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五百四十ニ生目 超克

「戦いのみが、疑問を形とし、それの答えを得る。命を賭し、魂を燃やせ。それが答えを示すということだ 

「な、何を言って……!」


 ダメだ。やはり説得は通じない!

 霊獣ポロニアは吠える。

 静寂だった洞窟内が途端に騒音窟と化した!


 思わず耳を前脚で抑え恐怖耐性のために"影の瞼"が目を覆う。

 やる気満々だ……


[ポロニア Lv.60 比較:無謀]


 こちとらなんだかグラついて身体の反応に遅れがあるのに。

 風邪でもひいたみたいだ。

 それに……"進化"ができない。


 前より多少私も強くなったが"進化"していないのがキツイ。

 さらにポロニアの方はなんだかかなり力を蓄えている気がする。

 龍穴のそばで今まで潜んでいたとしたらそれも納得はできるかも。


 ふつうはそこまで影響がないか影響を直接受けすぎて大変なことになる。

 前見た実験書ではマウスが膨張爆発したあと光となって消えていた。

 ただ……ポロニアみたいな半霊体なら話は変わるだろうし。


「やあああぁっ!」


 なんとか逃げないと。

 そのためにはチャンスを生み出さなくちゃ。

 突撃! のフリをしつつ空魔法"ストレージ"で亜空間から剣ゼロエネミーを取り出す選択。


 相手の真上からね!

 ポロニアの頭上から剣が迫り落ちる!


「くだらん」


 次の瞬間だった。

 ギリギリ目が反応できた速度でポロニアが前脚を振り上げると剣ゼロエネミーが爪で弾かれる。

 そのまま振り下ろし私へとアタック!


 ――私は宙を舞った。

 もはや上下もわからないほどに回転し殴り飛ばされたと気付いたのは地面へと着地してから。

 転がり続け勢いが衰えるまで回りやっとの思いで止まる。


「ック、カハッ、ゲホッ」

「あの時の勢いはどうした? 力も感じん。魂が怯えている」


 剣ゼロエネミーも私の隣まで弾かれた音がする。

 つっ強すぎる……!

 こんなのどうやってスキを作れば良いんだ。


(立て直す!)

(なおすよー!)


 裏でドライとアインスも頑張ってくれている。

 だが反対に身体は重だるく痛みすらも何かひどくにぶい。

 ここにいるとおかしくなりそう。


 視界が暗い。耳が遠い。力の流れだけが妙に冴えている。

 回復か……いや。今の光魔法!

 回復に使わずに魔力へ変える!


(え! でも……)


 アインスがためらう。

 もう回復しても簡単にやられてしまう。

 それに……なんだか身体の芯が熱いというか。

 何かこうしたら良いんだって理屈を越えて理解しだしている。


 それは深く息をするかのように。

 芋虫が繭を作り蛹になって変態し空へ羽ばたくように。

 誰に教えられるでも無く内側から理解している。


 "進化"準備! 光魔法キャンセル。

 光魔法を魔力へ変換。

 光魔力をチャージして1つめ。


 魔法2つ目……聖魔法"トリートメント"をキャンセル。

 聖魔力獲得して身体に満たされる。


「その瞳……やっと火がつきだしたか。また、前のように飛び回るなり、茨を振るうなりするが良い。今のお前では、答えは得られぬ」


 ……地魔法キャンセル! 地魔力で3つめだ。


(どうする? 何になるつもりだ? 出来なかったじゃないか)


 そうじゃないんだ。これは。

 空魔法キャンセル。魔力4つめ!

 まだだ。


(え!? いつつめ!? 今までムリだったじゃん!)


 そう。4つの魔力でいつも"進化"していた。

 5つめの魔力混合は今の"森の魔女"による魔法理解力を持ってしても成功した試しはない。

 けれど分かるんだ。

 今はこれが最適解だ。


 最後! 5つめ――火魔法!

 混合!

 4つ目ですら慣れなかった時は氷と油脂を豚骨スープにするくらいは大変なことだった。


 だけれどもこれは……もはや次元が違う!

 骨肉と水蒸気だけで豚骨スープを作るような……そんな勢いだ。

 はっきり言って混ざる気配などない。


「どうした? 来ないのか?」


 少し待ってて! 今それどころじゃない!

 私の中で魔力と魔力が混じり合うこと無くグルグルと駆け巡り衝突し合い火花を散らしている。

 普段なら気分が悪くなっておしまいだが……今日はなんだかやけに良い調子だ。


「こないなら――」

「ハアアアアァッ!!」

「むっ?」


 自然に吠える。

 高揚感が溢れ出す。

 そうだ。そうだったんだ。


 今までの"進化"は不完全だったんだ!

 あの4つの姿はまだ発展途上。

 未完の姿。


 だったら強くイメージするんだ。

 私のさらなる"進化"の姿を。

 本当の力を手に目の前の脅威から生き残る姿を!


 力を感じる。

 いやずっと感じていた。

 莫大な流れの力を。


 まだ私は未熟だけれども……

 それでも今を逃す機会はきっとない。

 私を助けてほしい。大地の力よ!


「む!? まさか、迷宮が……」


 たちのぼるその『力』が私に呼応する。


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