五百五十三生目 伏兵
ポロニア分身体を追い返す作戦中!
門を開いたあたりでこちらは降伏宣言するのではもちろんない。
大量の蜘蛛や蛇それに骸骨とゴーレムたちがこれでもかと罠を仕掛け待ち伏せていた!
『敵、決マッタ道シカ通レズ。的撃チト同ジナリ』
『アッハッハッ! 俺たちが最初からいるのに気付いてなかったらしいな!』
『もはやここまでお膳立てされて、死ぬ者もおらんだろう』
念話のたぐいのスキルでやり取りする会話が聴こえる。
翼のあるかしこい骸骨に赤蛇そして黒蜘蛛。
赤蛇と黒蜘蛛は前回の戦いの時に参戦しようとして最終的には間に合わなかったし翼骸骨に至ってはまだいなかった。
実は彼らは事前にアノニマルース内に潜み門の裏や壁の裏ちょっとした茂みに屋根のある場所と潜みに潜みまくってもらっていた。
翼骸骨たちは臨機応変さを求められる戦場でも単純な指示のみしか動けない骸骨たちを使いこなすためにスタンバイしていた。
確かに軍は4000程度である。
だが蛇と蜘蛛は知っての通り1万と1万。
もちろん義勇軍なので借りているのはそれぞれ3割ほどなのだが。
さらに骸骨たちはそれはもう山程いる。
翼骸骨は50体に1体程度だが十分回っているようだ。
彼らは物の運搬や補助それに使用者のレベルに依存しない兵器の使用など手の足りないところなら全てに行き渡っている。
特に看護は絵面がすごい。
肉付きの良い兵士たちに必死に包帯を運んでくるのが骨だけの彼らである。
重傷者はどっちだ。
さらに味方は彼らだけではない。
門の近くで仕留め残った中型に向かって大剣がきらめく。
一斉に何本も武器を突きつけられてついには光となって散った。
『こっちは全然平気!』
『冒険者の意地を見せてやる!』
『魔物狩りの本職なんだ、全力でココを守ってやる!』
ニンゲンの冒険者たちだ。
武器を掲げ漏れたやつを倒し大型が襲えば武技により作られた全体を守る盾の光が生まれ耐える。
彼らは彼らの過ごしやすい場所を守るために戦ってくれている。
さらに!
『ハハハ! 誰も殺さなくて良い戦いだなんて、これほど楽な戦いがあるかい!』
『オラァ! ザコしかいないぞ! 本当に他のところは大丈夫か!?』
『飛んでいるやつはだいたい落としました』
オウカの光剣がここからでもしっかり見えるほどに光がほとばしり斬り払うと分身体が散っていく。
ダンが拳で確実に仕留めていき空中から来ようとする相手はことごとくゴウが矢で撃ち落としていた。
良く私とも組み勇者グレンくんを守っていた面々だ。
本当は彼らは巻き込まないつもりだったのだが『私達にも恩を売らせて欲しい』とまた堂々と言われ断れなくなった。
もうちょっとこう……言い方が……
まあオウカがそういう性格なのはわかりきっているので何も言わなかったが。
では。
勇者グレンはどうしているかというと。
喧騒から離れたこの場所。
薄暗くそれでいて落ち着く室内。
"以心伝心"でつないだ視界はそこを映し出していた。
「……そろそろかな」
私の"以心伝心"を受け取り彼はつぶやく。
視線が前へと向いた。
念話の方もやっておこう。
『うん。連絡受けたけれどもうすぐだよ』
「わかりま……わかったよ」
『うん! 別に敬語は大丈夫』
彼は立ち上がる。視線が前あった小さいときより上がっている。
勇者特有のニンゲン種特有の力でレベル上昇とともに身体も大幅に成長する。
その視線の高さは会っていないわずかな間くぐり抜けた試練の数を示していた。
手早く武装を身にまとう。
手慣れた手付きで手にするものが……やたら多い。
最後はただのナイフをわざわざ鞘から抜いて刃を見てから鞘にしまう。
それを手早く胸に大事そうにしまった。
あれは……私達が最初に彼に送ったものだ。
しっかりとしたそして闘い慣れした者の足取りで歩き目の前の扉を開けた。
外の光が目に刺す。
この場所は天井がなく開けた区域。
それなのに壁はある。
普段は室内練習場として使っている場所。
それなのに壁の上には大量の兵器が用意されていた。
地面にもふれればタダでは済まないだろう罠たち。
それだけあるのにただ武器を身構えるのはひとりのみ。
彼……勇者グレンくんだ。
やがて景色が歪んだかと思うとポロニアが姿をあらわす。
だが威風堂々とは真逆で肩で息をしているような状態。
かなり霊的世界で精神的ダメージを中心に傷を負ったらしい。
「……ぐう、やつらめ……! ……ここはドコだ?」
「放てー!」
上階にいる弟のハックが叫ぶと設置してあった兵器たちをゴーレムやら魔物やら骸骨たちが一斉に起動する。
まず飛散したのは各地のバリスタか、離れた紐付きの大きい矢だ。
ほとんど抵抗できず驚いている間にポロニアの肉体に刺さり引っかかった。




