久戦を仕掛けるという面を放棄した。
それには複数理由があるがやはりポロニアの問題がある。
ポロニアがいる限り逆転してしまうことがあるわけなのだから。
しかも楽に排除することはムリ。
確実に最後まで1番の障害となりうる。
ならばどうするか。
それが速攻である。
相手の虚を突き本来の役割すら凌駕して正面戦闘に見せかけた奇襲がメイン。
こちらの想定を上回る敵の猛襲があったがそれでも随時ジャグナーが更新して行き適応。
私もフルで使われさすがに疲労が溜まった……
戦術塔を使いまくったからね。
だが戦いはまだ終わらない。
『ようし! 向こうは壊滅気味だ!』
ダカシの疲れながらも喜びの声が上がる。
どうやら私から見て背後側は敵を目視で5割ほど削ったらしい。
『大型殲滅を確認! 厄介な中型もずいぶんいなくなった! よくやった!』
「よし!」
大型は目だつからすぐに残り匹数がわかるが各地の報告でいなくなったことがわかった。
さらに飛行型の中型や魔法型の中型もかなり数を減らしている。
魔法型は突貫してきて大型魔法を放って消えるという性質上途中からの方針変更が効いて良かった。
真っ先に見つけて殲滅というのは困難で先に魔法を放たれたら大打撃必須。
ならば無駄打ちさせてしまおうという姿勢だ。
探しにいかず誘導し影を生み出して囮にできたりして回避や防御が得意な者たちのみがことに当たる。
誰も喰らわずに勝手に盛大に魔法を撒き散らしさせて行動力切れで倒すわけだ。
それに外壁の敷地内だがまだ未使用のところは多い。
穴は開けるがそれ以上の損害がなければ万々歳だった。
もちろんこちらも魔物や物そして人の損害は小さくない。
だが死者はいない。死者はいないんだ。
戦術塔と事前に『ネオハリー』に"進化"出来たことがとても大きい。
あらゆる歯車の用意を怠らずきちんとハマって回りだすまで必死にみんなでやりきった成果だ!
だから私は……最後の仕上げをしなくてはならない。
『ローズ。ポロニアが移動した。5分後に例の場所へ移動する』
『わかった』
『……ここだけは、お前に完全に頼り切る。頼んだぞ』
短くジャグナーに答えて戦術塔から立ち上がる。
ここからは私の戦いだ。
みんなから受け継いだバトンを受け取り今空へ飛んだ。
「ぐっ、ぐうう……! ここはどこだ……?」
ポロニアが目の前に現れた。
霊体化してユウレンとウロスさんに追い回され抜け出したと思ったらまた別の場所。
ポロニアとしては驚きだろう。
「ここは……私とポロニアが出会った場所」
「そうか……あの小さな存在がここまでやるようになるとはな」
ポロニアと初めて出会った洞穴前に私とポロニアはいた。
ここならアノニマルースは巻き込まれない。
さて。
「ねえ、実は戦争の方はほとんど終わってるんだよ」
「何……? まだ戦いが始まってからそんなにたっていないだろう……?」
ポロニアが毛で顔が見えないが集中するそぶりを見せる。
すぐに表情がわからなくともハッとした。
「……何!? まだ私が動き出した時から『時間は数分程度しかたっていない』ではないか!」
「実はね……すごく時間が……それこそ2、3時間はたっていたんだよ」
前に分身たちをチェックしたのはポロニアが動き出した時らしい。
驚愕がみてとれた。
「驚いたよね。霊的世界で流れる時間すらも変えてしまう力だなんて」
「……! あの化物たち、時間感覚すら狂わせていたのか……」
次に出る場所を狂わせ時間感覚を壊す。
直接的なダメージこそ薄いがウロスとユウレンがやりとげたのはそれだった。
数分霊的世界でやりとりしたつもりが1時間2時間と経過していたのだ。
長時間拘束。
それこそがユウレンとウロスさんの役割だった。
だからこそ戦争には勝てた。
「あとは……ポロニア本体。キミだけだ!」
"観察"すると生命力が3割そして行動力が2割ほど。
ココまで削ってくれるとは!
だが自動回復するらしくどちらのゲージもじわじわ治りつつある。
だがどちらも身構える。
ここから無駄にしてたまるか!
ポロニアはずいぶん疲弊して生命力も少ないから押し切れる……はずだ!
「……ならば! こちらも限界を超えよう!」
なっなんだ!? 限界を超える!?
凄まじくポロニアにエネルギーがたまり……輝く!
一瞬だけあたりが光で白になる。
そして……いつの間にかポロニアが2体になっていた。
大型のポロニアじゃない。
ポロニアそのものだ。
なっ! なんだって!? 嘘だろう!?