五百二十六生目 理解
……んん?? 今なんかとんでもない発言を聞いたような?
突然の展開に頭がついて行かずにクエスションマークが浮かびまくる。
ええと……
「僕が蒼竜さ!☆ミ」
2回言った……
目元に指3本沿わせてウインクするのはなんなのだ。
どうリアクションとれば良いのか。
彼は自称で蒼竜を名乗った。
蒼竜はこの帝国では神様扱いの存在で大山脈がその肉体の正体である。
魂と精神は抜け出し今も世界のどこかで愛している世界と触れ合っているらしい。
あまりにも規模が違いすぎる神さまであって少なくとも目の前のチャラついた男ではないな……
「うおい! 思いっきり目をそらされた!? そこまで信用できない感じ!?」
「なんというか、バチあたりますよ……」
「バチか! 当たるかな! 当たるかなー、別方向から……」
ううむ。わけのわからない相手に捕まってしまった。
自称蒼竜オーバーリアクションで顔に手を当て天を仰いでいる。
この家の捜索をしたいのに。
「まーでも、キミは悪いやつじゃないみたいだ。ホワイトアイが、証明してくれているようだし」
「えっ!? その名前!」
「おお、やっと乗り気になってくれたね? 最初から段階踏んで話せばよかったか……」
バッバッといちいちポーズ変えて話すなこの人。
普通に話せないのだろうか。
今も考え込むポーズでぶつぶついっている。
それにしてホワイトアイの名前が出てくるとは。
なんでだ……?
「それはね! キミの中にホワイトアイの因子が見えるからだよ!」
「また心を!?」
「あれだけ『なんでだ……?』って顔しておいて、それはないでしょう! アーッハハハッ!」
思いっきり笑われた。
なんだろう。軽く腹がたってくる。
ただ言っていることはとても気になるから気を取り直さなくては。
「私の中にホワイトアイが……? なぜそのことがわかるのですか?」
「なぜって! そりゃあ僕が蒼竜だからさ! ホワイトアイの因子があるか、見ようと思えば『視れる』はずだよ!」
えぇ。なんというか子供向けにハキハキ話しているようにも聞こえる……
あまりにもうさんくさいが何かわかっている口ぶりは無視できないか。
「百聞は一見にしかず、ってね」
ホワイトアイの力を意識して……視界に写す!
拡張現実のように見えている景色に追加で情報が増える。
そして彼はというと……
「……わあっ!?」
ホワイトアイの説明どおりならば青白い光が足されているものが新たに見えるホワイトアイの力。
しかし目の前のそれはおかしかった。
ニンゲンの姿ではなく境界すら曖昧な青い塊。
鋭く輝く眼光がこちらを射抜きそうで思わず息が速く浅くなる。
心臓の音が高鳴り青い光の塊が近づいてくる。
なんだこれは……恐ろしい!
青い光の塊が私へと伸びてきて――
「はい。もう止めたほうが良いよ」
「――ッ! はぁっ! はぁっはぁっ……」
「凄いね! 僕を理解って気を失わないだなんて! 神様の素質とかありそう!」
彼が私に触れることで景色が元に戻る。
何をしたのかはわからないがそれどころではない。
先程の恐怖はかき消え代わりにまたおどけた彼が現れた。
やられた。無理矢理理解させられた。
今のは理屈を超えて私に直接そう認識させられたわけだ。
私の中のホワイトアイの因子が彼を創造主……つまりは蒼竜だと認めた。
「分かりました……分からされました。あなたは確かに、蒼竜……様ですね」
「そう! かの有名な! 蒼竜だよ! 気軽に蒼竜君とでも呼びたまえ! さあ一緒に笑おう! アッーハッハッハッ!!」
めっちゃ頭ポンポンして来ながら笑い飛ばしている。
こやつ私より背が高いからって……!
本当に普通に見るとイラつくのにこれが本物だなんて……!
なんというか。嫌だコレ!
めちゃくちゃ頭をなでられたせいでカツラがズレた!
一切悪気のない笑顔が余計に神経を逆なでる。
「おや! その3つ目かわいいじゃないか! なんで隠しているんだい?」
「ニンゲンに擬態するためですよ。蒼竜さんもそうじゃないですか」
「ああ! キミが魔物なのは理解っているさ! それを隠す必要もね。ただの感想さ!」
人指し指を立ててこっちに突きつけてきた。
殴って良いかなこのドラゴン。
「それと! 僕のは擬態なんかじゃあないさ。そんなチンケなしくみじゃあない。僕はもう肉体の枷に縛られていないから、自由に身を潜められるのさ」
結局やっていることは擬態では……?
疲れてきた。
それよりも。
「ええと、そろそろなぜ貴方がここにいるのか聞かせてもらっていいですか……」
「今! こっちもその話をしようとしたところだよ! そうだね……どこから話したら良いか。ざっくりと言うと、面白そうな流れを見つけたから、追ってきた。なんというか、騒動の香りがする!」
目を輝かせながら何を言っているのだこの神様。