五百四十六生目 戦術
霊獣ポロニアとの第二次戦争。
そしておそらくは……これがポロニアと最後になる。
座椅子に座り込み『装置』に行動力を吸わすと建物全体が光を帯びていく。
さらに地下から発光ラインが浮かび上がる。
あれは私の力ではなく『装置』が組み上げた龍脈だ。
龍脈が巡ることで各地の装置がそこからわずかずつ魔力をもらうことで莫大な力を得れる。
血と赤血球みたいなものだ。
わりと場所によってタービン押してもらったりして発電ならぬ発魔力していたりもするが。
おかげでこのような巨大な『装置』を動かせる。
『おう! 戦術塔の正常可動をチェックしたぞ! これからざっくりとそいつの機能をチェックしていく。何か疑問があったら聞いてくれ!』
『分かった!』
ジャグナーからの"以心伝心"だ。
この『装置』……建物全体を『戦術塔』と呼んでいる。
集団戦においてかなりの大きな効果がある。
『まず防具をつけた全員に対して、致命傷が発生した際に、自動でお前さんの魔法が発動。緊急ワープで軍病棟に送られる』
『うん。私は主にここに座っていることが大事なんだよね』
魔法を防具に組み込んでもしもの時の対策をしたい……とは前々から思っていた。
死亡リスク回避と致命傷を下手に恐れて前に出られない事の回避だ。
しかし量産品にソレはムリ……となったところで『戦術塔』が役割を果たすことになった。
『戦術塔』は元々人間界にもあり軍全体に強化をかけるられるものだ。
王や団長みたいなのがここに座って指揮をとばす。
前世で言う司令塔だね。
『ああ。その代りお前さんの力が戦術塔にチャージ完了すれば、再び残数切れ起こすまでは離れて問題ない』
『魔法も強化されるんだよね?』
『施設がバックアップするからな。必要な情報はこちらから送る。超広範囲補助や回復、遠隔魔法攻撃も、時間はかかるが出来るぞ!』
前回の反省点として私がアノニマルースの超広範囲……下手な大都市よりも大きいこの範囲をカバーできるはずがないというものがあった。
結果的に助けが遅れた区域も出ている。
なので私の魔法能力がだいたい対軍仕様になる戦術塔はありがたい。
そのために私はこれから必要とされるものを必要とされるところに大量に詠唱しなくてはならない。
同時詠唱が4つまで可能になってちょうどよかった。
補助魔法4つ同時最大詠唱!
『現状どこもお前を必要とはしていない。が、どこも未強化だ。こっちで補助をするから、味方にぶちまかしてド肝を抜いてやれ! 魔法は空だって飛べる、なんでもありな力なんだろう?』
『げ、限度はあるけどね……』
ジャグナーは相変わらず魔法に対する理解がイマイチだが……
私から見ると集団がややわかるだけでちゃんとした味方の配置はわからない。
この進化をしてなおかつこの台座に補助してもらう時はどうやら"鷹目"がかなり便利になっているようだが……
普段よりも遥か遠くまで見られる。
まるで千里眼みたいな気分。
ここにいるときだけなら戦場のどこだって見られる。
それでも把握しきれるわけじゃあないから上がってくる情報が重要である。
私の光魔法"ディテクション"による脳内地図に追加情報が増えまくる。
戦術塔の能力で私への情報可視化だ。
戦場の様子がかなり頻繁に更新されていく。
戦場に出ているものたちが"以心伝心"などの念話を使ってしょっちゅう戦術塔と情報交換をしてそれをリアルタイムに戦術塔全体に反映させるからだ。
詳しい仕組みはしらないがかなり苦労した魔法記述らしい。
職人たちが頑張りジャグナーやドラーグの持ち帰った知識が役立った。
後は私がやる番だ!
『こちらはいつでも準備完了だ。指定の場所を意識して魔法を放ってくれ。軍団たちが期待して待っているからな!』
『じゃあまずは……』
[スパークエンチャント 電撃の力を武器に宿す]
この電気魔法。私の剣ゼロエネミーと相性が最悪で使えなかったのだ。
爪や牙にならできるが……火魔法"フレイムエンチャント"もあるしね。
剣ゼロエネミーに使うと見事に吸収され無効化されてしまう。
普通よりも倍程度……20秒ほどかけて唱える。
そして脳内マップに反映されている青丸範囲を意識して……発動!
今回は戦場前線全域。
つまりは外側をぐるっと指定範囲したわけだが……
戦術塔が輝き円状に強力な光をはなつ。
その円状の光は輪となってどんどんと広がってゆき……
徐々に形を変化させていって外壁に沿うかたちに。
さらに地上や地下それに空中部隊に届くほどに縦に広く。
光が目的地まで届くとこちらからは消えたように見える。
『お、おい! 今の出力、何したんだ!? 予定よりかなり強いんじゃないか!?』
『え、そうなの?』
『……現場の声繋げるぞ』
戦術塔は念話系スキルの中継点としても出来る。
私も現場状況をざっくり空気ごと理解したい時に使えるわけだが……
はてさて?