五百四十八生目 大岩
霊獣ポロニア軍と戦争中。
しかし向こうは魔法を使う新型が捨て身の爆殺みたいなことをしてきて苦戦をしいられていた。
『まずいな。始まったばかりだが新型鎧タイプが20名ほど離脱した。そして魔法の爆心地から逃れた範囲で被弾したやつは多数。そっちに回復範囲を指定する!』
『新型鎧でよかった。被害が最小限に抑えられている……』
前の鎧兵だったら爆心地の魔物は黒炭に。
遠い相手も戦闘続行不能になっていたかもしれない。
かなりヤバイ新型だ……気を引き締めないと。
[ヒーリングラージ 広範囲の味方生命力を強く癒やす]
いわゆる強化"ヒーリング"だ。
普段は"ヒーリング"で代用するが今はこちらのほうが良い。
普段運用するには速度がないんだよね。
次々上がってくる被害報告を気にしつつ私は集団の方を相手にしなくては。
今3つ"ラージヒーリング"詠唱中だから……もうひとつで攻撃魔法だ!
『魔法のやつに対しては散開させつつ当たらせている。集団の方を頼めるか?』
『うん、もうそろそろ行ける!』
土魔法だ!
[ロックショット 岩を山なりに撃ち出す]
"ストーンショット"の強化版で単純ながらわかりやすい強さだ。
それをどんどんと魔力を高めて……と!
最高にパワーが高まった!
気分が上がりすぎて立ち上がらないように気をつけてと。
腕を大きく振り発動!
戦術塔が輝き上の方に土魔力が集まっていく。
高めた魔力を全部搾り取られてやっと空にソレが形成された。
いきなり曇った? と思うほどに巨大な影を生み出す大岩。
そこらへんの建築物がいくつも合わさったほどのサイズ。
「いけえ!」
さらに腕を振り下ろして発射!
背中方面に派手な音も無くサイズ感のせいかゆっくりと飛んでいくように見える。
しかしあっというまに外壁へ到達した時点でマッハ出ている疑いがある。
回転し山なりの軌道で落下していく。
場所はピンポイントに門から少し離れた所まで来ているポロニア分身たちが身を寄せ合っている所に落ちる。
すでに味方は門近くまで退避済み。
大きくわかれようとした分身体たちだが罠もあったりして間に合わず先頭のほうは容赦なく潰し光を撒いて消える。
そのまま跳ねるように奥へと転がる!
一回まわるごとに何十ものポロニア分身が消えていく……
「フゥー、フゥーッ。うまくいった」
『お、オイ!? 何だ今の地獄みたいなのは!? むしろこっちもこわいぞ!』
『大丈夫! ちゃんと退避したところにしか撃たないから!』
ジャグナーから苦情が来たがこれぐらいやらないと勝てないので……
結局大岩が勝手に止まるころにはポロニア分身集団は瓦解。
残党を壁で向かい撃つこととなった。
壁には多数のゴーレム系や弓矢や銃を持つ鳥型魔物もいる。
壁や上空それに壁上で待ち構える。
……今放った!
一斉に矢やら石やらが飛散していく。
スリングショットで放つ石は投擲スキルさえあれば強烈な1撃となる。
矢と合わせて飛距離が長いのも特徴。
地上に気を取られていたものたちが次々被弾していくのが見える。
1撃では消滅はムリでも雨のように撃ち込まれてはひとたまりもないだろう。
だがまだ飛行型が無事だ。
事前に察知して回避が間に合った飛行型が空を駆ける。
壁上のゴーレムに近づく。
中型ゴーレムが設置してあったクランクハンドルを難なく回し始める。
飛行型早い! 一気に空を蹴り接近!
だが歯牙はゴーレムには届かなかった。
目の前の空中で結界にぶつかって弾かれていた。
弾かれた部分から光の波が広がる。
壁付近に対侵入結界があるのが今可視化された。
やがてまた壁の色が薄れだし……
唐突にゴーレムの近くに置いてあった砲塔が火を噴いた!
クランクをまわすことで砲塔の銃身が回転して次々と弾丸を発射する!
大型の弾丸が飛行型にどんどん命中して消し飛ばした!
貴重なガトリング砲塔と弾薬である。
ゴーレムは一旦またクランクハンドルから手を離す。
弾薬排出が止まり近くにいた魔物が補充と点検に入る。
きっちり向きを合わせ正確な射撃を行い弾丸数も抑えている。
小型はともかく大型はどうしてもね。
さらに飛来してくるやつは砲塔を避けて移動しだした。
だがそこはそこで大型ゴーレムがバリスタ……大型の矢みたいなのを構えている。
魔物たちの指示に従い一斉斉射!
近距離で大型矢に撃ち貫かれてはさすがにひとたまりもない。
敵飛行分身は空をおさえられるせいで厄介極まりないことも多いが壁の利点で抑えられている。
飛行分身の数を減らした区域から味方飛行部隊が空へ出て地上を狙い撃つ。
小型では飛行隊に届かないが魔法中型は危険なので優先撃破しているようだ。
やはり残る問題のひとつは……大型だ。




