五百三十八生目 解除
ここで状況に決着をつける!
召喚獣デザイアは吹っ飛んで肉体の損傷が癒えるまで少しの間動けないはずだ。
召喚者ロウソウの方にのこり用意していた最後のひとつをぶつける!
地魔法"アースイーター"!
場所指定のために"見透す眼"で正確な位置をはかる!
「デザイア!」
「グッ! アヤツ、エネルギーが尽きん、おかしいだろう……が! もう"ハートスティール"するしか……」
「即死の……それはダメなんだ!」
「言っている場合か……!」
デザイアが根性なのか立ち上がった!?
でもまだふらついている。
即死っぽい技を使うかどうかでもめているらしい。
即死技は使えないだろう。
これは試練だから。良かったそこらへん良識ある相手で!
今ので場所をしっかり把握して定められた。
いけえ! "アースイーター"!
「なっ!?」
「間に合えッ!」
「す、スティールハンド!」
ロウソウの指示にデザイアが顔をしかめる。
そりゃそうだ。
混乱で指示があからさまにミスしている。
「グウウッ!!」
横から高速で挟み込もうとしていた牙のような棘のある岩盤2つをデザイアが割り入って両手で無理矢理止める。
"鷹目"で見てみるとロウソウはハッとしていた。
やっとまだ奪えないことに気付いたらしい。
「これ以上は……!」
「スマン!」
デザイアが止めているわずかの間にロウソウは逃げ出す。
だがそのかわり"アースイーター"は閉じた。
アレが逃げるか!
だが世の中残心というものがある。
もし返された時のものは今も用意中。
駆け寄る!
「グッ、こうなれば私も……!」
ためらいのない抜剣。
効果の良い付呪がほどこしてあるらしい剣の刀身が黄金色に光が輝く。
下段に構え私へ向かって走り込んできた。
「やあああっ!!」
「はあッ!」
互いに正面に捉えロウソウは何らかの武技を発動。
剣が強く瞬いたからおそらくは瞬間的な切れ味強化。
私は両腕を突き出す。
[エクスプローシブS 正面方向に対して空間の爆発衝撃を引き起こす]
空魔法で景色が膨張するように歪み剣が輝き鋭く突きが放たれる。
ギリギリの勝負は――
先程までの喧騒が嘘のように地下室に静けさが訪れた。
かわりに鎧が地面に落ちる金属音とカランという剣が弾む音。
ロウソウはすんでまで生命力を削られて気を失った。
やっと……勝てた!
座り込むと岩が崩れ落ちる音がする。
デザイアが"アースイーター"を奪って脱出したらしい。
身体を引きずりやってきたデザイアがロウソウと私を交互に見る。
大きくため息をついた。
「何やらワケありらしいな……まあいい。今回は負けを貰うとする」
「うん、そうしてくれるとありがたいかな」
デザイアがつらそうに膝をついた。
ロウソウが倒れたことでその影響が召喚獣であるデザイアに出ているのだろう。
「お前……名は?」
「ローズ……ローズオーラ」
「ローズオーラか……ハァッ!」
うわっ何だ!?
霧のような何かが不意に私にまとわりつく。
ロウソウは指示は出せないから技ではないはずなのに……
これは……前プライドと戦ったときのものに似ている。
私の中に勝手に吸収された。
「私は欲しがりでね。プライドのものだろうと、他の神のものだろうと、私も分けてもらいたく思うものさ」
「一体、どういう……ウッ!?」
ま。また"進化"バランスが崩れる!
急いで魔力を……間に合わない!
私の肉体が元のケンハリマへともどってしまった!?
「それが元の姿だったか。なかなか、強そうには見えないな。実力は示してもらったが。まあここまで来ればあとは……精進せよ、私の欲が満ちるまで」
「な、何を……?」
フラフラする身体をなんとか起こして4足歩行。
デザイアはロウソウの身体を探ると中から自身を喚び出した宝珠を取り出し掲げた。
「何。個人的に、誰かに奪われて終わるのがシャクなだけ――」
「あっ」
召喚者から宝珠が離れたことによりデザイアは還り宝珠が地面に落ちコロコロと転がる。
最後まで変わった消え方をしたなあ。
……あ。魔法がすべて戻っている! やったー!
返ってきた回復魔法で各々の治療を終え蒼竜と商いの上級王トウトウに合流した。
私は……なぜか"進化"が行えないことに気づく。
なのでそのまま行きふたりをひどく驚かせた。
「なっ、魔物!?」「アレッ、その姿……」
「待ってください! さっきの私です!」
「そ、その声は先程の少女の……?」
「ああー……助手はですね、ちょっと特殊体質なんですよ。身元は保証しますよ。先程話した通りに、ね!」
蒼竜が何やら上級王と話をつけていてくれたらしい。
しぶしぶながら上級王トウトウはうはずく。
「まあ、見た所無害にしか見えないが……本当にロウソウを打ち破ったのならば、ぜひほしい戦力。ここはソー殿を信じよう」
「ありがたきお言葉」