五百二十七生目 傍若
自称蒼龍の青年は本当に蒼龍だった。
ただひたすら神様らしさはなく絶妙に腹が立ってくるのが問題だが。
魔力の流れを追って誰かの家に来た理由もかなり困ったものだった。
「いつの間にか増えている謎の魔力送信路……追いかければ謎の一軒家……まさにミステリー!」
「え! あの大量に張り巡らされている魔力路を覚えていて、1つだけ特定しながら来れたんですか!?」
「当たり前だろ! 誰だと思っているんだ、神と呼ばれし蒼龍君なんだよ?」
まだそーくん呼びさせるの諦めていなかったか。
というかめっちゃ肩とかすくめたりオーバーリアクションしながら『そんなこともわからないの? 仕方ないな』みたいなドヤ顔して煽ってこないでほしい。
「というか、そこまですごい神さまなら、当然今この大陸で起こっていること分かっていますよね? 帝都あたりも大変なことになっているんですから、ぜひ解決してください」
結構真面目な話だ。
魔王の復活は伝承によると5大竜たちにとっても困るはず。
だが彼は手に持ったドリンクを持って興味なさげな顔をして飲む。
「……魔王復活の話だよね? そりゃあ知っているけれど、それはメンド……神が簡単に手を出していいことじゃあないんだ。良いかい? 神に頼らずに世界は、キミたちはひとり立ちしなくてはならないんだ。
アイツキラ……魔王やそれを蘇らせようとする相手は神では世界が荒れてしまう。神は誰の味方もせず、みなを愛しているから、あえて何もしないのさ」
「すっごい神妙な顔をして落ち着いて言ってくれても、本音ダダ漏れで全くカバーできてませんが」
「アーッハッハッハッ! まったく、冗談が面白いね、キミは!」
すごい。笑い飛ばしてごまかそうとしている。
5大竜は伝説によると魔王に勝てない。
なら最初から関わらないでおこうというの清々しいほどの割り切りっぷりだ。
「もういいです……とにかくここの地下方面にある魔力の流れの元へ行く方法、何か手がかりは見つかりましたか?」
「なあに、僕程度の力ならば、入った瞬間に理解ってしまったさ。実に簡単なものだったからね」
「本当ですか! じゃあそれはどこに……」
蒼竜がまた指をビシッと顔に向けて指してくる。
顔が絶妙にドヤっている……
「おいおい! 神の助手よ、それではいかんぞ?」
「え、助手?」
「いいかい? 攻略法が分かっている謎解きだなんて、つまらないにも程があるだろう? こういうのは自分で解いてこそだ! というわけで助手くん、僕はコレでも飲みながら他のものでも見ているとするよ」
「ちょっと、助手って!?」
笑いながら家の奥へと消えていった……
なんか一切の拒否権すらなしで話が進んでいってしまったんだけど……
もうものすごい疲れたし帰って良いかな……
「――あっ! 言い忘れていたけれど、解決しないと扉が開かないようにしておいたし、ワープもさっき封じておいたから! じゃ」
「ちょっと!?」
いきなり戻ってきたかと思ったら余計なことを言いたい放題言ってからまた奥へと消えていった。
ある意味神さまかもと思い始める。
あの傍若無人っぷりはまさに神がかりだ。
スクロールを再び開き効果を変更させる。
元々つけておいた機能で大ざっぱなものからさらに変化させて細やかにさせたのだ。
細かいほど複雑にルートが隠蔽されたものをたどる必要が出てきて面倒だが答えはわかりやすい。
この家から地下にいけると思ったのもそのおかげ。
まだ可視化されている範囲は地上のみだが位置的にはかなり下だと示している。
そして……出入り口は『その魔力に触れていた者』が出入りしたはずだ。
入ってこもりっぱなしだとこれだと、わからないが残り香みたいな魔力があるのだ。
前よりもさらに細やかにして……もっと……
ほんの僅かな魔力気配を追わせる。
……見えた。ここだ!
家の中でほんのりと残る魔力の流れを身近で受けたことのある誰か。
その魔力の残り香が家のなかを1つだけのルートを通って移動している。
誰かのにおいたちは複数残っているし"見透す眼"でも地下の存在はわからなかったがこれなら。
目を凝らし僅かな光を追う。
家自体はそんなに広くないが探すとすると多数あるからね。
ここの壁に向かって移動しているな……
魔力を受けた誰かがここにいたのだけは分かった。
ここからはにおいをかいでみよう。
……うん。壁を一部だけ重点的に触っているみたいだ。
ここを……押し込む。
壁の押した所が沈んだ!
さらに隣の部分が開く。
中は魔法記述が描かれた穴が空いている。
これは……鍵穴か。
しかも魔法でのロックをされている。
物理的な鍵穴がないぶんピッキングされないが特定の者しか使えない魔法が必要となる。
ここは……
「蒼龍さーん!」
……返事がない。
…………よし。
「そーくん!」
「何かね助手くん!」
「早っ!」
いきなり目の前に現れた……