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五百四十一生目 対峙

 私の迷宮管理部屋にきている。

 こんな夜中でも昼間のように部屋内は明るい。

 照明がしっかりしているからね。


 普段はここでタスクをこなしていたら落ち着くのだが……

 なんというか……自分で言うのもなんだが。

 なんだか心ここにあらずといった感覚。


 どうしよう。

 何か……何か行きたい。

 何かに誘われている気がする。


 全体マップから……ひとつの表記を見て驚く。

 あれ。ここから荒野の迷宮に行く道がもうひとつある?

 こんなの前はなかったはずだ。


 私が入ってきた道以外は……とすると新たに開通したのか。

 迷宮への入り口は絶対1つというわけではないというのは聞いたことがある。

 なんだかとても気になるし見に行って見るか……


 管理部屋を抜けふつうの場所へ戻る。

 昔いた修繕や改修を行う魔導ロボたちはもうここらへんにはいない。

 私が目指す場所を見失わないようにしないと。


 ケンハリマの姿にしかなれないしこのまま4足歩行でてくてくとあるく。

 やはり普段はこの姿が1番だ。

 "進化"できないのはかなり困るけれど。


 周りは無機物で構成された生物らしきものたちが徘徊することもあるので私はかなり存在が浮いている。

 まあ全く強くはないのでいつもどおり気配を潜めて移動すればみつかることはない。

 さらりと走って廊下を駆け抜ける。


 廊下を抜け扉を抜け部屋を抜け。

 また廊下を抜け……

 特に語れる点もなくあっさりと目的の場所についた。


 バリアフリーななめスロープ型エスカレーターをいくつも下っていったが地下5階程度だろうか。

 確かにそこには『階段』があった。

 異質な気配を感じる。間違いなく荒野の迷宮に通じている。


 何かに引き込まれるように階段を登った。





「うわぁ……!」


 思わず感嘆符が漏れた。

 そこは洞窟内だったが特有のものぐらさや無味乾燥した風景とはまるで違う。

 輝いていた。


 緑と黄色それに青。

 発光体を持つ植物たちが群生していてきらびやかに光っている。

 これは一見の価値アリというやつだ。


 さらには壁の向こう側に龍脈が透けて見えている。

 強烈な力を持つ龍脈はこうやって大地の中を駆け巡っているわけだ。

 龍脈の脈打つような光の流れにそって少しずつ歩いていく。


 荒野の迷宮は住んでいるだけあってみんなでよく探索はするもののこんな場所初めてみた。

 探せばいくらでも見落としはあるものだなあ。

 秘境とはこのことか。

 それにしても……


 確かにキレイで龍脈もあり力強いスポットだ。

 ただ誰もいないなあ……

 妙に静かだ。


 私も足音を殺して歩いているし洞窟に響く音は殆ど無い。

 強い力で溢れた場所なのに同時に活気はまるでない。

 神秘的な空間とはこの事を指すのか。





 導かれるまま奥へと歩むこと10分以上。

 曲がりくねった広い空間の先がなんだか強く明るい。

 さらに歩みを進めようとして――


 気配にとまどった。


 強大な龍脈の出る……つまり龍穴の気配にくわえもうひとり。

 この気配。いやまさか。そんな。こんなところに。

 慎重に歩みを進めてその答えは確かだと明らかになった。


 大きく縦に裂けるかのように開いた空間。

 下から上へはっきり目に見えるエネルギー量で立ち上っていく。

 あまりに幻想的な光景かつパワーが溢れんばかり。


 光が空間を喰らいつくす勢いで流れが上へと定まっているから安定しているだけで。

 前も少し浴びることとなってしまったことはあるものの目の前のは私を遥かに覆い尽くすあの量。

 流れに巻き込まれるだけで儚く散るだろうと想像できる大自然。


 今それが目の前に広がっているのに光景に浸れないのは……

 その前で目を閉じる巨大な魔物。

 顔すらその長毛で覆われ表情すらうかがい知れない超大型の犬みたいな魔獣。


 霊獣ポロニア。

 彼が荒野の迷宮にいる事自体は何もおかしくない。

 そして普段は探してもまったく見つからないことも。


 なぜこんなところにいるんだ!?


「……なぜこんなところにいる?」


 ポロニアが私に気づいた!?

 こっちのセリフだよ!


「たまたまここを見つけたんだ。ポロニアさんがいるとはまったく思わなかったけれど」

「ふ……その魂、確かに動揺を抑えきれてないな。こちらとしても想定外だがな」

「まあ、ちゃんと話をしたいと思っていたんだ。どうして私達を襲う?」


 どこかで静かに話したかったのは事実。

 まさかこことは思っていなかっただけで。


「ソレを知って何になる? お前は相手の趣旨や主義、感性や掲げる目標、想いによって殺されることに納得するのか? 力をぶつけられ、反撃しないのか?」

「そうじゃない、戦わなくて済むならそうしたいだけだよ!」

「なら。答えはひとつ」


 質問に質問で返され霊獣ポロニアは立ち上がる。

 背景からの光を浴び巨大な影が逆光で生み出された。


「戦え。答えは、そこにしかない」

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