五百四十七生目 中型
戦術塔の機能を使って広範囲に電気魔法"スパークエンチャント"をしたらなぜかジャグナーから慌てた念話が飛んできた。
戦術塔を中継点として現場からの念話を直接拾う。
『おお! きた! ……ってええ! 俺のツノが倍の長さに、雷撃が! こ、これは?』
『牙から電気が溢れてくる……く、口閉じて大丈夫かな』
『おおお!? リーチも太さも前とまったく違う! うかつに武装を振らないよう、通達します!』
わお。
想定以上に強力になってしまった。
試験運転時にケンハリマでやったら薄まってしまって効果をしっかり出すのを苦労したのに……
でもここまで強力になってくれるなら良いかぎり。
私がガス欠しなきゃ良いだけであって。
『各自に改めて、電気の力は自身には効かないけれど、周囲には当たるから注意するように警告しておいて。あと基本的には訓練時通りで大丈夫』
『お、おう。わかったぜ』
その後も補助魔法をバンバンかけていく。
火力や防御力それに体力。
何重にもかけてそのたびにあちこちから大丈夫なのかと声がかかる。
大丈夫だから……多分。
今回は早めに対策できたから補助魔法をひととおり掛けられてて良かった。
だが……
『来た! 12時方向に唐突に巨大な敵影! ポロニア本体だ!』
『ポロニアが動くまで私は待機して、ここで補助と回復それに攻撃をすれば良いんだね?』
『ああ! 作戦成否に大きく関わるから焦るなよ!』
私が飛んで行きたいがそれは向こうにスキをさらすことになる。
戦術塔チャージもまだだし戦闘も始まっていない。
これからこっちが崩れ出す可能性も高いからここで私がやるべきことに集中だ。
――ポロニアの咆哮!
戦いが始まったか!
"鷹目"超ズームをすると徐々に互いに距離を詰めているのが見える。
こちらはあまり前に出ず壁前後の防御力を信じる。
相手は話に聞いていた通り新型ポロニア分身がいるや。
飛行型は脚がぼやけて存在しないかわりに空を飛ぶ。やや大きめ。
見た目的には幽霊だまさに。
そして地上に展開する小型兵に混じって中型サイズの毛だらけのポロニア分身。
いや元々毛だらけだが……長すぎて引きずっているのはこいつらくらい。
"観察"したところどうやら魔法が得意らしい。
遠隔で攻められると厄介だ。
『敵の地上中型は魔法特化みたいだ。大型のパワーや小型の物量も気になるけれど、こっちはどう来るかわからない分留意して』
『伝えておく……おっ! そろそろおっ始めたようだぜ!』
前と同じ位置にあるブービートラップは回避して彼らは距離をつめる。
ビックデータ学習みたいな事が出来るからいやらしいな!
そんなにこっちは頻繁に罠の位置を変えるわけにもいかないのだ。
労力と兵たちへの周知のためにね。
でも……
小型が避けた先で爆発!
まあ全部が全部前と同じ位置に魔法地雷があるわけじゃあない。
向こうもそれは承知だろう。
こちらは爆発から距離を取り魔法連発だ!
今回は周囲全方位から一斉襲撃である。
戦力の随時投入は愚策といわんばかりのポロニア分身体の波。波。波!
報告で上がってくる数が1万匹行ったあたりから頭がぐらついてきた。
こちらは最新鋭兵装の魔物はまだ1000しか用意できていない。
ただ壁の防衛ラインは昔に比べかなりしっかりしている。
閉じた門であれただの天然崖に見えるところでさえ仕掛けと待機する魔物たちがたくさん。
それを順次お披露目しよう。
『無理せず後退しつつ、危険地帯は知らせて!』
『む、なんだ!? ……中継する!』
『本部、本部! 敵の塊が接近中! 支給支援を頼む!』
偵察による最新情報が更新される。
前回弱かった背後の門方面に大量の敵がわいて出ている!?
他は互いに距離を取りながら走ってきていたのに新しく出てきた敵だけ数が密集しすぎて脳内マップの見た目が赤点で真っ赤になっている。
もしかして200くらい門前に一気になだれ込もうと密集している?
しかも使い捨て盾の小型に魔法の中型それに飛行型もいるし大型も2体。
門前まで突破されると本体が来てカチコミかけそうな勢いで危険。
『ほ、報告!』
えっ!?
今緊急退避ワープ魔法が発動した!?
どこだ!?
『敵魔法兵、巨大な力で1撃を放ち隊長たちを吹き飛ばしました……! 今は私が代理です! 1体1発で使い果たして消えていく……なんて戦い方だ』
くっ! 相手は分身なのを良いことに小型を捨て身タックルさせているのはわかっていた。
だけれども魔法型はまさかの全力1撃魔法。
ポロニア自体が大きな魔法を使えるのはわかっていたものの。
うわっ! 確かに3時のほうかはここからもハッキリわかる程に閃光が走った!
また緊急ワープが発動している……
ぐうう! やられている!